世界的ベストセラーSF小説をNetflixで実写ドラマ化する「三体」が、3月21日より世界独占配信される。

原作は"SF界のノーベル文学賞"と言われるヒューゴー賞をアジア圏の作品として初めて受賞した、中国の作家・劉慈欣氏による世界的ベストセラー小説。Netflix版では、1960年代の中国、ある若い女性が下した重大な決断が時空を越えて現代に影響を及ぼすことに。自然の法則では説明のつかない不可解な現象を目の当たりにした有能な科学者たちが、この事態に果敢に立ち向かう捜査官と手を組み、人類史上最大の脅威に挑む……といった内容が描かれていく。

同作を世に放つのは、大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のデビッド・ベニオフとD・B・ワイス、ドラマ「ザ・テラー」「トゥルブラッド」などで知られるアレクサンダー・ウー。映画.comでは、3名のオンラインインタビューを実施。取材後には「この作品が、日本の皆さんに愛されますように。そして、私たちは日本が大好きなので、どんな口実を使ってでもいつか日本に伺いたいと思っています(笑)」と語ってくれた製作陣による"秘話"を紹介しよう。

●原作小説との出合い「自分たちで手掛けることは可能なのかと恐怖心も芽生えました」

――まずは、小説「三体」との出合い、その魅力をお聞かせください。

デビッド・ベニオフ:5年ほど前、「ゲーム・オブ・スローンズ」が終わったばかりの頃にD・B・ワイスやNetflixの幹部の方々と食事をしていたんです。そこでNetflixの幹部の方から「『三体』という本を読んだことがある?」と聞かれ、実写化のオファーを受けました。

原作は、バラク・オバマ大統領も素晴らしい本だと絶賛していて、アメリカの大統領が本を宣伝することは珍しいことなので関心を持っていました。その後、原作を買って読んだのですが、私とD・B・ワイスは10分くらいの差で3冊目を読み終えました。当時、D・B・ワイスは長男を連れて、私は長女を連れて日本に行っていたのですが、大阪からロサンゼルスまでのフライトの中で、原作を読み終えてどうだったかという話になり、「これは絶対に実写化しなければならない!」と2人の意見が一致しました。

なぜかというと、野心的なストーリーテリングでありながら、壮大な世界観が構築されているところに惹かれたからです。壮大な物語であり、色んなことが多岐にわたって展開されながらも、結末がとても素晴らしくて魅了されました。ただ、自分たちで手掛けることは可能なのかと恐怖心も芽生えました。ドラマシリーズにすることは恐怖でありながらも、そこからまた鼓舞され、インスピレーションを受けました。5年近くかかりましたが、このように皆様にご紹介できることは非常にワクワクしています。

●「ゲーム・オブ・スローンズ」での経験はどういかされた? 新たな困難にも直面

――「ゲーム・オブ・スローンズ」という壮大な規模の作品を手掛けた経験がいかされている部分はありますか?

D・B・ワイス:過去の経験がいかされたという点では、経験豊富な製作陣を周りに集めることができ、チームワークを築けたことです。これだけ大きな規模の作品となると、ロケーションも多岐にわたりますし、多くのキャラクターやVFX(視覚効果)なども駆使します。

これまで仕事を共にしてきた方たちとも再び一緒に仕事をすることができましたし、プロデューサーのバーナデット・コールフィールドが全てまとめてくれて、誰が今どこにいるかを全て把握してチームを動かしてくれました。

新たな困難としては、1960年代から70年代の中国や現代のイギリスが舞台となっていたり、バーチャル世界、宇宙空間が登場したり…と、「ゲーム・オブ・スローンズ」とはまた違う世界観とストーリーラインを手掛けなければいけないというところでした。もちろん同じ世界ではないので、前回で経験できなかったことを手掛けることには苦労しましたが、今回、この「三体」という作品で手掛けることができて嬉しかったです。

