◆初優勝を目指す両雄の対戦に

 3月16日、17日に、長野県松本市のかりがねサッカー場の天然芝コート・人工芝コートで『2024JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN北信越』が行われた。

 福井県石川県富山県新潟県から2チームずつ、そして開催県である長野県から4チームの計12チームが参加し、16日は3チームずつ4グループに分かれての予選リーグを実施。翌17日には順位決定トーナメントが行われた。3月に入っても降雪の日があり、ピッチの脇にはフィールドからかき出した雪が残る中、16日は晴天の下で予選リーグの熱戦が繰り広げられ、翌17日は曇天で冷たい空気の中で緊張感に満ちた決勝トーナメントが行われた。

 決勝に勝ち進んだのは、準決勝でジェス新潟東SC(新潟)を3-1で下したツエーゲン金沢U-12(石川)と、前年度王者のカターレ富山U-12に1-0で競り勝ったアルティスタ浅間U-12(長野)。いずれも初優勝を目指しての決戦となった。

 前後半で行われる通常のサッカーの試合とは異なり、この大会は12分×3ピリオド制で行われる8人制。第1ピリオドと第2ピリオドはあらかじめ決められた8人ずつがプレーし、5分間のインターバルを経て行われる第3ピリオドは第1ピリオド、第2ピリオドの両方に出場した選手を除いたメンバーが出場し、交代も自由に行うことができる。最低でも16名が必要となり、登録メンバー全員にある程度のプレー時間が確保されるレギュレーションとなっているのが特徴だ。

 一方で、各チームの作戦が色濃く出る部分でもある。ツエーゲン金沢は「第1ピリオド、第2ピリオドで同じぐらいの戦力になるように均等に振り分けつつ、第3ピリオドは勝ちにこだわったメンバーで」(大石明日希監督)、アルティスタ浅間は「なんとか先手を取れればということで、第1ピリオドに主軸の選手を起用し、ほぼ同じメンバーを第3ピリオドにも投入するというのが今大会の作戦」(竹内寛監督)と、両チームが異なる起用法で臨んだ。

ツエーゲン金沢U12が北信越地区の代表として全国へ


 第1ピリオドは立ち上がりからツエーゲン金沢が主導権を握る。素早いチェックで相手にボールキープを許さず、人数をかけた攻撃を仕掛けていくと、5分に先制点を奪ったのは「自分がゴールを決めて勝ちたいと思いながらウォーミングアップをしていました」と試合前の様子を振り返った宮岸果生だった。相手のパスをカットしてそのままドリブルで運び、右足を一閃。ゴールまでやや距離はあったものの、勢いよく放たれたボールは左サイドネットに突き刺さった。

 その後は両チームが見せ場を作った。アルティスタ浅間が小山達樹の直接FKや中村伊生利のドリブルシュートなどでゴールに迫れば、ツエーゲン金沢も相手のCKを跳ね返してからのカウンターで作田陸飛がポスト直撃のシュートを放つ。第1ピリオド終了間際にはツエーゲン金沢がゴールに近いエリアでFKのチャンスを得たが、藤原心平のキックは壁に跳ね返された。

 第2ピリオドに入ると、ツエーゲン金沢がさらに攻勢を強めていった。アルティスタ浅間の竹内監督が「幅と深みを取りながらはがしてくるし、駆け引きをしながらうまくいなされた」と感服したように、キャプテンの島恵大を起点にボールを保持し、多彩な攻撃を仕掛けていく。8分にはその島が相手のクリアボールにいち早く反応して追加点を奪う。GKの頭上を抜くダイレクトシュートは、先制点を挙げた宮岸が「最高のゴール。うまかった」と振り返る技ありの一撃だった。

 第3ピリオドアルティスタ浅間は第1ピリオドとほぼ同じメンバーを投入して反撃を目指したが、ツエーゲン金沢も宮岸や島を始めとする中軸選手で応戦。このピリオドはスコアレスのままタイムアップを迎え、最終スコア2-0でツエーゲン金沢が初優勝を飾った。

 優勝したツエーゲン金沢は、5月に神奈川県で開催される予定の『JA全農チビリンピック2024 JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会』に北信越代表として出場する。大石監督は「大きな地震があり、被災された方々に勇気を与えられるように、いいニュースを届けられるように頑張ります」と語り、宮岸も「北信越を代表して出場するので、絶対に優勝したいです!」と力強く宣言した。

◆▼試合後コメント

■大石明日希監督(ツエーゲン金沢U-12)
アルティスタ浅間は能力が高い選手が何人もいて怖かったですが、まずは守備から入るということを伝えて、選手たちがしっかり応えてくれました。
第1ピリオド、第2ピリオドで同じぐらいの戦力になるように均等に振り分けつつ、第3ピリオドは勝ちにこだわったメンバーで臨みました。全部で4試合やりましたが、それぞれ特徴のあるチームばかりで、勉強させていただきながらみんなで力を合わせて戦えたと思います。
大きな地震があり、被災された方々に勇気を与えられるように、いいニュースを届けられるように全国決勝大会も頑張ります。より厳しくなると思うんですけど、1日1日を大事にして、少しでも戦えるチームにしていきたいと思います。

■宮岸果生(ツエーゲン金沢U-12)
優勝できてめちゃくちゃうれしいです。試合前は、自分がゴールを決めて勝ちたいと思いながらウォーミングアップをしていました。得点は、相手の蹴ったボールが自分の予想どおりのところに来て、そこから相手を抜いて左サイドネットに決めました。
第2ピリオドは、誰かもう1点ぐらい決めてほしいと思いながら見ていました。(島恵大のゴールは)最高のゴールでした。うまかったです。第3ピリオドは、監督から「自分が楽しくて、観客も楽しんでくれるようなサッカーをしよう」と言われて、それができました。楽しかったです。北信越を代表して全国決勝大会に出場するので、絶対に優勝したいです。

■竹内寛監督(アルティスタ浅間U-12)
ツエーゲンさんのほうが2枚も3枚も上手でした。でも、子どもたちは自分が出せる力を全部出してくれたと思います。細かい指示はせず、「ここまで来たら楽しもう。楽しむためには勝ちたいよね。そういう気持ちを持って臨もう」と言って送り出しました。
(準決勝で対戦した)カターレ富山さんもそうですが、幅と深みを取りながらはがしてくるし、駆け引きをしながらうまくいなされました。うまいです。僕たちもそういうサッカーをしたいんですけど、なかなか指導が至らないところがあるので、すごく勉強になりました。今後、目指すべきところを子どもたちと共有して、その目標を達成するために一つひとつ落とし込んでやっていきたいと思います。

取材・文=池田敏明