6月8日(土)~9月1日(日)の期間、兵庫県美術館にて『描く人、安彦良和』が開催される。

安彦良和近影

安彦良和近影

機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターで、漫画家としても活躍する安彦良和。同展では『機動戦士ガンダム』放映45周年、安彦が喜寿(77歳)を迎えるメモリアルイヤーに、激動の半生を振り返る。少年期、青年期の歩みから、現在の創作まで、多彩な分野の作品と資料を約1,400点展示し、そこに共通するテーマに迫る、初の試みとなる。さらに『機動戦士ガンダム』(劇場版)のポスターラフ案など初公開のものや、描きおろしイラストなども展示される。

会場は大まかな時代とジャンルによって分類した6つの章で構成される。

1章 北海道に生まれて

『遙かなるタホ河の流れ』上巻より

『遙かなるタホ河の流れ』上巻より

北海道遠軽町に開拓民の3世として生まれた安彦良和は、幼い頃から絵を描くのが大好きな少年だった。1966年弘前大学に入学すると学生運動に参加し、そのことから除籍となる。本章ではノートに書いた漫画作品『遙かなるタホ河の流れ』や同人誌『こんみゆん』など、大学時代までに描かれた様々な資料により青年期までの安彦良和の活動をたどる。

2章 動きを描く

『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』 ポスター原案 (c)東北新社/著作総監修 西﨑彰司

さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』 ポスター原案 (c)東北新社/著作総監修 西﨑彰司

弘前大学を除籍となった安彦良和は、生活のためアニメーション制作会社である虫プロダクションの養成所に入所し、研修生を経て、アニメーターとして活躍を始めた。漫画やイラストを自己流で描いてきた安彦の卓越した画力がアニメーション業界において一躍注目を集めるようになった。『わんぱく大昔クムクム』(1975-76)、『宇宙戦艦ヤマト』(1974-75)、『無敵超人ザンボット3』(1977-78)などのアニメーション作品を取り上げる。

3章 カリスマ・アニメーターの誕生

『機動戦士ガンダム』(劇場版) ポスター原画 (c)創通・サンライズ

機動戦士ガンダム』(劇場版) ポスター原画 (c)創通・サンライズ

花形アニメーターとして注目を浴びる存在となった安彦がキャラクターデザインとアニメーションディレクターを務めた『機動戦士ガンダム』は、社会現象を巻き起こすほどの人気作品となった。本章では、様々な資料で『機動戦士ガンダム』の制作において安彦が果たした役割を辿る。

4章 アニメーターとして、漫画家として

『クラッシャージョウ』 イラスト原画 (c)高千穂&スタジオぬえ・サンライズ

クラッシャージョウ』 イラスト原画 (c)高千穂&スタジオぬえ・サンライズ

機動戦士ガンダム』もその一翼を担った1980年代のアニメーションブームの中で、安彦はアニメーションの監督、小説の挿絵、漫画執筆と次々に新たな挑戦を始める。本章では、『クラッシャージョウ』(小説挿絵:1977- 、劇場用アニメ:1983)、『巨神ゴーグ』(1984)など安彦の多彩な活躍を概観する。

5章 歴史を描く

『ナムジ』より (c)安彦良和/KADOKAWA

『ナムジ』より (c)安彦良和/KADOKAWA

漫画に専念するようになった安彦良和は、古事記などの神話を再解釈して古代日本をダイナミックに描いた『ナムジ』を皮切りに、歴史漫画家として活躍を始める。日本の古代史と近代史を両輪に、歴史の渦に翻弄されながら懸命に生きる「小さき者」たちの躍動をとらえた作品群は、現代の私たちに多くの示唆を与えてくれる。一方で、『ジャンヌ Jeanne』(1995-1996)や『イエス JESUS』(1997)など西洋にも目を向け、キリスト教へのアプローチを試みた作品も発表した。

6章 安彦良和の現在(いま)

『乾と巽-ザバイカル戦記-』より (c)安彦良和/講談社

『乾と巽-ザバイカル戦記-』より (c)安彦良和/講談社

漫画家として活躍を続けていた安彦だが、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のOVA以降、アニメーションに再び携わるようになる。本章では安彦が監督を務めた最新のアニメ作品とともに、今なお揺れ動く世界に対する思いの込められた連載中の漫画『乾と巽-ザバイカル戦記-』(2018-)を紹介。

9月からは島根県立石見美術館ほかに巡回も予定している。前売り券は4月5日(金)10:00から、イープラスほかプレイガイドにて販売開始。