映像化不可能と言われていた、全世界シリーズ累計670万部の綾辻行人によるベストセラー小説『十角館の殺人』の実写ドラマが3月22日(金)からHuluで独占配信を開始する。本作は、十角形の奇妙な外観を持つ“十角館”を有する角島(つのじま)を舞台に、大学のミステリ研究会のメンバーたちが殺人事件に巻き込まれていく様を描いたミステリー。角島から遠く離れた本土で、「死者からの手紙」が届いたことにより、半年前に亡くなった天才建築家・中村青司(仲村トオル)の死の真相について調査し始める元ミステリ研究会メンバー・江南(かわみなみ)孝明(通称・コナン)役の奥 智哉と、手紙をきっかけに江南と謎を追い求めることになる島田潔役の青木崇高に撮影秘話を聞いた。

【写真】レトロファッションで劇中に登場する奥 智哉×青木崇高のバディ

■「青木さんは僕の想像を毎回超えてくる」(奥 智哉)

――十角館に滞在する角島パートと、お二人をはじめとした探偵パートの対比がすごく面白いなと思いました。現場ではずっと奥さんと青木さんはセットで動いていたのでしょうか?

奥:そうですね。ほとんど島田さんと一緒のシーンだったので。

青木:ずっと一緒だったよね。島田と江南のコンビネーションが、このドラマにおける一つの見どころでもあると思うので、各シーンの目的をクリアにしながら、二人の関係性をより面白く、ちゃんと視聴者に届けるようにということを意識して演じていました。島田と江南は急に出会って、四六時中行動を共にするので、日常にはあまりない関係性です。それをいかに自然に面白く作れるかということを考えながら撮影していました。島田はいつまでも空気が読めないところを嗜められるんですけど、いやいやいやいや、江南も大概やでっていう(笑)。

奥:そうですね、実際(笑)。

青木:だから、奥くんとは良いコミュニケーションを取れる関係でよかったなと思ってます。

奥:特にお互い「ジョジョの奇妙な冒険」が好きなので、それで一気に打ち解けてより関係性が深まったように感じます。

――共演してみて感じた、お互いの自分に持っていないすごいところを教えてください。

奥:青木さんは同じお芝居でも、全く違うお芝居に見えると言いますか。島田さんが江南にちょっかいをかけるシーンが結構あるのですが、「自分が想像していた島田さん」と「青木さんが出してくる島田さん」が全く違っていて…引き出しの多さに驚きました。僕もその都度いくつかパターンを用意はしていたのですが、それをことごとく打ち破られてしまって…。毎回僕の想像を超えるお芝居をされるので、やっぱりすごいなと改めて思いました。

■「本当にちょけまくって(ふざけまくって)ました」(青木崇高

――そんな青木さんのお芝居に対応していくのも大変だったのでは?

奥:そうですね。僕はクランクイン前に、監督とお話しする機会を多くいただいたので、そこで島田さんと江南のやり取りはテンポ感やテンションを大事にしてほしいと言われていて。とにかく僕はもう青木さんのお芝居に食らいついていくということだけを考えていました。

青木:その分、僕はわりと自由にやらせていただきました。骨の部分は原作を忠実にやらせていただいたのですが、それ以外は僕だからできる島田にしようと。原作を読んで印象的なところを書き出して、自分の見た目をはじめこの素材をどう出せば、島田らしい癖のある部分に繋がっていくのかなということを常に考えていました。その中で、内片(輝)監督とも長いこと一緒にやらせていただいているのもあって、これは結構遊べるな…いや、遊ばないといけないな! と思ったんです。殺人事件が軸なので、そのシリアスな展開の中で、視聴者にはどこか憩いの場も必要なのではないかと。そう言った休息地みたいな役割も島田と江南のやり取りで求められるのかなと思い、それを意識してちょけられるだけちょけるようにしていましたね。

奥:本当にちょけまくってましたよね(笑)。

青木:脚本のセリフや読み方は、スタンダードなベースをいろんな角度から見直して変え、僕なりの島田に作り上げていきました。それに対しての奥くんからの反応も良くて、感覚が柔軟だなと驚きましたね。初主演ということもあって、いろいろ苦労はしていたと思うのですが、僕としてはすごくやりやすかったですし、奥くんから返ってくる反応も面白かったです。僕ら二人のシーンは監督を含めて、じっくりしっかり話し合いながら作っていったので、そういうみんなでシーンを作り上げていく喜びみたいなものも共有できてよかったなと感じています。

■「十角館の殺人」で芝居の楽しさにも気づかせてもらった

――そんな今回が初主演作である奥さんは、改めて役者として学んだことはありましたか?

