WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。「ヒーローズ(コミプレ)」にて 「天津水市『がご』撲滅だより がごはん」(※コミックス第1巻は2024年2月5日発売)を連載する漫画家のゆのこショウ(sho.t)(@shoshot005)さんのオリジナル作品「深海からの刺客」もそうした漫画の1つだ。

【ギャグ漫画】「深海からの刺客」を読む

同作は、いわゆる「サメ映画」的なシチュエーションを逆手に取ったギャグ短編。退屈すぎるほど平穏なビーチに謎のサメが突如出現するが、人々を襲いまわるどころか、幼子にケチョンケチョンにされる側で――、という逆転の発想と、かわいらしい絵柄に反してバイオレンスな展開が笑いを誘う作品だ。そんな同作の舞台裏を、作者のゆのこショウさんに取材した。

■出発点は「サメ映画じゃなかった」怒涛の展開コメディが生まれるまで

ゆのこさんによると、「深海からの刺客」はアニメ『スナックワールド』のコミカライズ連載の後、商業誌への読切として描いた作品だという。本当はこれをはじめオムニバス形式の作品として連載できないかなと考えていたのですが、なかなか掲載までこぎつけることができず、pixivに公開するまではあえなく封印…という形になりました」

そんな本作は、実はアイデアの発端は“サメ映画”ではなかったと、ゆのこさんは着想を振り返る。

「もともとは『海の食材に飽きたサメの魚人が、新たな食材を求め陸に進出する』という展開だったのですが、いつの間にか今の形になっていました。その当時のアイデアは、食材は人間でこそないですが、本編の最後に出てくる人魚のヒロミッティに引き継がれています」

一方、「最も記憶に残っているサメ映画は『ディープ・ブルー』と『シャークネード』です」と話す通り、洋画のテイストも作品に反映されてもいる。ゆのこさんは「人間のキャラに関してはいかにもパニック映画に出てきそうな人物をイメージしています」と話す。

短編ながら、サメ魚人の「ジョニー」やよってたかってサメを叩く悪童たち、ライフセーバーの役割と裏腹にもっぱらツッコミ役の青年など、濃いキャラクターが入れ替わり立ち替わり登場するのも本作の魅力の一つ。「サメ魚人のジョニーはどういう経緯で生まれたのか覚えていないのですが、恐らくサメとガリガリの手足が好きだったのでしょう。今でも好きです」と、キャラ作りの一端を明かしてくれた。

また、小気味いい会話の応酬はゆのこさんの作風とも言えるポイント。現在商業連載中の「天津水市『がご』撲滅だより がごはん」でも、密度のある会話や、人間や不思議な存在「がご」のアクロバティックな活躍が描かれている。そうした作劇の意識について、ゆのこさんは「ギャグ漫画を描く際は、会話のテンポが悪くならないよう気を使っています」と教えてくれた。

取材協力:ゆのこショウ(@shoshot005)

平和なビーチに怪物サメが襲来…と思いきや子どもたちにたこ殴り!?怒涛のギャグ短編「深海からの刺客」/ゆのこショウ(sho.t)(@shoshot005)