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 日本でも昔からイナゴや蜂の子が貴重なたんぱく源として一部地域で食されているように、世界でもアリが食用として流通している地域がある。

 栄養価が高く持続可能な食材として注目されている昆虫だが、科学者たちはまじめにその味や香りを解明しようとしている。4種の食用アリの味を調べて、成分を分析したのだ。

 アリによって香りや風味、味に違いがあることがわかったという。

【画像】 4種のアリの味や香りを分析

 栄養価が高く、しかも環境にやさしいとされる昆虫食だが、虫が嫌いな人にとってはかなり抵抗のある食材だ。

 だがメキシコ東南アジアなど、一部地域では当たり前のように食されている。

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 そこで米国サンディエゴ州立大学のリュウ・チャンチ准教授らは、食用として流通する4種のアリの味や風味を確かめてみることにした。

 すると見た目はともかく、食用アリは意外にも、お肉やパンを焼いたような香ばしさやキャラメルのような甘いニオイがしたという。

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 リュウ氏らの研究チームが調べたのは、4種の食用アリ(ケアリ、チカタナアリ、ツムギアリ、トゲアリ)の風味の素となるニオイ化合物だ。

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 ガスクロマグラフィー質量分析でアリが持つ揮発性化合物を調べ、それらを嗅覚計で検出されたニオイと照らし合わせていく。

 中にはまったく匂わないニオイもあったという。それらはアリのフェロモンで、たとえば「アルカン」という化合物は、どんなに濃くしても人間にはニオイがわからない。

What makes different ants TASTE the way they do? | Headline Science

食用アリの香りや味を特定

 こうした例外もあるが、今回の調査では次のようなアリのフレーバーが特定されている。

ケアリ(common black ant)
酸っぱいお酢のようなニオイ。これは毒腺から分泌されるギ酸のニオイだ。警報フェロモンとして使用されるアルカンも大量に検出された。

チカタナアリ(chicatana ant)
一般的な蟻にあるギ酸がなく、そのフレーバーはナッツや木、あるいは脂肪のよう。脂肪や草のようなニオイは、アルデヒド類によるものと考えられる。

ナッツにも似た香ばしいニオイは、ピラジン類に由来する。これは肉やパンを調理したときの香ばしさを生み出す化合物なのだが、このアリはこれを「道しるべフェロモン」(文字通り、エサまでの道しるべになるフェロモン)として使っている。

ツムギアリ(weaver ant)
ナッツのような、甘いキャラメルのフレーバー。ピラジン類やピロール類による香りだ。だがアミン類が多く含まれているため、干し草やおしっこのような異臭もある。

トゲアリ(spiny ant)
成虫にはギ酸がある。ただし毒腺は成虫にしかないので、サナギの段階ではギ酸がない。
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昆虫食の未来

 研究チームは今後、もっと違う種類のアリや、オスとメスの風味の違い、さらには卵(一部の国では珍味とされる)のような発生段階の風味や、調理法による違いも調べてみたいと考えている。

 環境にやさしいタンパク源として注目される昆虫食だが、今後それが私たちの食卓に定着するかどうかはわからない。

 たとえば、食物アレルギーのある人は注意が必要だ。そこに含まれる「トロポミオシン」というタンパク質(筋肉の収縮に関係する)は、甲殻類や貝などによるアレルギーの原因と同じだ。

 だからエビやカニなどにアレルギーのある人は、昆虫についても同様である可能性がある。

 また昆虫の養殖は、畜産より温室効果ガスの排出が少ないとされるが、大規模な養殖はまだ新しい産業であるため、価格が高い。

 くわえて、それまで昆虫を食べなかった人たちが、本当にそれを受け入れるかどうかも課題だ。

 それでもリュウ氏は昆虫食の未来を信じている。

 「昆虫はバラエティ豊かで、独特の風味があります。食材として使えば、料理の可能性が広がるでしょう」

 この研究はアメリカ化学会の春季学会(2024年3月17~24日)で発表された。

References:The many flavors of edible ants - American Chemical Society / Investigating the many flavors of edible ants / written by hiroching / edited by / parumo

 
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食べ比べてみた。4種の食用アリの味や香りを科学者が徹底調査