新潟市で開催中の「第2回新潟国際アニメーション映画祭」で、コンペティション部門に選出された3作品の監督会見が3月19日にあり、「深海からの奇妙な魚」マルセル・マラオ監督、「マントラ・ウォーリアー 8つの月の伝説」ビーラパトラ・ジナナビン監督、「オン・ザ・ブリッジフレッド・ギヨーム監督が出席した。

「深海からの奇妙な魚」は、超能力を持つ女性、強迫性障害のカメ、雨漏りする雲が、深海への不思議な旅に出る物語。ブラジルアニメ業界で長年のキャリアを持つマラオ監督にとって初の長編作となる。「初めての日本をとても楽しんでいます。私は古いタイプのアニメーターなので紙で鉛筆で書く技法を選びました。シンプルなロードムービーで、即興で作った奇妙な物語です。この映画は3人で制作しました。今回、仲の良い友人やパートナーと少人数で作ることを選びました」と作品を紹介する。

ブラジルのアニメ業界について問われると「ブラジルのアニメーションの歴史は新しいものです。長年オリジナルのテレビシリーズも長編も存在していませんでしたが、ここ20年でプロフェッショナルな製作が行われるようになりました。今日では80のアニメーションシリーズが3つのチャンネルで配信され、長編アニメも作られています。多くのアニメーション会社がカットアウトというほぼ同じような手法で作っていますが、今回私はハンドドローイングを選んでいます」と現状を報告した。

マントラ・ウォーリアー 8つの月の伝説」は、すべてのものを創造し、破壊する力を持つ女神の力をめぐり、伝説の戦士たちが宇宙の運命をかけて戦う3DCGアクション。タイのアニメ業界で20年以上働き、15年前から自身のRiFFスタジオを運営。アメリカ映画の下請け業務を行っていたが、今作がスタジオ初のオリジナル長編作となった。

ジナナビン監督は「制作に3年かかりました。インドの叙事詩、ラーマヤーナをもとにし、別の形で物語に取り入れました。日本で見ていただけてうれしいです」と挨拶。少年ジャンプから大きな影響を受けており、「タイでも『ドラゴンボール』『ワンピース』が大人気でした。将来的には様々な技法を自由に使って表現していきたい。ツールが仕事を助けてくれるので、我々はアイディアフォーカスすることができ、アニメには大きな未来が広がっていると思います」と展望を述べた。

「オン・ザ・ブリッジ」は、天と地を結ぶ吊り橋へと向かう不思議な列車の中で、人々が生きる希望、死への恐怖、地上の思い出を語るアニメドキュメンタリー。双子の兄弟であるサムと本作を作り上げたフレッド・ギヨーム監督は「CGIと伝統的なデジタルアニメーション技術、リアルな写真をもとに絵を描くロトスコープという手法を使っています。アニメーションには実際に取材をした人々の声を重ねました。死のあとに何があるのか、を描きたかった」とテーマを紹介。

フランス初の長編アニメーション映画「やぶにらみの暴君」を、ポール・グリモー監督自身が20年以上の歳月をかけて改作。宮﨑駿監督や高畑勲監督も多大な影響を受けたという「王と鳥」から大きな影響を受けているそうで、「この映画はアニメーションが詩作になる可能性を教えてくれました。私自身、宮﨑駿監督からの影響を受けていますが、宮﨑監督もこの映画から影響を受けているでしょう、そういう意味で同じ手法を受け継いでいることを誇りに思います」と名作アニメーションの歴史を振り返った。

第2回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催。

(左から)「深海からの奇妙な魚」マルセル・マラオ監督、「マントラ・ウォーリアー 8つの月の伝説」ビーラパトラ・ジナナビン監督、「オン・ザ・ブリッジ」フレッド・ギヨーム監督