「戦闘が終わるまで、ひたすらキャラクターを動かし、攻撃し続けろ!」

俺だけレベルアップな件ARISE(略称:『俺アラ』)は、そう言わんばかりのバリバリのアクションゲームだった。

2D、3Dを問わず、アクションゲームというジャンルの醍醐味は、プレイヤーの分身となるキャラクターを思うがまま、自在に動かす楽しさにあると思う。

昨今は技術と表現の進歩により、絵的な派手さも追求できるようになったが、それでもこのジャンルにおける体験のキモはキャラクターを動かすこと。そこに割いた時間が長めで、動かしている際の手触り──操作性、テンポへのこだわりが強ければ強いほど、アクションゲームはよりよいものになると筆者は思ってやまない。

今回、先行体験の機会を得た『俺だけレベルアップな件ARISE』は、そんなアクションゲームの醍醐味を徹底的に突き詰めたタイトルになっていた。

特に驚いたのがカットインをはじめ、派手な演出が頻繁に挟まる作りでありながら、指の休まる瞬間がほとんどないこと。一部、大ダメージを与える必殺技を繰り出した際のカットインは演出的に長く、指の休まる瞬間が生じるのだが、それでも体感的に短め。キャラクターの動きも躍動感抜群で、見ているだけでもカッコよさを感じるものになっている。

大技を決めるたび、派手なカットインが挿入されるのにテンポが落ちない。
戦闘が終わるまで、指の休まる瞬間がほんのわずかしかない。

とにかく、アクションゲームとしての手触りの良さに対するこだわりがすごいのだ。

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原作付きのタイトルではあるが、それをまったく知らないアクションゲーム好きにも楽しめる特徴を持つ本作。その内容の紹介とレポートを以下に綴っていこう。

なお本作はiOS、Android、PC(Windows)のプラットフォームで基本無料タイトルとして配信予定。今回の先行体験でプレイしたのはPC版で、ゲームパッドはXboxコントローラを用いている。

そのため、一部解説はゲームパッドでの操作を前提にしたものになっていることをあらかじめ留意いただきたい。

文/シェループ

『俺だけレベルアップな件:ARISE』公式サイトはこちら

※この記事は『俺だけレベルアップな件ARISE』の魅力をもっと知ってもらいたいネットマーブルさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


“レベルアップ”の力を手にした最弱ハンターの奮闘を描くストーリー。原作とまったく同じ内容で進むので未履修でもOK

ゲームの紹介に入る前に、原作の『俺だけレベルアップな件』という作品について少し紹介しておきたい。

俺だけレベルアップな件』は、2016年に韓国でWEB小説として誕生し、後にWEBTOON(ウェブトゥーン)版が展開された作品だ。

世界的にも英語、日本語などにローカライズ(カルチャライズ)されたバージョンが展開されており、WEBTOON版に関しては日本で2019年に「ピッコマ」で連載を開始している。また2024年1月から3月にかけて、テレビアニメ版も放送された。

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物語の舞台は異次元と現実世界を繋ぐ通路「ゲート」が開放され、その先にあるダンジョンに巣食うモンスターたちを狩る「ハンター」が現れるようになった日本。主人公の水篠旬は、「人類最弱兵器」と称される最弱のE級ハンターで、生活費を稼ぐため、毎回命がけで低級ダンジョンに挑み続けていた。

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ある日、彼は参加したパーティメンバー共々、低級ダンジョンに隠された高難易度の二重ダンジョンへと不用意に入り込んでしまい、ボス級のモンスターによる襲撃を受ける。圧倒的な力の差もあってパーティメンバーは次々と命を落としていき、旬も右足を失う瀕死の重傷を負ってしまう。そして、トドメを刺されようとしたその瞬間、旬はごく稀に起きるとされる「再覚醒」により、その場から生還。受けたはずの重傷も足も元通りになっていた。

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さらにこの出来事を機に旬にだけ「クエストウィンドウ」が見えるようになる。そこに提示されるクエストを攻略することで、自らがレベルアップして強くなれることを知った旬は、様々な試練を乗り越えながら、やがては最弱ハンターから這い上がっていく……というのが、原作およびアニメ版の双方で語られるオープニングストーリーである。【※】

