毎回大反響を巻き起こす、阿部サダヲ主演×宮藤官九郎脚本の金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系/毎週金曜22時)。阿部、仲里依紗、吉田羊、磯村勇斗、河合優実ら個性あふれる実力派キャストの中で、負けず劣らずの存在感を放つのが向坂キヨシ役を務める坂元愛登だ。15歳になったばかりの坂元に、本作への思いや反響を聞いた。

【写真】キヨシのイメージとは真逆にもほどがある! 坂元愛登、撮り下ろしショット

◆自身と共通点のないキヨシ役 役作りに悩みも

 坂元は2009年生まれの15歳。2022年公開の妻夫木聡主演映画『ある男』で安藤サクラの息子・悠人役で俳優デビュー。その後、金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)で佐藤健少年時代、ドラマ『unknown』で田中圭少年時代、映画『罪と悪』で高良健吾少年時代を演じるなど着実にキャリアを重ね、本作のキヨシ役に大抜擢された。

 演じるキヨシは、母・向坂サカエ(吉田)と共に2024年から1986年にタイムスリップしてきた中学2年生。年頃らしくエッチなことで頭がいっぱいだが、純子(河合)に一目ぼれし、不登校の同級生のために何かできないかと奮闘するなど、純粋な部分も持ち合わせている。

――毎回SNSなどで大きな話題を集める『不適切にもほどがある!』ですが、ご出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

坂元:めちゃくちゃ嬉しかったです。本当にめちゃくちゃ嬉しかったんですけど、撮影が近づくにつれて、どんどん緊張や、自分にできるかな?っていう不安や怖さがありました。でも今は、台本が届くのがめちゃくちゃ楽しみで、ワクワクしながらページをめくり、毎回声を出して笑っています。

――演じるキヨシと坂元さんには共通点はありますか?

坂元:共通点はあまり思いつかなくて。キヨシのような純粋でピュアなかわいさとかもあまりないですし…(笑)。

最初台本を頂いた時に、キヨシは純粋でピュアなかわいさを持っていて、かつ天然な部分もあり、でも真面目という、ちょっと子どもっぽいキャラクターだと思っていたんです。でも、クランクインの前に監督とお話した時に、「キヨシは実は令和で不登校だった」ということを聞き、「おっと!」となって。そこをどう表現しようかなとすごく悩みました。最初はかわいさとかをどう出せるかと考えていたのですが、それを聞いてからは、キヨシが不登校だったということを皆さんが知った時に、「あぁ、だからこんな子だったのか」と思っていただくにはどうすればいいんだろう?とめちゃくちゃ考えました。

――『ある男』『罪と悪』などで演じられた役どころとはまったく違ったキャラクターですよね。

坂元:今まで演じさせていただいた役とは違い、今回は全く演じた事がないような役だったのでなかなか思うように演じられなくて、毎回「もうちょっとこうできたな…」と反省ばかりしています。

リーゼント風髪型は「未知の感じ」 学校の友達の反応は?


――キヨシといえば、リーゼントや短ラン、ボンタンなどファッションもすっかり昭和になじんでいます。ツッパリ風になったキヨシにSNSでも絶賛の声があふれました。

坂元:髪を切るということは知っていたんですけど、どんな風になるのかっていうのはイマイチ想像ができてなくて。いざ髪を切る時にどんどん剃られていくんですよね(笑)。刈り上げるのもやったことがなく、今までずっと長めの髪だったので、未知の感じでした。最初はびっくりしたんですけど、2~3回見たら、これがキヨシだって慣れてきて、今では、あの髪型にしたら自然にキヨシになれる感じになってきました。

――お友達からの反応は何かありましたか?

坂元:めちゃくちゃ面白くて毎週楽しみにしているって言ってくれる子も多くて、すごく嬉しいです。第1話が放送された時は、「地上波でおっぱいが見たいんだ!」というキヨシのセリフを学校で友達にマネされました(笑)。ちゃんと観てくれてるんだっていうのもありますし、友達も楽しそうにマネしてくれていたので、うれしいですし、もっとやってくださいっていう感じです(笑)。

――毎回、今となっては驚きの昭和エピソードが続々出てきます。坂元さんにとって、一番驚いたことはなんでしょう?

