サッカー界に限らず何かと話題のスポーツ賭博。当然だが、選手たちには厳格なスポーツ賭博ルールが設けられており、違反すれば重い罰が科せられる。これまでサッカー界でも、一流選手たちがスポーツ賭博により出場停止処分を受けてきたので紹介しよう。

[写真]=Getty Images

◆■FWイヴァン・トニー

 スポーツ賭博による長期の出場停止処分を受けながら劇的な復活を果たしたのはブレントフォードに所属するイングランド代表FWイヴァン・トニー(28歳)だ。トニーは2015年にニューカッスルに加入してプレミアリーグに初挑戦するも、結果を残せずに下部リーグを転々とする。そして3部リーグで結果を残して2020年に当時2部のブレントフォードに加入。2020-21シーズンに31ゴールを叩き出して同クラブをプレミア初昇格に導いた。そして世界最高峰の舞台でも持ち前の強靭なフィジカルを活かしてゴールを稼いだ。2022-23シーズンにはプレミアリーグでFWアーリング・ハーランドとFWハリー・ケインに次いで得点ランク3位となる20ゴールを叩き出した。

 そして2023年3月のウクライナ戦でイングランド代表デビューも果たし、ビッグクラブへの移籍も秒読みと見られたが、賭博違反が発覚することに。トニーは2017年から2021年にかけて自身も出場している大会で126回も賭けを行い、29回は自分のチームにもベットした。そのうち13回は、自分が出場しなかったとはいえ、所属チームの敗戦にお金を賭けていたという。そのため昨年5月、イングランドサッカー協会が定める賭博規定を232件も違反したとして5万ポンド(約1000万円)の罰金処分と「8カ月」のサッカー活動禁止処分を受けた。最初の4カ月は一切の活動が禁止で、その後は練習参加が認められ、8カ月後に試合に出場ができるという処分だった。

 結局、噂されたビッグクラブへの移籍は実現せず、このまま選手としても消えていくかと思いきや、出場停止処分が明けると華々しい復活を遂げた。今年1月20日プレミアリーグ第21節のノッティンガム・フォレスト戦で復帰すると、いきなりネットを揺らしてフル出場。そこから5試合で4ゴールを決める決定力を見せつけて、今月の代表ウィークイングランド代表にも返り咲いた。この調子を維持すれば、EURO 2024のメンバー入りも夢ではない。

◆■MFサンドロ・トナーリ

 今季プレミアリーグでは、スポーツ賭博で出場停止処分を受けた大物選手がもう一人いる。それが、今季20年ぶりにチャンピオンズリーグに出場したニューカッスルが、大枚を叩いて連れてきた目玉補強。イタリア代表MFサンドロ・トナーリ(23歳)である。トナーリはブレシアでキャリアをスタートさせると、若くしてイタリア代表に選ばれるなど注目を集め、2020年に20歳でミランに加入。すると名門チームでも徐々に存在感を発揮して定位置を確保すると、2022年から代表チームでもレギュラーの座を掴み、欧州屈指のミッドフィルダーの地位を確立した。

 そして昨年7月に7000万ユーロ(約115億円)でニューカッスル鳴り物入りイタリア人として歴代最高額のプレーヤーとなった。新天地では開幕戦でいきなりゴールを奪うなど、即座に結果を残していたが、10月に入って状況が急変。違法賭博への関与の疑いでイタリア検察庁とイタリアサッカー連盟から取り調べを受けることになったのだ。トナーリはミラン時代に自分の所属するチームの試合でも賭け事を行うなど、イタリアの賭博規定に違反したことで10カ月間の出場停止が確定。昨年10月から今年8月までの出場停止処分のため、6月にドイツで開幕するEURO 2024本大会にも出場できない。

 トナーリは出場停止期間中も練習参加は認められており、更生プログラムやギャンブル依存症セラピーでイタリアに戻ることはあっても、普段はニューカッスルで練習に励んでいる。その態度は素晴らしいそうだが、大金で獲得した選手がわずか3カ月で長期出場停止処分となったニューカッスル側は「もし10カ月も離脱することが分かっていたら、契約内容を見直したり、契約の形を変えたりしたはず」と漏らしている。

 昨年のイタリアサッカー界はスポーツ賭博問題に揺れた。最初はユヴェントスに所属するイタリア代表MFニコロ・ファジョーリ(23歳)に疑いが浮上し、ある違法ネット賭博をイタリア当局が調査している時にファジョーリにも調査が及んで、同選手は7カ月間の出場停止処分を受けた。その流れでトナーリも取り調べを受けたのだ。さらにアストン・ヴィライタリア代表MFニコロ・ザニオーロ(24歳)も調査の対象となったが、同選手は違法サイトでのカードゲームなどの賭博は認めるも、スポーツ賭博に関しては完全否定しており処分を受けていない。

◆■DFキーラン・トリッピアー

 ニューカッスルのDFキーラン・トリッピアー(33歳)も賭博関連で出場停止処分を受けたことがある。高精度の右足でイングランド代表でも活躍するようになった右サイドバックは、2019年にトッテナムからアトレティコ・マドリードする際、事前に移籍情報をメッセンジャーアプリで友人に伝えてしまった。その情報を手にした友人がトリッピアーの移籍にベットしたのだ。トリッピアーには罪の意識はなかったようだが、友人から「アトレティコ・マドリードは6倍」とメッセージを貰うと、笑う絵文字を返していた。その後も何度かやり取りをしており、友人から「大金を賭けるべき?」と聞かれると「そうしたいなら、しなよ」と返した。

 こういったやりとりがイングランドサッカー協会の賭博規定の違反となり、アトレティコ・マドリードでレギュラーとして活躍していた2020年12月に7万ポンド(約1300万円)の罰金処分と10週間の出場停止処分を言い渡され、チャンピオンズリーグ16強のチェルシー戦などを欠場した。

◆■その他

 現役時代に問題児として知られていた元マンチェスター・シティのMFジョーイバートンは、10年間で1260件もサッカー賭博を行っており、2017年に18か月間の活動停止処分を受けた。現在ルートン・タウンに所属する元イングランド代表MFアンドロス・タウンゼント(32歳)も、若い頃に自身も出場していた大会で賭けを行い、サッカー協会の賭博規定を違反して1カ月の活動停止処分を受けたことがある。

 チェルシーリヴァプールなどで活躍した元イングランド代表FWダニエル・スタリッジも、リヴァプールに所属していた2018年にセビージャへの移籍の可能性があることを身内に明かし、兄弟が移籍についてベットしていた。結局、移籍はまとまらなかったが、その一件で2020年に2週間の活動停止処分を受けている。

(記事/Footmedia)

スポーツ賭博により出場停止処分を受けてきた選手たち [写真]=Getty Images