※物語の紹介は日本語版に準拠したものとなります。

ゲーム版のストーリーも原作とアニメ版を踏襲。旬が瀕死の重傷を負い、再覚醒するまでの過程を一部、ゲームプレイを通す形で描かれる。

キャラクター同士の会話といったストーリーに絡むイベントは日本語フルボイスで、旬役の坂泰斗氏を始め、声優もアニメ版のキャスト陣が続投。
オープニング後の本編で描かれるストーリーも基本、原作とアニメ版と一緒だ。そのため、本作をプレイするに当たって原作およびアニメ版を見ておくといった事前準備は一切必要とされない。まったくの初心者でも楽しめる設計だ。

あどけない少年が、いきなり筋肉ムキムキの強キャラに……。ゲームならではのアレンジされた原作再現にも注目

簡単にストーリーを振り返ったところで、あらためてゲームの紹介に入るが、本作のジャンルは三人称視点で展開される3DアクションRPG。プレイヤーは主人公・旬になって「Chapter」ごとに用意されたストーリーイベント、モンスターたちとの戦闘クエスト(BATTLE)に挑んでいく。

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各Chapterの最後にはボス戦クエスト(BOSS)が設けられており、これをクリアすることで次のChapterが解禁。以降はその繰り返しになる。流れとしては、いわゆるステージクリア型の形式で進む仕組みとなっている。

戦闘クエストは雑魚モンスター戦数回、中ボス戦で構成。最終的に中ボスを倒すか、クエスト内で課せられているミッションを達成するとクリアになる。構成的には単純だが、1クエスト当たりに要する平均プレイ時間は2~3分と短め。またボス戦をふくむ全クエストに制限時間が設定されているため、長期戦に陥るようなこともなく、テンポよく進めていける設計になっている。

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戦闘スタイルは近接戦にフォーカスしていて、通常攻撃と回避(ダッシュ)、スキルの3つのアクションを駆使して戦っていく形になる。このうち、スキルは「通常」「武器」「QTE」の3種類があり、それぞれ対応するボタンを押すことによって発動。ただし、「QTE」は通常攻撃などで発動に必要なパワーを溜めなければ使用できない。

ほか2種類のスキルも連続して使うことはできず、1回使った後にクールタイムが発生する。そのため、立ち回りとしては通常攻撃でモンスターを攻撃して反撃を避けつつ、タイミングを見てスキルを繰り出し、畳みかけていくのが基本となる感じだ。

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それら以外の攻撃手段のひとつで「サポーター召喚」なるものもある。方向キーの上・左・右のいずれかを押すと、そこにセットされたハンターがサポーターとして召喚され、それぞれの持つ特技(スキル)で攻撃してくれるというものだ。

サポーターは最大3人セット可能で、誰を入れたかによって、戦闘時の立ち回りや全体的な難易度が変わるなどの影響が出る。

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そんなサポーターのハンターは、基本的にロビー(メニュー画面)から起動できる「召喚プログラム」を通して入手する形。いわゆるガチャだ。「召喚プログラム」からはハンターのみならず、戦闘で用いる武器なども手に入るようにもなっている。なので、装備周りや旬を始めとするハンターたちの強化を図る際も積極的に活用していくことになる。

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さらにクエストの中には、手に入れたハンターたちを直接操作して挑むタイプも用意されている。このクエストは「ゲート」や「Sub Chapter」といった本編とは別のサイドコンテンツとして用意されており、その仕組み上、旬は操作できない。そのため、戦闘では状況に応じてセットしたハンターたちを切り替えながら対処するなど、メインストーリーとはひと味違った展開が楽しめるクエストに仕上げられている。

登場するハンターの多くも原作、アニメ版のキャラクターたちが中心。彼らを直接動かして、モンスターたちとの戦闘が楽しめるという点でも、原作が好きな人には見どころの多い要素と言えるだろう。

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この他にも「転職」の要素があり、行うことで基礎能力値の強化のほか、それぞれのクラスに応じたスキルが使用可能になる。ついでに旬の見た目も著しく変わる。あどけない少年が目つきの鋭い強キャラクターになってしまうアレだ。

