ねこに転生したおじさん
『ねこに転生したおじさん』(やじま/KADOKAWA

 主人公が別の世界や違う生き物に転生する物語はドキドキ、ハラハラさせられることも多い。だが、『ねこに転生したおじさん』(やじま/KADOKAWA)は、いわゆる普通の転生ものとは違い、ほっこり感満載な作品となっている。

 なぜなら、元サラリーマンのおじさんがかわいい猫に転生し、とことん愛でられるという、なんともハートフルなストーリー展開であるからだ。

『ねこに転生したおじさん』を読む

 本作は、X(旧Twitter)発の猫コミック。猫好きからの熱い支持を受け、20ページの描き下ろし作を加え、書籍化された。また、「次にくるマンガ大賞2023」ではWEBマンガ部門の2位に輝いた注目作でもある。

 ある日、サラリーマンだったおじさんは猫に転生。転生前に働いていた会社のコワモテ社長と、ばったり遭遇する。社長にいつも怒られていたおじさんは視線が自分に向けられていることに気づき、正体がバレているのでは…と怯えた。

 ところが、おじさんの予想は大ハズレ。実は社長、大の猫好き。かわいい“おじねこ”に胸キュンし、「うちの子になってくれ」と懇願してきたのだ。

ねこに転生したおじさん

 こうして、おじねこは「プンちゃん」という名前を貰い、社長宅で暮らすことに。猫がいる生活がスタートしてからというもの、社長はプンちゃんにデレデレ。プンちゃんを前にすると顔が緩み、口調も変化。仕事中にもプンちゃんのことが頭から離れなくなり、秘書に「プンタン」というタイ人の恋人がいるのでは…と勘違いをされてしまう。

 対して、猫初心者のおじさんは人間らしい一面が出ないよう、猫らしい振る舞いを習得しようと奮闘。

ねこに転生したおじさん

ねこに転生したおじさん

 サラリーマン時代の真面目さが抜けない「おじねこ」と、どこか猫らしくない愛猫を受け入れ、溺愛する社長の日常には予測できない笑いがたくさんあり、頬が緩む。

 また、猫を迎えたことで、どんどんコミカルになっていく社長の姿に自身を重ねる猫飼いも多いことだろう。愛猫と離れたくなくて出勤を渋ったり、うちの子のオリジナルソングを制作したりするのは、猫飼いの日常あるある。こうした描写が多々あるからこそ、本作を手に取ると、愛猫がいる「平凡な日常」の尊さを改めて痛感させられもするのだ。

 ストーリーが進むと、プンちゃんはお隣さんの飼い猫「てぷちゃん」とも交流を深めるようになり、日常はより賑やかなものになっていく。

ねこに転生したおじさん

ねこに転生したおじさん

 サラリーマン時代に培ったコミュニケーションテクニックを活かしながら、てぷちゃんと仲良くなろうとするおじねこの頑張りは必見だ。

 もし、自分が猫になったとしたら、見える世界はどう変わるのだろうか。そんな楽しい妄想をもたらしてもくれる本作は、笑って癒される猫コミック。愛くるしいプンちゃんのイラスト横に毎回登場する、おじさんの表情にもクスっとしながら、社長たちの日常を見守ってほしい。

文=古川諭香

ねこに転生したおじさん×猫好きなコワモテ社長のユニークな日常。おじさんだとバレないように工夫する猫が可愛い