新潟市で開催中の「第2回新潟国際アニメーション映画祭」で、コンペティション部門に選出された3作品の会見が3月20日にあり、「アダムが変わるとき」ジョエル・ボードロイユ監督、「アザー・シェイプ」ディエゴフェリペ・グスマン監督、「スルタナの夢」(イザベル・エルゲラ監督)プロデューサーのディエゴ・エルゲラが出席した。

「アダムが変わるとき」は周りの人たちからの嘲笑や否定的な発言で、身体が変化するという奇妙な特異性を持つ15歳のアダムの人生を描く。カナダ出身のボードロイユ監督は「アニメーション制作は20年の経験がありますが独学で学び、ドキュメンタリーの編集や音楽制作をしていました。私にとって初めての長編アニメーションで、これまでの経験をつぎ込んだ作品です」と紹介する。

主人公アダムのビジュアルについては「他人の言葉でアダムの体が変わるように見せていますが、それが魔法なのか、人の言う通りになっているのか、オープンエンディングとしました。観客に自由に見てもらいたいのです。人生はコントロールできないことにぶち当たったときに変わっていくのです。見た目の変化があっても、結果は同じ、人生は学ぶものということをテーマにしました」と明かす。

「アザー・シェイプ」は、月面に四面的理想郷「スクウェア・パラダイス」を建設した人類が、「四面主義機器 スクエアリズム・マシン」と呼ばれるプレス機、矯正器具、美容整形手術によって、身体を立方体のように成形し、全てを四角四面に受け入れる精神的な矯正を受けなくては入れない世界を描くSF作品。コロンビアのグスマン監督は「私は小さいころから絵を描いており、バックグランドはファインアート、そこからアニメにシフトしました。アニメが私の世界を表現する上でベストなフォーマットだと思ったからです。15年前から作品は作っていますが今回初めての長編作品になります」と語る。

ビジュアル面において、今敏、メビウスらからの影響はあるのか?との問いには、「今敏さんからは強い影響を受けています。そしてここ新潟でお会いできた湯浅政明監督、もちろんメビウスからも大きな影響を受けています。今回、非常に楽しみながらキャラクターをデザインしました。登場人物たちがどのように四角い人間になるのか、一人ひとり別のやり方で四角くしようと思いました。この映画の中で誰一人も普通の人間はおらず、皆四角い人間になろうとするのです。200人くらい登場しますが、みな違うやり方をするように設定したので、大変でしたがクリエイティブな楽しい作業でした」と振り返った。

「スルタナの夢」は、インドに住むスペイン人画家のイネスが、女性が国を支配し、男性は隠遁して家事を担当するユートピアを描くロケヤ・ホサインが1905年に書いたSF小説「スルタナの夢」に出会い、女性が平和に暮らせる場所を探す旅に出る物語。エルゲラ監督がフェミニズムをテーマにした作品を発表するのは今作が初で、「作品に携わったのスタッフの多くも女性です」と話す。スペイントランスジェンダー思想家ポール・B・プレシアド氏の著書も関連しているのでは?という質問には、「8年から10年前くらい、彼に会いました。もちろんインスピレーションを受け、彼に声の協力も受けることができました」と明かす。

水彩のほか、切り絵インドの民族画など様々な芸術的手法を用いた理由については「監督のイザベルはもともとアーティストなので、このように3つの技法を用いることは、美術的な考えとしてナチュラルなことでした。メヘンディはインドに古く伝わるアートで、ヘナのタトゥなどで描かれます。映画に取り入れたのはこれが初めてだと思います。カットアウトは切り絵で、1900年代インドの影絵を参照にしています。水彩画はイザベルが描き、それをデジタルに取り込みました」と説明した。

第2回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催、チケットは絶賛発売中。公式HP(https://niaff.net)でのクレジットカード決済、または上映会場にて現金でも購入可能(※一部例外もあり)。チケット販売、プログラム、会場など詳細は公式HP、SNSで随時告知する。

(左から)ジョエル・ボードロイユ監督、ディエゴ・フェリペ・グスマン監督、「スルタナの夢」プロデューサーのディエゴ・エルゲラ