この主人公の急激すぎる容姿変化は原作とアニメ版の象徴的なネタ(?)だが、ゲーム版でも健在。旬を演じる坂泰斗さんの演技も、変化と共にそれに合わせたものに変わるなど、演出面でも急激さを徹底している。

ただ、変化に至る過程は転職実施時に挑むことになる、「もうひとりの自分(旬の影)」との戦闘を経てからと、ある程度ながら納得感のあるものになっている。ちゃんと勝利する必要もあるので、ある意味ゲーム版ならではのアレンジといった感じだ。

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▲念のためですが、主人公の水篠旬さんです。

とは言え、原作やアニメ未見のプレイヤーならその変貌ぶりには戸惑うこと確実である。
とりあえず、そうなった時は筋肉は裏切らないの名言を思い出しておくといいかもしれない。

これぞアクションゲームの真骨頂!指の休まる瞬間の無い抜群のテンポと手触りの良さが光る

様々な要素が詰め込まれた本作。その中でもとりわけ異彩を放っているのが、アクションゲームとしての手触りの良さだ。

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通常攻撃、回避、各種スキル発動といった全アクションがボタンを押すと素早く繰り出されるのに加え、その動きも非常にスピーディなこともあって、単純に動かしているだけでも楽しい。各種攻撃がヒットした際にも小気味よい効果音が鳴り響くのに加え、ボスにトドメを刺した時には派手なヒットストップが発生するので、確かな手応えと爽快感を味わえる。まさにアクションゲームの醍醐味がこれでもかと言わんばかりに凝縮されている仕上がりだ。

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前述した通り、今回体験したのはPC版なのだが、操作周りはちゃんと最適化されており、動かしていて違和感を抱く場面は少なかった。唯一、カメラ操作の上下リバース設定ができないのは個人的に気になったものの、それ以外はオートカメラ設定やターゲットロックの操作も用意されているなど、配慮は万全。フレームレートも60fps以上が出るので、各種アクションは手触りのみならず、絵的にも見ていて楽しいものになっている。

今回の体験の中で、最も感銘を受けたのが指の休まる瞬間が少ないこと。前述した「QTE」のスキル、「サポーター召喚」の使用時には派手なカットインが挿入されるのだが、前者はほんの数秒、後者はゲームプレイとの同時並行スタイルと、アクションゲームとしてのテンポ感を損ねない工夫を凝らしたものに設計されている。

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見事なのが「QTE」のスキル発動時の演出。スピード感と爽快感、そして絵的な迫力を両立させたものに完成されている。しかも、挿入されるのがほんの数秒、あるいは1秒ギリギリと非常に短いこともあって、アクションの流れが途切れない。

迫力ある映像を再生するための操作ではなく、アクションを繰り出すための操作だと実感させられる絶妙なテンポで、とにかく手触りを重視したものに仕上げられているのだ。

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例外的に敵に大ダメージを与える「必殺技」では長めのカットインが挿入され、指の休まる瞬間が生まれる。だが、この必殺技は1クエストあたり、発動できても1回が限界。使えるようになるまで溜める必要のあるパワーが多めで、「QTE」のスキルほど連発できないのだ。相応に威力は絶大だが、逆に見ればこれが連発可能ならゲームバランスが大味になってしまうのは明らか。

また、長めのカットインが入るなりにテンポも損ねてしまうことが察せる。それを踏まえると、1クエスト1回までというのが塩梅としては適切で、技自体の特別さを際立たせると同時に、アクションゲームのテンポ感を維持する試みとして上手く機能している。

こういった“絵的な派手さ”を前面に出した要素でも、アクションゲームとしてのテンポ感を大事にしているのには唸るばかり。本作を「手触りの良いゲームにする」という確固たるこだわりを感じさせられた次第だ。

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難易度もレベルアップというRPG要素が絡むなりの柔軟さと、アクションゲーム特有の敵の動きを見切って対処する緊迫感が程よく混ざり合ったバランスだ。

今回の先行体験はメインストーリーの「Chapter 6」まで遊べたのだが、全体的にメインストーリーを追うだけなら、経験値稼ぎはそこまで意識する必要はなかった。逆に「Sub Chapter」に象徴されるサイドコンテンツは手ごわいものが多いため、属性相関なども視野に入れた戦術を立てることが求められるだろう。

