大阪メトロ御堂筋線動物園前駅の2番出口を上がると、昭和風情漂うレトロな商店街がある。何より特徴的なのは、カラオケ居酒屋&パブのような店がそこかしこにあり、昼間でもあちこちから気持ちよさそうな歌声が聞こえてくること。

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深夜食堂」ぽい居酒屋がある。

そんな情報を聞きつけ、ボエー♪と轟くカラオケ商店街を尻目に、『酒房 ぶんぷく』に来てみれば、コの字カウンターの中には、女将さんと息子さんと思しき男性が、忙しなく働いている。

当然だが、深夜帯のみの営業というわけでもなければ、どことなく影のあるマスターが一人でやっている店でもない。

どうやら、物語の設定が似ているというのではないらしい。

全メニュー壁に貼ってあるから、「何か言ってくれれば作るよ」という店でもないのだ。

何の気なしに店内を見回していると、1枚のサイン色紙に目が飛び出そうになる。

なんと、「深夜食堂」の主人公の絵が描かれている。なんでも、作者の安倍夜郎さんが店にやってきた際、描いてもらったものだとか。その際、「店の間取りが似ている」と驚かれたそう。

作者がこの店に来ている! となれば、アレを頼むしかない。

すでに、壁のメニュー表はチェックしている。他でもない、記念すべき第一話で登場したタコさんウインナーだ。

オカン」こと、女将の豊後春美さんに話を伺えば、「ウチは昔から足は6本」とのこと。4本に切る店が多い中で6本とは珍しい。本物のタコの足の本数通り、8本に切ってしまうと、足が細すぎてバランスが悪いばかりか、最悪ちょん切れてしまう。

一方、4本だと足までしっかりした食感だが、自分でも作れるし感動プラスαに乏しい。

4本と8本の中間にある6本、攻めている感と共に新鮮さを感じる!

口に放り込めば、細くも太くもない足の絶妙な食感が旨い!

早くにご主人に先立たれ、家庭料理の延長として一人店を切り盛りしてきた春美さんだったが、ホテルなどで料理人の道を歩んだ長男の信也さんが帰ってきて、メニューもブラッシュアップ。新たな客もついたという。

なるほど、「深夜食堂」ならぬ、「信也食堂」だったか。

ともあれ、「深夜食堂」で印象的なのは俄然、1巻の表紙に描かれているタコさんウインナーの絵。

目にした瞬間から、タコさんウインナー推しが始まったのは間違いない。

そう言えば、足の数は何本描かれていたか。案外6本だったりして!?

『酒房 ぶんぷく』

住所/大阪府大阪市西成区山王1-14-16

※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。

あまから手帖Online=https://www.amakaratecho.jp/

大阪「天王寺動物園」前の商店街にある『酒房 ぶんぷく』。「深夜食堂」に似た店内で頼んだのはタコさんウインナー350円。