シンプルに研ぎ澄まされた美しいフォルムの彫刻で知られるコンスタンティンブランクーシ。20世紀彫刻の先駆者として高く評価される巨匠の創作の全貌を紹介する、日本の美術館では初となる展覧会が、東京・京橋のアーティゾン美術館で、 3月30日(土)から7月7日(日)まで開催される。

ルーマニアに生まれ、ブカレスト国立美術学校に学んだブランクーシ(1876-1957)がパリに転居したのは、1904年のこと。近代彫刻の巨匠ロダンアトリエに助手として招き入れられ、自身も具象的な人物像を制作していたものの、短期間でアトリエを離れたブランクーシは独自の創作に取り組み始める。同時期にパリで注目を浴びたアフリカ彫刻などにも通じた、単純化された野性的な造形。様々な石や木、金属などの素材に対する鋭い感性に裏打ちされた洗練されたフォルム。ブランクーシの果敢な探究は、同時代の、さらに後続世代の芸術家に多大な影響を及ぼすことになる。

コンスタンティンブランクーシ》1924年(撮影:キャサリンドライヤー)、石橋財団アーティゾン美術館

今回の展覧会は、ブランクーシの遺産を管理するパリの「ブランクーシ・エステート」と国内外の美術館等から出品される彫刻作品約20点を中核とし、フレスコやテンペラなどの絵画作品やドローイング、写真作品を加えた約90点で、そのブランクーシの足跡の全貌をたどるものだ。

彫刻作品では、アカデミックな写実性やロダンの影響をとどめた初期作から、対象のフォルムをその本質へと還元させていく1910年代、そして「鳥」をテーマとした作品に代表される主題の抽象化が進められた1920年代以降まで、その変遷を目の当たりにできる充実した展観が実現する。

もうひとつ注目したいのは、彫刻以外の作品にも目配りがされていること。ブランクーシは絵画も描き、また自身の作品やアトリエの情景をとらえた写真作品も残した。絵画や写真など異なる手法を用いて自らの彫刻作品を相対化していったその横断的なアプローチは、近代の芸術家ならではのものだそうだ。様々なジャンルの作品が並ぶ同展は、そうした創作者としての多面性にも光をあてる興味深い展観となる。

コンスタンティンブランクーシ《雄鶏》1924年(1972年鋳造)、豊田市美術館

日本美術館ではこれまで開催されてこなかった巨匠の大規模個展。対象の本質をとらえるその唯一無二の創作の全容を目撃しに、ぜひ会場に足を運びたい。

<開催概要>
ブランクーシ 本質を象る』

会期:2024年3月30日(土)〜7月7日(日)
会場:アーティゾン美術館
時間:10:00~18:00、金曜(5月3日を除く)は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜(4月29日5月6日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
料金:ウェブ予約チケット1,800円/窓口販売チケット2,000円(同時開催展も観覧可)
※学生無料(高校生以上要ウェブ予約)
※予約枠に空きがある場合、窓口販売あり
同時開催:石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示
展覧会詳細ページ
https://www.artizon.museum/exhibition/detail/572

コンスタンティン・ブランクーシ 《接吻》 1907-10年、石橋財団アーティゾン美術館