【味の境界線はどこ?】絶対にうまいカップ麺……「どん兵衛 だし比べ」東西南北の地域差をマニアが徹底比較!の画像一覧
インスタントラーメンハンターの大和イチロウです。私はインスタントラーメンを36年間、365日食べ続け、今までに計25000食を味わってきたマニアであり、最近では「中の人」としてもカップ麺や袋麺を監修する日々を過ごしております。そんなマニア目線で、インスタントラーメンの最新情報をお届けするこの企画。
どん兵衛の「南」が限定で初お目見え
みなさんご存知「日清のどん兵衛 きつねうどん」ですが、実は地域によって味が異なることはご存知だったでしょうか。北海道・東日本・西日本の3品に分かれているんですが、3月11日に「だし比べ」と題し「南」が限定で初お目見えしました。そこで今回は意外と知られていない味の地域差について深掘りしてみたいと思います。
どん兵衛はローカライズカップ麺の先駆け
さて今回発売された「日清のどん兵衛 きつねうどん だし比べ」ですが、そもそもどん兵衛の歴史について触れてみましょう。
1976年業界に先駆けてどんぶり型容器で発売。しかも当時から東日本と西日本で味を分けており、ローカライズの先鞭をつけた。現日清食品HD社長の著書「カップヌードルをぶっつぶせ!」(安藤宏基・中央公論新社)にもどん兵衛の誕生秘話が著されており、新幹線こだまに乗って各駅のうどんを徹底的に調べ上げ、味の境界線を独自で探したという逸話が残っています。
おおよそ大きな川・海、山の境界線に味の分岐点があると言われています。北海道と本州は津軽海峡を挟んでおり明らかな境目があります。また本州と九州では関門海峡で分かれており、このあたりは明確です。本州は地続きのため明らかな境界線として糸魚川と静岡を結ぶ断層「糸魚川静岡構造線(いわゆるフォッサマグナ)」に味の分岐点があると言われていました。
しかし日清食品はどん兵衛を作る前に調べ上げ関ヶ原周辺に分岐があることを突き詰めました。写真は岐阜県関ヶ原にある「関東風関西風分岐点認定地」の看板。うどんのつゆはこの辺りで分かれています。現在ではこの周辺のスーパーやコンビニではくっきりとどん兵衛の境目があります。
東西南北の“だしベース”の違いは?
今回の東西南北どん兵衛は元々3種類(北海道・東日本・西日本)の西日本をさらに2つに分け、九州地区を「南」に独立。それではそれぞれの味の違いを見てみましょう。
粉の色ですが明らかに色が違います。それぞれ北は「利尻昆布×鰹節」、東は「本鰹×宗田鰹」、西は「昆布×本鰹」、そして南は「焼きあご×さば節」としっかりとだしベースの構成が異なります。
とりあえずだし比べなので並べてみました。目視では色の濃い順に「東→北→南→西」な感じです。当然ですが東は濃口醤油で西はうす口醤油の地域差がここでもはっきりと見てとれます。
東西南北の“麺”“つゆ”“おあげ”の違いは?
麺は2010年に開発された「三層太ストレート製法」で同じものを使っているようです。この製法はちょっと前に流行った「10分どん兵衛」を可能にした画期的な製法。1と3層はしっかりとつゆが絡まりながらもツルッとした喉越し、2層目はコシを楽しめるよう3層になっています。
まずは東と西が大きく違うのでどう違うのかを確認してみましょう。東はまずカツオのだし感がガッツリとお口に広がります。どちらかというと「蕎麦つゆ」のテイストを感じられるように思えます。そしてラストに余韻として旨みが感じられるよう設計されています。
対して西ですが、先に昆布の旨みと塩味がガツンときて後味はキレが良いように設計されています。北は利尻昆布を使用しており、東と西のいいとこどり的なテイストを醸し出しています。私は関西で育ちましたが、北バージョンはとても美味しくヘビーリピートしています。
そして今回初登場の南ですが、旨みを感じるのは西と同じですが、後からくるあごだしの風味が特徴となります。
どん兵衛きつねうどんのおあげについてですが、2001年から東西で味をちゃんと変えており、4品食べ比べでは西のお揚げが一番甘かったです。このおあげは豆腐屋さんと同じ製法で作っているらしいので、このふっくらジューシーになるのも納得です。2023年からはおあげだけでも売ってますので欲張りどん兵衛にしたい方はぜひ。
さて、いかがだったでしょうか。中の人目線では大量製造&大量販売した方が効率もよく、企業論理としては全国統一した方がいいに決まっています。しかし日清は業界に先駆けていち早く「ローカライズ」を実践し、それが海外に引き継がれ今や世界のカップ麺を牽引しているのです。この歴史や文化を大事にすることがトップランナーであり続ける秘訣かもしれません。
ちなみに余談ですが、袋麺のご当地展開はハウス食品のうまかっちゃんが有名ですね。これは九州地区(一部商品は西日本地区)販売で、九州の方々のソウルフードと言っても過言ではありません。販売エリアは主に九州地区と書きましたが、正式には本州の山口県も入っているのがおもしろいです。これには諸説ありますが、味の文化圏というのは大変複雑であるということも付け加えておきます。このお話はまたの機会に。
食文化研究家・大和イチロウ
インスタントラーメン専門店・やかん亭代表。即席麺「一日一麺」を掲げ、36年間で25,000食を実食。
インスタントラーメン専門店やかん亭
ラーメンマニア・大和イチロウがその足と舌で日本全国から集めた絶品のご当地袋麺を取り扱う専門店。300種類を超えるおいしいラーメンが大集合!
https://yakantei.com/
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