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原作およびアニメも、どんどん強くなっていく主人公のカッコよさを投影しながら楽しむのがひとつの魅力とされている。本作も原作をほぼそのままなぞったメインストーリーではそれを尊重しつつ、サイドコンテンツ側では異なる味を出すなど、全体的には適度に差別化してまとめられている印象だ。しかしながら、これはあくまでも先行体験での話。正式サービス版では、最終的なバランスが変わる可能性もあることを留意いただきたい。

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ただ、手触りに関しては恐らく変わることはないだろう。なんとも感覚的な部分なので、こうテキストで紹介しても「実際に触ってみないと分からない」というのがもどかしくもあり、アクションゲームとしての宿命(さだめ)を感じてしまうが、それでも言い切ろう。

まずは一度、触ってみて欲しい。特にアクションゲームが好きな人なら、触れて間もなくテンポ感に対するこだわりをヒシヒシと実感させられるはずだ。

また「家庭用機などで展開されているアクションゲームと同じ感覚でプレイしたい!」と思うなら、PC版をゲームパッドで遊んでみるのがお薦めだ。実際、家庭用ゲーム機のアクションゲームとほぼ変わりない感覚で楽しめたので、やればやるほどPC版メインで遊びたい気持ちが高まってしまうかもしれない。

ゲームと漫画の融合とも言えるイベントシーン。双方が自然に切り替わる演出がすごい。

アクション部分でも一部言及したが、演出周りの完成度も高い。特にその真骨頂とも言えるのが、ストーリーが語られるイベントシーン全般だ。

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本作のイベントシーンは、3Dモデルのキャラクターたちが動くリアルタイムデモと、WEBTOON版を意識した吹き出し台詞や擬音が表現されたコミックスタイルのデモが交互に切り替わりながら展開されていく作りになっている。

このリアルタイムとコミックスタイルが自然かつ、違和感なく切り替わる表現がすごい。ゲームと漫画の融合とも言える、非常に見応えのあるものに仕上がっているのだ。

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リアルタイムからコミックへの自然な切り替わりが生じる場面のひとつ(オープニングより)

何より、ロード時間の発生もなく滑らかに切り替わる流れには、いい意味での不気味さすら感じるほど。つなぎのタイミングも違和感がなく、中でもキャラクターが凄惨な最期を遂げるシーンがその象徴的な一例として挙げられる。凄惨なシーンを見どころとして挙げるのは、正直なところ抵抗もあるのだが、本当にリアルタイムとコミックの切り替えが素晴らしい場面になっているので、誇張抜きに必見である。

このようなリアルタイムとコミックを融合させたデモシーンというのは、過去にも家庭用機向けに展開されたゲームの一部にあったものだ。ただ、本作のはまさに今の時代特有の技術と表現の進化と、多大なセンスを感じさせられるものになっている。ある意味、「ゲームだからこそできた」とも言える作りでもあるので、気になればオープニングだけでもいいので確かめてみていただきたい。

演出周りに限らず、ストーリー本編も元々の原作がゲーム由来の題材を扱っていることもあってか、随所で親和性の高さが発揮された部分が見られる。象徴的なのは「ペナルティーゾーン」だ。

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原作のほか、アニメ版でも描かれたエピソードで、主人公の旬は再覚醒後、「クエストウィンドウ」が自分にだけ見えるようになるも、内容の怪しさと過酷さから、「デイリークエスト」を無視。その後、無視した罰として「ペナルティーゾーン」に転移させられ、巨大なサソリから数秒間逃げ延びることを強要されるという展開がある。

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これを本作では、プレイヤー自らが旬になって直接体験する形になっている。もちろん、途中で体力が尽きてしまうようなことがあればお察しだ。原作、アニメだと逃げ延びることはほぼ決まっていたが、ゲームではそうはいかない。この辺りはまさにゲームならではの強みが活かされている感じで、原作でもアニメでも味わえない体験が楽しめるポイントとなっている。

Sub Chapter」の存在も見逃せない。ここでは旬以外のキャラクターに焦点を当てたエピソードが語られるほか、オープニングなど、一部描かれずに終わった展開をゲームプレイを通して細かく表現するといった掘り下げがされる。

