日本司法書士会連合会は、今年1月、40~60代の男女600人を対象に「相続登記義務化」についての独自調査を3年連続で行った。

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●3年以内に申請しなかったら過料を科される可能性も



 2021年4月、これまで任意とされていた相続登記の申請を義務化する法律が成立し、今年4月1日に施行となる。相続した土地や建物の登記が義務となり、正当な理由がないにも関わらず3年以内に相続登記の申請がされなかった場合には過料が科される可能性がある。

 しかし、昨年に続き、同連合会が独自に調査を行ったところ、「相続登記」義務化を知っている、と答えた人は「48.6%」という結果となり、昨年の「27.7%」から認知度は増加したものの、未だに2人に1人は知らない状態であった。

 「相続登記」が義務化される前に開始した相続についても、義務化の対象となることを認知していると答えた割合は、「15.2%」という数字となり、約8割の人が認知していないという調査結果となった。また、「相続登記義務化」の開始時期の認知も「21.3%」の人しか知らない現状から、施行後の混乱も懸念される。

 全国の司法書士会では、相談窓口として「相続登記相談センター」を設置して相談に対応している。一人で悩まず、まずは気軽に相談してほしいとしている。

 「相続登記」の申請が「3年以内」に必要なことの認知率は「12.2%」であった。相続登記の申請義務化により、「不動産を相続したことを知ったとき」から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく期限内に登記をしなかった場合には10万円以下の過料の適用対象となる。施行が直前に迫ったタイミングではあるが、相続登記義務化の内容を詳しく把握していない人が多くを占めている。

 「不動産を相続したことを知ったとき」とは、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日のことを指す。つまり、自身が相続人であることを認識していても、相続財産に不動産があることを知らなければ、登記義務は生じないことになる。

 「相続土地国庫帰属制度」の認知率は「8.3%」だった。土地を相続したものの使い道がなく、手放したいけれど引き取り手もなく、処分に困っている人が多く、そうした土地が所有者不明土地の予備軍になっているといわれている。そこで、所有者不明土地の発生を予防するため、土地を相続した人が、不要な土地を手放して、所有権を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月27日に施行されている。

 昨今、各メディアでも取りざたされている「空き家問題」だが、今回のアンケートでも空き家を始め、それに該当する建物が身近にあると答えた人は「36.2%」という数字になった。今後も全国で「空き家」が増えていくことが予想されているなか、近隣に「空き家」やそれに該当する建物がある、と答えた人が多いということは、改めて「相続登記」義務化の認知度を高めていく必要性があるという結果となった。

 直近3年以内に「相続人」になった経験がある人のうち、「相続登記」をする際の相談先は「司法書士」が「48.6%」でトップとなった。相談先の窓口としての認知率は高くなっており、また昨年よりも認知率が上昇した結果となった。

 「相続登記」を「司法書士」に相談した人の「83.3%」が満足した、と回答した。満足した理由としては、「問題なく完了したから」、「素早くスピーディーに完了したから」という回答が挙げられた。専門的な法律知識をもつ、相続登記の専門家である司法書士だからこそ、問題解決に向けた取り組みを進めることができたということが数字として表れている。
4月1日から全面施行の「相続登記義務化」