反響の大きかった2023年の記事からジャンル別にトップ10を発表してきた。今回は集計の締切後に、実は大反響だった記事に注目。年間ランキングで忘れられがちな11月12月に公開した仰天ニュースから選ばれた、第6位の記事はこちら!(集計期間は2022年11月~2023年1月。初公開2023年11月12日 記事は取材時の状況)
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 ここ数年、ニュースなどで頻繁に取り上げられている「あおり運転」。20年6月には改正道路交通法が施行され、以前よりも厳しく罰せられるようになったが、激減しているとは言い難い。

 自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険が8月に発表した『2023年あおり運転実態調査』によると、あおり運転をされたことがあるドライバーは53.5%。最初に調査を行った18年(70.4%)に比べれば改善しているが、前回調査の22年(51.3%)よりは悪化している。つまり、半数弱の方が被害経験を持つわけだ。あおり運転の被害者は後を絶たない。

 だが、因果応報と言うべきか。あおり運転をした運転手の悲惨な末路とは?

◆バスによる自転車への“あおり運転”に「ゾッとした」

 自転車通勤の小野田義雄さん(仮名・50代)は会社からの帰宅途中、バスによるあおり運転の被害に遭った。

 歩道がなく道幅も狭い県道。自転車はいわゆるママチャリなので、それほどスピードは出さずに走っていた。すると、後方から小型バスが現れた。

「私はバスに抜いてもらおうと左側に寄ったのですが、追い抜く気配はなく、私の後ろをピタリとひっついたままで……。これが“あおり運転だ”と気づいて、ゾッとしましたね」

 しばらくすると、道路工事で片道通行になったという。小野田さんはあおられるまま片道通行の道路を必死に走っていた。そして、対向車線の車が来なくなったタイミングで、バスは小野田さんを追い抜きにかかったと“小野田さんには思えた”そうだ。しかし……。

◆接触事故後、運転手は“当て逃げ”!?

「バスの運転手は私に対して横から幅寄せをしてきました。明らかに嫌がらせで怖かったのですが、止まる気配がなく、ついに接触してきたんです」

 まさかの接触で小野田さんは転倒してしまう。「このとき、頭を打っていたら……と思うとヒヤッとします」と当時を振り返る。さらに、思いもよらない展開が待っていた。

「バス運転手は、あおり運転はしても接触事故まで起こす気はなかったのでしょう。急にスピードを上げて“走り去って”行きました。私は、咄嗟に110番しました」

 小野田さんは自転車を道路わきに寄せ、呆然として座り込んでいた。すると、当て逃げしたと思っていたバスが小野田さんのところへ戻ってきたという。

「おそらく、私と接触して怖くなったのだと思います。バスから降りてきた運転手が『何だよ、何か文句あんのかよ!』と言って近づいてきたんです。私が『アンタさ、僕に当て逃げしたでしょ』と言い返したのですが、『そんなのしてねぇよ!』って、加害者として信じられない言い方でした」

◆運転手は免許取り消し、会社をクビに…

 運転手は延々と怒鳴り続けていたが、警察が到着した途端、態度は急変。

「声が小さくなって怯えていました。結局、防犯カメラやバスのドライブレコーダーから、運転手は『道路交通法の救護義務違反および報告義務違反に該当し、それぞれの法定刑は10年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられる可能性がある』とのことで、裁判はこれからですが、免許は取り消され、運転手はクビになったようです。当然の報いだと思います」

 後から分かったことだが、彼は介護施設のバスの運転手で、利用者からは“運転が乱暴で怖い”と苦情があるような人だったようだ。

◆深夜のタクシー車内に悲鳴が響く

 加藤祐樹さん(仮名・50代)は、飲みに行った帰りに、友人3人とタクシーに乗った。その際にあおり運転に遭ったとか。

「私は、タクシーが走り出すとすぐに眠ってしまったのですが、しばらくして私の隣に座っていた友人(女性)の悲鳴で目が覚めました。ワケが分からず周りを見ると、私たちが乗っているタクシーに、黒い車が幅寄せをしてきていたんです」

 片側二車線の道路で、どうやら少し前からタクシーをあおってきているらしく、女性は「怖い、怖い、やめて」と半泣き状態だったという。

 真夜中だったため、周囲に他の車がまったく走っていないことも恐怖を倍増させた。いったい、何の目的で!?

 そして黒い車が見えなくなった次の瞬間……。

元ヤンの友人が“あおる”運転手を黙らせた

「タクシーの後ろからぶつかってきたんです。私は衝撃と同時に首の痛みを感じ、手で首の後ろを押さえながら『痛い、痛い』とうめいていました。タクシーが停車すると、運転手が黒い車から出てくるところでした」

 若い男が肩をいからせ大股でタクシーに近づいてきたという。タクシーの運転手は、どこかに電話をかけようと必死だったそうだ。

 そんななかでタクシーから飛び出していったのは、助手席に座っていた加藤さんの友人である。

「友人は昔、地元では喧嘩が強くて有名なヤンキーだったんです。さぞかし、運転手は驚いたことでしょう。一発逆転、すぐに勝負が決まったようでした」

◆交通事故の保険金で「特上うな重

 元ヤンの友人は「家どこだよ! 仕事は? 勤め先教えろよ!」と若い運転手に詰め寄った。相手はペコペコと謝罪し、「さっきまでの威勢はどこへ?」という状態で、「明らかにビビっていた」と加藤さんは振り返る。

 警察が到着すると、加藤さんたちは救急車で病院に運ばれたが軽症で済んだ。あおり運転による事故から3か月後。何度か整形外科に通ったが、怪我もすっかり治り、加藤さんたちは慰労会をすることに。

「私たちはいただいた保険金で、特上のうな重を食べました。不幸中の幸いというか……本音を言えば、スカッとした気分になりましたね(笑)」

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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