坂元:僕、ルービックキューブが得意なんです。できたらかっこいいなくらいのノリで始めたんですが、小川家のセットに置いてあるんですよ、ルービックキューブが。それにすごく驚きました。昭和で流行ったものだったんだ!って。

――坂元さんにとっては、最近のものなんですね。

坂元:始めたきっかけは、仕事で一緒になった子がやっていたんです。それで買って練習したんですが、解説の動画とかを見ながらやりこんだら、朝から始めて昼くらいまでにはできるようになりました。めちゃくちゃ楽しいです。

◆目標とする俳優は磯村勇斗「人としてもこんな人になりたい」


――阿部さん、吉田さん、磯村さん、河合さんなどそうそうたる皆さんとの共演はいかがでしょう?

坂元:最初の頃からずっと、皆さんどんどんセリフとかにアレンジを加えて、より面白く!という感じで演じられていて。それがとにかく面白くて、こんなにぶっ飛んでいいんだ!と驚きました。僕は、こういうことをしたら面白いんじゃないかと思い付いてもなかなか行動に移せなかったのですが、皆さんがどんどんアレンジされているので最近は少しずついろいろとやってみたりしています。お芝居もそうですし、現場の立ち姿だったり、すべてが勉強になります。

――撮影現場の雰囲気はいかがですか?

坂元:皆さん気軽に話しかけてくれたり、会話に混ぜてくれたり、優しい方々ばかりです。喫茶店「すきゃんだる」のマスター役の袴田吉彦さんがすごくかわいがってくださって。会うたびに「キヨシ~」って話かけてくれたり、リハーサルが終わったら目が合ってニコってしてくれたりするので、うれしいです。

――坂元さんのパーソナルな部分もお聞きしたいのですが、俳優を志すきっかけはなんだったのでしょう?

坂元:兄がいるのですが、兄がテレビを見ながら「こういう仕事楽しそうだね」って軽く言ったところ、親が「やってみる?」となぜか僕も巻き込んで一緒に書類を送ったという感じです。始めたころは、お仕事は楽しかったですけど、友達と遊ぶ方が楽しい時期だったので、あまりストイックじゃなかったなとすごく後悔しています。

『ある男』への出演が決まってから、ようやく仕事という意識がついてきたという感じです。このオーディションに落ちたらやめると家族にも話していて、最後にしようと決めて受けたオーディションだったので、『ある男』という作品に出合って、石川慶監督に抜擢していただいたから、今このお仕事ができていると思いますし、自分の中でとても大きい作品です。

今はどんな役でも演じることが楽しいですが、自分が経験したことのない状況や役を体験できるのが本当に楽しいです。

――目標とする俳優さんはいらっしゃいますか?

坂元:磯村勇斗さんです。もともと好きな役者さんだったのですが、『正欲』という映画が、すごかったんです。すごいって軽く言うのは失礼な感じがするんですけど、とにかくすごくて。観終わってめちゃくちゃ涙が出てきて、お芝居でこんなに人の心を動かすことができるんだ!と感じた作品でした。磯村さんはその役としてただ生きているという感じで、とても心惹かれました。

――そんな目標とする俳優さんと共演がかないました。

坂元:そうなんです。『正欲』とは真逆な作品や役なのですが、コメディコメディでしっかりぶっ飛んでいて、振り幅がすごいなと思います。

現場でも優しく声をかけてくださって、外でのロケは寒かったりするのですが、「キヨシ大丈夫? 寒くない?」って毎回声をかけてくださるんです。人としてもこんな人になりたいなって思います。

――リアル「ムッチ先輩とキヨシ」のような関係なんですね。それでは最後に今後の注目ポイントを教えてください。

坂元:ストーリー全体はもちろん、キヨシが未来に戻るのか、戻れないのかというところもそうですし、お父さんであるイノウエくんとこんなに仲良くなって大丈夫なのか、キヨシのこれからにも注目していただけるとうれしいです。

(取材・文:田中ハルマ 写真:上野留加)

 金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』は、TBS系にて毎週金曜22時放送。

坂元愛登  クランクイン! 写真:上野留加