●ストーリー面での工夫 シーズン1では原作の2、3冊目に登場するキャラクターたちも描かれる

――原作は壮大かつ、現在と過去の物語が描かれています。ドラマ化にあたって苦労した点を詳しく教えてください。

アレクサンダー・ウー:色々な苦労がありました。例えば、デザイン面で言うと、原作の著者・劉慈欣氏は以前、この小説は本という手段を通して、自分の言葉で描いたことを伝えるためのものであると、取材などでも言っていました。そして、読者の頭の中の劇場で、自分の言葉で描いた世界をそれぞれが想像して、経験をしていくものなのです。

ですが、全体の制作チームの仕事としては、劉慈欣氏が創造したものを、ビジュアルの部分において、自分たちで創造していかなければならない、という大きなチャレンジや困難がありました。劉慈欣氏が作り出した世界に存在していたものを、そして物語に沿うものを作らなければならない。

ストーリー面で言うと、TVドラマというフォーマットは小説とは大きく異なります。小説の場合は自分のペースで読み進めることができます。TVドラマというフォーマットであれば、1話からその次へと、流れていくような形で展開していかなくてはならない。そうしますと、ストーリーテリングの面で小説とは異なる形を取らなくてはならないんです。そのため、我々はシーズン1で、原作の2、3冊目に登場しているキャラクターたちも登場させたりしています。視聴者の方々とそのキャラクターたちの関係性をうまく築き上げるために、このような工夫をしています。

●世界中が愛してやまない原作を、どのように実写化するべきか

――作品をチームで作り上げる上で大切にしていることを教えてください。

デビッド・ベニオフ:全てが大切なのでとても難しい質問ですね(笑)。まず今回はとても幸いなことに、素晴らしいキャストに恵まれました。「ゲーム・オブ・スローンズ」と同様に、キャスティング・ディレクターのニーナ・ゴールドが率いてくれて、素晴らしいキャスティングをしてくれました。

もちろんストーリーの部分も重要です。また、それぞれが監督した全てのシーンが上手くいっているかを裁量で決めていくというところもあります。VFXを使ったシーンも多く、そこが上手くいかないと全てが台無しになる可能性をはらんでいるので、集中してこだわるようにしました。

そして、ストーリーが上手くいかないと全てがダメになってしまいます。今回、重要で大切なことのひとつは、原作の劉慈欣氏の物語をドラマシリーズ化するというところです。世界中がこの本を愛してやまない。どのようにしてこの作品を実写化するのかと問われることがあったのですが、まさに1番大切なことは、その元にある劉慈欣氏の小説ではないかと思います。

●キャストについて ベネディクトウォンの役は「彼にとってパーフェクト」

――キャストがとても魅力的です。主要キャストについて起用のポイントをお聞かせください。

D・B・ワイス:まず今回は地球規模の問題を描いた物語なので、 全ての人に起こりうる出来事であるということを示すために、登場人物たちが普通の見た目であるということが理にかなっていて重要なことではないか思いました。

原作の場合は、多くのキャラクターが中国の方ですが、今回は世界中からキャストを集めています。ベネディクトウォンとは前々から一緒に仕事がしてみたいと思っていましたし、今回の彼の役は、彼にとってパーフェクトなのではないかと思います。実際に、我々が彼を起用した選択が正しかったと思ってもらえるような素晴らしい作品になっていると思います。

その他に、「ゲーム・オブ・スローンズ」からはジョン・ブラッドリーが参加しました。彼は、とても愉快で面白い人物です。今回の作品では、彼の実際の性格に沿ったような形で現れています。また、「ゲーム・オブ・スローンズ」とはまた少し違った形の面白さも出してくれました。

他のキャストの方々も、キャスティングには非常に長く色々な過程を経てきました。本来であれば候補者の方々と対面でお会いしたかったのですが、コロナ禍中ということもあり難しく、人によっては、最終段階付近、もしくはロンドンの撮影に入る間際にやっと初めて実際にお会いできたような方々もいました。ジーン・ツェンやエイザ・ゴンザレスアレックスシャープといった素晴らしい役者さんたちに参加してもらえて、本当に素晴らしいチームになれたと思います。

(左から)D・B・ワイス、アレクサンダー・ウー、デビッド・ベニオフ Netflixシリーズ「三体」3月21日(木)より世界独占配信