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高級感に不足ないリサイクル素材

電気自動車は、従来のような興奮を得にくいといえる。頭を悩ませたマセラティは、稲妻を意味するフォルゴーレというサブネームで、気持ちを高ぶらせようと決めた。

【画像】魅力は少なくない マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレへ試乗 サイズが近いSUVは? EV版グラントゥーリズモも 全121枚

既にグラントゥーリズモ・フォルゴーレも発表済みだが、大型SUVのグレカーレにも、いよいよそれが追加される時が来た。ブランドがかける期待は大きく重い。4シーターのグランドツアラー・クーペより、数が売れるであろうモデルだからだ。

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マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

グレカーレの登場は2022年だが、早々にフォルゴーレが投入されたことからも、その熱量は伝わってくる。ライバルとなるのはメルセデス・ベンツEQE SUVポルシェ・マカン・エレクトリック、アウディQ6 e-トロンなどになる。

見た目は、内燃エンジンで走るグレカーレと大差ない。ラジエターの構成が異なるため、フロントグリル最適化され、多くの穴が塞がれた。フロントフェンダー後方の3連エアアウトレットは、LEDのイルミネーションに置き換えられている。

インテリアは、豪華で上品なマセラティ。だが、持続可能性に重きが置かれるバッテリーEVなだけに、本皮以外の素材も幅広く設定されている。

試乗車に選ばれていたのは、エコノリーというナイロン。漁猟で使われなくなった網などを再利用したクロスで、肌触りはとても上質。リサイクル素材でも、まったく高級感に不足はないようだ。

航続距離は500km ツインモーターで557ps

車内は、内燃エンジン版のグレカーレと同等に広い。乗員空間は殆ど犠牲になっておらず、荷室は535Lと同値。97kWhの容量を持つ駆動用バッテリーが、フロア下に搭載されているとは感じにくい。

満充電での航続距離は、カタログ値で500km丁度。価格で近いEQE SUV 500は548kmで、マカン・ターボエレクトリックは590kmが予想されており、若干見劣りすることは事実だろう。

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マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

急速充電能力は、最大150kWまで。残量20%から、最短30分で80%まで回復できる。

駆動用モーターは、1基278psのユニットが前後に載り、四輪駆動。システム総合での最高出力は557psとなり、V6エンジンのグレカーレ・トロフェオより27ps勝る。その代わり、車重は450kg重い2480kgに達した。

0-100km/h加速は4.1秒で、3.8秒のトロフェオに届かない。とはいえ、多くのライバルより鋭いダッシュ力は備える。マカン・ターボエレクトリックは639psと、さらに上回るようだが。

すべてのマセラティノイズを発する必要がある、という同社の考えのもと、グレカーレ・フォルゴーレには人工音が与えられた。スピーカーから安っぽいエンジン音が響くのかと心配したが、電気的で未来的なサウンドだった。運転の仕方で、音色が変わる。

有能なシャシーを使い切れるサスペンション

乗り心地は、アダプティブ・エアサスペンションが標準装備され、充分しなやか。増えた車重を受け止めるため、グレカーレ・トロフェオより硬めに設定されているが、有能なシャシーを使い切れる設定といえ、好ましくないわけではない。

コーナーへ飛び込んでも、ボディロールは最小限。ステアリングは軽くクイックで、手のひらへ充分な量のフィードバックが伝わってくる。意欲的に操ろうという自信を鼓舞するように。

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マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

ただし、限界領域はさほど高くない。筆者の予想より早い段階で、グリップが追いつかなくなっていた。内燃エンジン版と比較して、滑沢さは減じているように思う。

気持ちを鎮めて市街地を走らせると、うねるような路面で引き締まった姿勢制御が光る。だが、細かな凹凸が連続するような区間では、減衰特性が影響し、頭が揺さぶられるような振動も伝わってきていた。

ドライブモードをいろいろ試した結果、パワートレインをGTモード、サスペンションをスポーツ・モードへ設定した状態が、筆者の好みだった。これなら、テスラ・モデルYより落ち着いた乗り心地を得られるようだ。

アルミホイールを1サイズ落とせば、さらに快適性は高まるだろう。試乗車は、21インチと大きかった。

主力の選択肢になることは難しい?

グレカーレ・フォルゴーレの英国価格は、10万9900ポンド(約2077万円)から。電動のマカン・ターボやモデルY パフォーマンスと比べると、お高めなことは間違いない。

装備は充実している。英国の場合、家庭用充電器の設置工事が価格へ含まれる。また、欧州全土にある96%の充電器に対応した、マセラティ・パブリック・チャージというスマートフォン・アプリも利用が可能になる。

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マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

イタリアンなデザインは美しく、インテリアも上質。実用性は高く、速さも不足ない。ただし、価格価値に優れるとはいいにくい。沢山の魅力を備えることは確かだが、フォルゴーレでも、グレカーレが主力の選択肢に躍り出ることは難しいかもしれない。

執筆:ダン・ジョーンズ

◯:鋭い直線加速 マナーの良い操縦性 ステアリングのフィードバック ゆとりある車内空間
△:高めの価格 減衰力が不足気味のサスペンション

マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)のスペック

英国価格:10万9900ポンド(約2077万円)
全長:4847mm
全幅:1979mm
全高:1667mm
最高速度:220km/h
0-100km/h加速:4.1秒
航続距離:500km
電費:4.1km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2480kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:97.0kWh(実容量)
急速充電能力:150kW
最高出力:557ps
最大トルク:83.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動


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