自民党派閥を舞台とした裏金還流事件をめぐって開かれていた、衆参両院の政倫審(政治倫理審査会)での審査が一巡した。

 ところが、出席に応じた塩谷立元文部科学相、高木毅前国会対策委員長、松野博一前官房長官西村康稔前経済産業相、世耕弘成前参院幹事長ら安倍派清和政策研究会)の幹部は「還流の再開を指示したのは誰か」をはじめとする追及に対して「知らない」「記憶にない」「私は関係ない」を連発し、国民のさらなる怒りを買う事態を招いた。

 また、3月18日には安倍派を陰で牛耳る森喜朗元総理から「干された」とされる下村博文元文部科学相が政倫審に出席。「下村氏なら本当のことを話すかもしれない」との期待を完全に裏切るように、これまた還流の再開を指示したとされる「ある人」も含めて、「わからない」「覚えていない」を繰り返したのだった。

 さらに、安倍派5人衆のひとりで森元総理の覚えもめでたい萩生田光一前政調会長に至っては、いまだに政倫審への出席要請から逃げ回っている。萩生田氏の裏金の額は約2700万円と、安倍派内でも突出した額に上っているのに加え、訂正された政治資金収支報告書は裏金の使途も含め「不明」のオンパレードにもかかわらず、だ。

 そんな中、身内である自民党内からも、安倍派幹部らに対する批判や怨嗟の声が、燎原の火のように広がり始めていた。全国紙政治部記者が明かす。

「現在、自民党は『終わり』にもなりかねない危機的状況に追い込まれています。このような時、かつての自民党であれば『自分が身を引くことで党が救われるならば』と、自ら離党届を提出したり、議員辞職したりする侍が必ずいた。ところが安倍派の幹部らは自己保身を丸出しにして、責任逃れしか頭にない。自民党内からは『安倍派の幹部は愛党心のカケラもないヤツらだ』との、痛烈な罵声が湧き上がっています」

 岸田文雄総理は「厳しい党内処分」を茂木敏充幹事長に指示したとされているが、国民が溜飲を下げるような処分はまず下されない、との観測が圧倒的だ。

 結局は「国民が選挙で審判を下す以外に道はない」ということか。

(石森巌)

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