今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。

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写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

 そもそも、コラボレーションと別注とは? 賢明なる読者諸氏であれば当然ご存知のことだろうが、前口上として述べさせて頂く。まずは前者のコラボ。同業種/異業種と“共創したもの”を指す。今では一般的に使われているが、我が国における歴史は案外新しい。その起源は、裏原宿カルチャーを起点に日本のストリート・シーンを世界に知らしめたクリエイター・藤原ヒロシ氏が、グラフィックデザイナーのSK8THING氏と共に手掛けていたブランド〈グッドイナフ〉と〈ポーター〉の合作によるバッグとされる。

 これに対し、別注は特別注文の略称。既存のアイテムに、通常品にはない独自のアイデアを加えて“作ってもらったもの”をこう呼ぶ。色を変えるカラー別注は比較的容易なため、セレクトショップなどで広く行われている。

 かように意味合いこそ異なるも、共にスペシャルなアイテムであることには変わりなく、共通するのが取り合わせの重要性。松に鶴、梅に鶯、藤に不如帰。どれも花札でお馴染みか。要は上手く調和するカップリング、ワイン用語でいうところのペアリング。そこで今回はアチラとコチラ、両者の個性を損なうことなくむしろ際立たせ、しかも話題性もありつつ鮮度抜群。そんな売り切れ御免の5足を取り上げる。

 

1. ReeboATMOS×APPLE BUTTER STORE「CLUB C 85 VINTAGE」

左右非対称のアイコンで、奥ゆかしく主張するトリプルネーム

 掲げるだけで金看板となるトリプルネームの7文字。これを実現させたのが、日本を代表するスニーカーショップ・アトモスと福岡のセレクトショップ・アップルバターストア。以前よりポップアップを共同開催するなど親交があったことで実現した本コラボ。その核となるのが、リーボックの名作コートシューズとして愛される「クラブ C 85」である。

 そのシンプルなデザインを活かしつつ、パイル地のライニングを落ち着きをもたらすモカカラーに。特徴的なサイドウィンドウ部分からのぞく文字は、左右で“Apple”と“Butter”と非対称になったオリジナル仕様だ。加えてシュータンのタグ部分の文字を白で統一し、ブランドロゴのみ控えめに主張。全体に漂う奥ゆかしい空気感は、本作が日本限定展開だからか。

2. White Mountaineering×Timberland「Motion Scramble」

ティンバー×WMという意外性と、独自技術のマリアージュ

 デザイン、実用性、技術の3つの要素を一つの形にしたアウトドアウェアを発信し、技術面における専門知識と革新的デザインで支持を集めるホワイトマウンテニアリングが、ティンバーランドの新定番と目される人気ハイキングシューズをアレンジ。

 スエードとコーデュラ生地で構成されたタフなアッパーには、高度な防水性を誇るティンバードライウォータープルーフを筆頭に、接地時のエネルギーを反発力へと変えながら快適な履き心地も実現するティンバークッシュ、グリップ力に優れたティンバーグリップのラグアウトソールといった独自技術を搭載。これにクッション性と衝撃吸収性を備えたEVAのミッドソールとフットベッドが融合し、本格的なアウトドアシーンにも対応する機能性を手に入れた。

3. MIZUNO FOR MARGARET HOWELL「MIZUNO TRAINING SHOES」

真摯にモノづくりと向き合う双方の姿勢とこだわりを具現化

 カラー別注にカテゴライズされる本作。ミズノの技術力とマーガレット・ハウエルの感性を融合させたコレクションも、今年で7年目を数える。今季はベースに、1995年にトレーニングから日常生活にまで対応するように開発された万能型モデル「コンテンダー」を招集。

 スエードとメッシュを用いたアッパーは、質感の異なる素材のグラデーションが表情を生み出すと同時に、強度や通気性、安定性といった機能性も備える。ほどよくボリューミーなミッドソールと厚みのあるインソールが相まって、履き心地も快適だ。もちろん見どころは配色。同色異素材で変化を付けたアッパーの黒とこなれた色合いのソール。両者の取り合わせが英国生まれのブランドらしいモダンな品格と落ち着きを、春の足下にもたらす。

4. ASAHI×SHIPS「US NAVY DECK SHOES」

春の装いにも馴染む、シックで無骨な大人のデッキシューズ

 1892年の創業以来、120年以上に渡り日本の靴文化を支えてきたシューズメーカーのアサヒシューズに別注を依頼したのは、日本3大セレクトショップの1つとも呼ばれる老舗のシップス。こうして誕生したのがスタイリングを選ばず汎用性の高い大人のデッキシューズである。

 1970年代のアメリカ製デッキシューズを元に、当時の靴型を再現。細身にシェイプされたシルエットが美しく、足へとフィットする快適な履き心地を提供する。その上、日本国内の職人によるヴァルカナイズ製法で作られるため、作りも丈夫で長くの愛用を叶える。今期の新作は生成り色のキャンバスアッパーを艶のある黒ソールにて引き締める2トーン配色。これまでの爽やかな印象から一変。心躍る春に、シックで無骨な趣きも悪くない。

5. CLEMENS×Bshop「GU_RE01」

テッキーだけどどこかクラシカル。これぞ“最高のふつう”

 最後に紹介するのは、2019年デビューの新星ブランド・クレメンスに、シンプルでありながら機能的で、暮らしの中で寄り添い続ける服と日用品を標榜するセレクトショップ・ビショップがカラー別注したこちら。アウトドアやランニングシューズの要素と意匠をミックスしたレザー×ナイロンのコンビアッパーと、設計から取り組んだ独自構造のソールが合体。

 軽やかで安定感のある履き心地と経年変化をも楽しめる素材感、さらに抜け感のあるベージュのワントーン配色で包み込むことで、テッキーな薫りを残しながらも都会的な面持ちに。上質感を狙ってレザーで統一する常道を捨て、あえて懐かしさを感じさせるナイロン素材を残すことにより、ビショップが理想とする“最高のふつう”を見事に具現化させた。

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