メインストーリーは基本的に旬の視点に特化しているため、ところどころ語られずに終わる部分があるのだが、そこを「Sub Chapter」が補完しているような構造。メインとサブを並行して進めることで、より背景を詳しく知れるのだ。中には原作やアニメでは省略されたエピソードもあり、そちらの補完として役立つこともあったりする。

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それでいて、こちらも見るか否かはプレイヤーが自由に決められるため、あえてメインストーリーだけを追う楽しみ方をしてもよし。このようなストーリーをもっと多角的に見たい欲求に答える工夫が凝らされているのは、ある意味では原作、アニメ版にはなかったゲーム版ならではの特徴であり、ゲームというメディアだからこそできた要素と言えるだろう。

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なので、原作とアニメ版を知っている人で、「旬以外のキャラクターたちの状況をじっくり見てみたい」という思いがあるなら、本作はその欲求を満たしてくれるはずだ。ペナルティーゾーンを始め、原作やアニメにあったハプニングを直接体験できる部分も、主人公の旬と一体になったかのような気分を味わえるので、そちらも要チェックである。

これら一連の展開は原作、アニメをほぼそのままなぞる形で描かれることから、それらをまったく知らずとも問題はない。人によってはゲームから本作に触れ、逆に原作とアニメではどう表現されたのかが気になってくることもあるだろう。

原作を知らなくても、手触り抜群のアクションゲームとして楽しめる出来。もちろん、知っていればより楽しめる

さて冒頭でも書いたように、筆者は「俺だけレベルアップな件」についてはアニメ版を一部見たことがある程度で、そこまで詳しい設定などを存じていなかった。

本当にストーリーが原作、アニメ版をそのままなぞっているので、事前知識がなくてもオープニングから順を追って理解していけるのだ。

また、逆にゲーム版だからこそ印象が強く残るイベントもあり、前述した「ペナルティーゾーン」、オープニングで旬が追い詰められるまでの流れを体験できる「Sub Chapeter」のエピソードはその一例だった。

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レベルアップと共に起きる旬の容姿変化も、「転職」のシステムとそこでの「もうひとりの自分」との戦いによって、それなりの納得感が出ていたのも印象深い。
とは言え、登場キャラクターのひとりである馬渕の台詞を引用するが、「人は数ヶ月でこんなにも変わるものなのか!?」とツッコミを入れたくなりはしたが。

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そうはならんやろなっとるやろがい!

原作抜きのひとつのアクションゲームとして、非常に手触りのいいものに仕上がっているのも評価できるところだ。攻撃から回避までのアクションはとにかくスピーディでレスポンスがいいし、モンスターを攻撃した際の手応えもバッチリ。

基本、モンスターとの戦闘を繰り返す構成だが、大体2~3分で決着する短めの構成なのでテンポがよい。またChapterが進むたびに敵の数が右肩上がりで増えていくのではなく、時おり、短めのChapterが挟まるといった緩急をつけた構成になっているのもよく考えられている。

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演出と関連するところだが、グラフィックも特に3Dモデルの完成度が非常に高く、どのキャラクターも表情を含めて、豊かな動きを見せてくれるのもこだわりを感じさせられるところだ。

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原作付きタイトルのため、おそらくメインターゲットとしてはそちらが好きな人を想定しているのかもしれない。だが、一通りプレイして、原作をまったく知らないアクションゲーム好きでも十分に遊べるという手応えはあった。また、リアルタイムとコミックが自然に融合したイベントシーンなど、映像コンテンツとしての見所もあり、それ目的で楽しんでも相当な満足感が得られそうだ。

原作付きのゲームでありながら、原作ファンと、原作をまったく知らない初心者の双方をカバーする特色を持った本作。本稿を通して、少しでも興味を持ったのであれば、来たるサービス開始の際にプレイしてみていただきたいところだ。

特に繰り返しになるが、家庭用機などで展開されているアクションゲームと同じ感覚でプレイしたいと思うならPC版を。紹介するのが最後になってしまったが、DUAL SHOCK 4などのコントローラにも対応しているので、色々自分に合ったものを試してみるといいだろう。『俺だけレベルアップな件ARISE』は、2024年春にPC、スマートフォン向けにリリース予定だ。

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