北陸新幹線の金沢~敦賀間が延伸開業しましたが、その恩恵をあまり受けない地域も存在します。特に名古屋~富山間は、金沢駅に加え敦賀駅での乗り換えも発生します。乗り換えなしの気動車特急「ひだ」と、所要時間や料金を比較しました。

最速ルートが一番不便かも

2024年3月16日北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業し、北陸~関西・中京圏での速達性は確実に高まりました。ただ、利便性とは所要時間だけで決まるわけではありません。料金や乗り換え回数も重要な要素となります。

そうした意味で、北陸新幹線延伸の恩恵を受けていないのは、名古屋~富山間といえそうです。同区間には、在来線気動車特急「ひだ」が1日4往復運行されており、同列車は乗り換えなしで料金も安いです。「ひだ」はダイヤ改正後も、移動手段の「選択肢」に入るだけの競争力を有していると筆者(安藤昌季:乗りものライター)は感じます。北陸新幹線経由の場合と比較してみましょう。

まず下り列車について。朝一番の「ひだ」は以下のダイヤです。

名古屋8:43→【ひだ3号】→富山12:32(3時間49分):普通車自由席7260円、普通車指定席7790円

なお「ひだ」には「ひだ往復割引きっぷ」が設定されており、これを使うと1万3040円(名古屋市内~富山)なので、普通車指定席で片道6520円になります。

これに近い発車時刻の新幹線を見てみます。「しらさぎ3号」と「かがやき528号」は普通車指定席しかないので、全体の運賃を普通車指定席として算出した場合、最短ルートは以下の通りです。

名古屋9:19→【ひかり633号】→米原9:47/9:56→【しらさぎ3号】→敦賀10:25/10:43→【つるぎ12号】→金沢11:41/11:49→【かがやき528号】→富山12:08(2時間49分):普通車指定席1万4650円

どこで新幹線を利用するか

新幹線を利用すると1時間早く到着しますが、乗り換えが3回必要なうえ、料金は正規料金同士の比較で2倍近くなります。ちなみにダイヤ改正前は「しらさぎ3号」「はくたか562号」の乗り継ぎで、名古屋8:50→富山12:21、普通車自由席8580円、普通車指定席9370円、所要3時間31分なので、かなりの差があります。

ただし急がなければ、新幹線を利用しつつも少し安くできます。

名古屋8:51→【しらさぎ3号】→敦賀10:25/10:58→【はくたか562号】→富山12:21(3時間30分):普通車指定席1万70円

「ひだ」より19分早いものの、敦賀駅での接続がネックです。乗り換えは1回で2280円高くなりますが、「ひだ」が始発のため自由席で座れるとするなら、差は2810円(往復割引きっぷなら、3550円差)となります。ほかに、以下のような経路も考えられます。

名古屋9:19→【ひかり633号】→米原9:47/9:56→【しらさぎ3号】→敦賀10:25/10:58→【はくたか562号】→富山12:21(3時間2分):普通車指定席1万1190円

ちなみに同区間には高速バスもあり、以下のような所要時間です。

名鉄バスターミナル9:10→【高速バス】→富山駅前12:47(3時間37分):運賃5800円

名古屋駅から名鉄バスターミナル、富山駅前から富山駅までは、徒歩で合計11分なので、所要時間はほぼ「ひだ」と同じです。

富山までの「ひだ」にグリーン車があれば…

なお、「ひだ3号」の運行時刻に近い新幹線は接続が悪く時間がかかるため、違う時刻も見てみます。

・富山8:40→【つるぎ13号】→敦賀10:02/10:10→【しらさぎ54号】→米原10:44/10:57→【ひかり646号】→名古屋11:25(2時間45分):普通車指定席1万1190円
・富山7:58→【ひだ6号】→名古屋12:04(4時間6分):普通車自由席7260円、普通車指定席7790円(割引切符の片道6520円)

このように、新幹線が「ひだ」よりかなり早い事例もありますが、乗り換え2回で料金にかなりの差がある関係は、概ね同じといえます。

以上より、最速ルートが新幹線経由であることは間違いなく、状況によっては「ひだ」もかなり使えるのが分かるでしょう。ちなみに「ひだ」には富山駅までのグリーン車はありませんが、仮に連結されていた場合は1万1450円となり、新幹線普通車指定席とほぼ同額です。「ひだ」は所要時間が長いので、乗り換えなしルートのメリットを鑑みて、むしろグリーン車を連結し、割引きっぷも設定してよいかもしれません。

ダイヤ改正に伴い、敦賀駅での乗り換えを強いられる乗り継ぎ例も見られる中、直通する「ひだ」の価値はむしろ高まったように思えます。新型車両HC85系に置き換えられた同列車に注目したいです。

特急「ひだ」は名古屋~富山間を結ぶ(安藤昌季撮影)。