ビーカーでのカギケノリの培養の様子

海藻「カギケノリ」の安定的な生産がますます重要となる中、株式会社サンシキ(以下、「サンシキ」)と、高知大学総合研究センター海洋生物研究教育施設・海洋植物学研究室 平岡雅規教授らのグループは、カギケノリの生産に関して、共同で研究を進めてきました。


この取り組みの中で、高知県産のカギケノリのタンク生産方法に関する我々の研究が、学術的価値を有する成果をもたらしました。この成果を広く共有し、学術会・産業界に示すため、サンシキと高知大学の平岡研究室のグループが『日本藻類学会第48回大会』にて発表することとなりました。

発表の概要/ハイライト

(要旨より抜粋/改編)

この研究では、高知県須崎市沿岸で採取したカギケノリから種苗を作製した。

屋外タンクでの生産試験では、初期生重量13gが10日間で約10倍の134gに増加した。

研究の背景

反芻動物によるメタン排出の問題


反芻動物のメタンガス排出のイメージ

牛などの反芻動物の胃に存在する微生物は、消化分解と同時にメタンを生成し、それらは主にゲップとして大気中に排出されます。

メタンガスの温室効果は二酸化炭素の28倍(*1)とされており、世界に数十億頭いるとされる反芻動物による温室効果ガス排出量は、全世界の約4%もの割合を占めています(*2)。

気候変動を防ぐため、一部の国では畜産業由来の温室効果ガス排出の削減目標が設けられており、解決策が求められています。

*1: "Overview of Greenhouse Gases". EPA. 2024-02. https://www.epa.gov/ghgemissions/overview-greenhouse-gases, (参照 2024-03-13)

*2: "(研究成果) 乳用牛の胃から、メタン産生抑制効果が期待される新規の細菌種を発見". 農研機構. 2021-11. https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nilgs/144910.html, (参照 2024-03-13)

カギケノリとは


カギケノリによるメタンガス削減のイメージ

カギケノリとは、紅藻類に分類される海藻の一種であり、日本を含む太平洋熱帯海域などをはじめとして、世界に広く分布しています。

研究により、カギケノリを牛の飼料に0.2%混ぜて与えることにより、メタンガスの排出が最大98%減少することが確認されています。(*3)

しかしながら、カギケノリの量産技術はまだ確立されておらず、世界のスタートアップ企業や研究機関が研究に取り組んでいます。

カギケノリの安定した量産技術の確立は、畜産業由来の温室効果ガス削減に向けた重要なステップとなっており、研究の進展に大きな期待が寄せられています。

*3: Robert D. Kinley, et al. "Mitigating the carbon footprint and improving productivity of ruminant livestock agriculture using a red seaweed". ScienceDirect. 2020-06. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652620308830.

今後の展望

我々は、カギケノリの効率的な生産方法の開発や、環境条件等の最適化を目指し、カギケノリの養殖生産性をさらに高めるべく研究活動を展開していきます。

今回の研究成果を基に、さらに大規模な商業規模の環境下での生産試験を計画しています。既に高効率での生産手法を開発していますが、量産が可能であることを実証し、事業化に向けての道筋を築いていきます。

これらの取り組みにより、カギケノリの生産に革新をもたらし、畜産業界の持続可能性に貢献していきます。

日本藻類学会第48回大会の概要

サンシキについて

サンシキは、日本の海藻テクノロジーを使って、世界に海藻ベースのプロダクトを届けるスタートアップです。現在は主に、カギケノリを使ったメタン削減のための飼料サプリメントを開発しております。

高知大学・海洋植物学研究室について

海藻の高効率の生産システムを開発し、研究室で考案されたアオノリタンク生産技術は事業化されて高知県から全国に普及している。海藻の生態、生殖を研究し、気候変動に対応できる藻類バイオマス生産技術を開発している。

配信元企業:株式会社サンシキ

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