奥:監督からお芝居の基本を改めて学ばせていただきました。お芝居自体は今までもやってきてはいたのですが、これまで何となくやってきたところを、監督に噛み砕いて丁寧に教えていただきました。たとえば、相手のお芝居を受けて、それに素直に反応して演じるだとか。そういうところを言語化して教えていただいたのは、監督が初めてだったので、より深く理解できました。今まで納得いっていなかったところが、すっきり晴れたような感覚です。

島田さんがちょっとちょけてきたら、それに対して江南はもっと強く返してみるパターンがあっても面白いのかなとか、いろんなことを考えながら臨めたので、お芝居の楽しさにも気付かせてもらえました。今回の「十角館の殺人」で、初めてちゃんとお芝居できたなという感覚が自分の中にあります。

――奥さんは、オフィシャルコメントで「島田役の青木崇高さんからはお芝居だけでなく、人としての在り方についても教えていただき…」と言っていましたが、 青木さんからはどんなことを学びましたか?

青木:怖い怖い怖い…(笑)

奥:いやいやいや(笑)。「一人旅がいいよ」というお話をしていただいて、「一人旅は自分一人だから、その瞬間そのときの判断を自分だけでしなくちゃいけない。だから、判断力や受け取る力が養われるよ」とか。あとは、「その旅で経験したことを糧にしたり、そのとき自分が感じた体験を大事にしたり、そういうことを積み重ねていくと世界が広がるよ」みたいなことを教えていただきました。

――ということは、青木さんは結構一人旅をしているのですね。

青木:はい、よくしていました。国内だったらスケジュールの合間で行けますが、海外は今は仕事で、なかなか時間が取れなくなっちゃって…。でも、一週間前くらいに、ブラジルに行ってましたね。

――ブラジル!? 地球における日本の裏側ですよね。すごいですね。

青木:我ながらいいことを言ったなと思うのは、一人旅に行くのは本当に判断力が鍛えられるんですよ。人間の考えられるキャパシティの中で優先順位が自ずと出てくるので、その選択をずっと繰り返していくと、本当に瞬間の判断力が上がっていきますし、自分に必要なもの、必要じゃないものということも、すぐに感覚的に取捨選択ができるようになるんです。だから、情報処理という観点においても一人旅はいいと思います。

■「エンタメの力で世の中を丸くしたい」(青木崇高

――では最後に、今回、映像化不可能と言われていたことを実写化した作品ということで、お二人が「不可能かもしれないけどいつか実現したいこと」を教えてください。

青木:すごいのを先に放り込んでいいんだったら言っちゃうけど…。

奥:ど、どうぞ!

青木:究極的には、僕は世界平和ですね。不可能とは思いたくないけど。カッコつけたように思われるかもしれないですが、エンタメとかそういった力で、人の心に安らぎを与えたり、この世の中を少しでも丸くしたりして、平和に近付けられたらなと。

奥:そんなこと言われたら…。僕、超くだらないことを言おうとしていました…。

青木:いいのよ、言いなよ。

奥:…あれ? 僕、何て言おうとしたんだっけな…。

青木:僕“も”でもいいんだよ(笑)

奥:そうですね、僕もそれは思いますが…。最初にパッと頭に浮かんだのは、空を飛びたいでした。

青木:(笑)

奥:…あ、そうだ! 朝を強くしたいですね。

青木:え、でもロケで朝早いときとかさ、全然遅れることなかったじゃない?

奥:お仕事では起きられるのですが…プライベートだとダメで。遅いとお昼過ぎに起きてしまうこともあるんですよ。やっぱり朝早く起きることによって、絶対にその日一日が革命的に変わると僕は思っていて。とんでもなく素晴らしい日になるのを何回か経験もしているので、とにかく休みの日でも朝早く起きたいですね。

青木:気持ちいいもんね。

奥:そうなんですよね!

――お互いのコメントに対してフォローし合っていて、やはりバディ感ありますね。

奥:ありがとうございます(笑)

青木:だてに江南と島田やってませんからね(笑)

「十角館の殺人」について語った青木崇高と奥 智哉/撮影=安田まどか