世界三大バイクメーカーの生産拠点が集まり、各社のゆかりの地でもある静岡県浜松市で、バイクユーザーに狙いを定めた道の駅構想があります。市議会では、その道の駅へ向け“ありそうで無かった”バイク駐車場の案も出てきました。

浜松新球場整備に合わせた道の駅に、バイクユーザーを呼び込む仕掛けを

日本のバイクメーカーの生産拠点が集まる静岡県浜松市。この市議会でバイクを中心にした地域活性化対策について質問に、市当局が前向き回答を連発しました。そのなかで、画期的な「バイク駐車場」の案も出てきました。

2024年3月11日静岡県浜松市議会本会で、バイクで地域活性化を目指す熱い議論が交わされました。

「バイクのふるさと、ここ浜松は特に二輪車の国内最大3大メーカーが集積した全国的に見ても貴重な都市であります。バイクで地域を活性化させていくことができる唯一の都市といえ、本市でしかできない取り組みが必要と考えますし、本市だからこそできる取り組みがあると思っています」

こう切り出したのは、2023年に初当選し、初めて質問に立った市民クラブの花井洋介議員。静岡県が開発する遠州灘海浜公園の浜松新野球場構想に連動して、にわかに動き出した篠原地区「道の駅」構想に迫りました。

「バイクのふるさと浜松である本市だからこそ、バイクユーザー目線の施設構想を取り入れていくことが付加価値を生むと考えます。バイクユーザー目線を取り入れた道の駅ができれば、自然環境に恵まれた本市を周遊するバイクユーザーの一大拠点となる可能性を秘めています。地域の活性化にも大いに繋がると考えますが、いかがお考えか」

道の駅にバイク専用の駐車スペースがあるのはいまや当たり前のことですが、その多くが前入れ駐車で、再出発する時は人力でバイクをバックさせて、エンジンを始動します。花井氏が新しい道の駅構想で取り入れるべきと主張したのは、再出発でも「前から出られる」バイク専用駐車スペース。これが、さらに屋根付きで、ヘルメットなどの小物置きが併設されていたら、開業後の盛況が大きく期待できるというわけです。

この提案に基本計画の策定を進める浜松市も乗り気でした。

「本市が世界的なバイクメーカー、創業の地であることは国内外に広く知られており、バイクユーザーのニーズを的確にとらえた道の駅を整備することは、バイクのふるさと浜松という都市ブランドをさらに発信する絶好の機会になると考えております。来年度から着手する基本計画の策定に当たりましては、バイクが出入りしやすい動線や駐車場など、バイクユーザーの利便性に配慮したバイクの故郷にふさわしい道の駅とすることにより、地域活性化につなげてまいります」(企画調整部・石坂守啓部長)

気になる「バイクユーザー高齢化」という実態

浜松市が毎年秋に開催する「バイクのふるさと浜松」は、昨年で20回を数えました。延べ40万人の来場者を記録し、こうしたイベントの拠点となることも期待されます。

ただ、気になるのが、バイクユーザーの“高齢化”です。浜松市産業部の北嶋秀明部長は、こう話しました。

「バイク購入者の平均年齢が54.2歳、乗り続ける意向が大きく減少する60代まで約5年であることから、二輪車産業を活性化していくためには、若年層への訴求が重要であると考えております」

日本の高齢化は深刻で、軽四輪車の新車購入平均年齢は、バイクよりさらに高年齢化しています。しかし、バイクは四輪車より乗り続けるのが難しい乗り物でもあります。浜松市は、こんな対策を考えていました。

「4月開催の名古屋モーターサイクルショーで、バイク開発担当者から開発の魅力や秘話を聴講するツアーを、市内工業高校の学生を対象に新たに実施します」

名古屋モーターサイクルショー」は4月5日から3日間、愛知県中部国際空港に隣接する国際展示場で開催されます。ここで予定されるのが「高校生ものづくり講座」です。国内4メーカーの開発責任者が講師となり、高校生を対象に開発の苦労や面白さ、バイクの楽しさを語るという内容で、今年のテーマはカーボンニュートラル社会に向けたバイクを生み出す「人」。まさに、これからの時代を担う高校生にふさわしい内容です。

名古屋モーターサイクルショーは、静岡県三重県、開催地の愛知県が後援となるバイクイベントで、高校生を主役にする企画は、このモーターサイクルショーならではの特別企画です。

浜松市が中心となり、地元高校生が参加するのは初めての試み。近い将来の進路を考える上でも役立つ施策で、バイク年齢層の拡大も狙います。

バイク駐車場のイメージ。道の駅などでは、たいてい敷地の端にある(画像:写真AC)。