テレビアニメ「リンカイ!」は、日本全国の競輪場をそれぞれホームバンク(※ふだんの練習を行う競輪場)とする女子競輪選手のキャラクターを制作し、競輪の魅力を発信しながら全国の競輪場を盛りあげるメディアミックスプロジェクト。
 昨年3月の「AnimeJapan 2023」でアニメ化が発表され、主役の静岡・伊東温泉けいりん所属の伊東泉(CV:川村海乃)、泉のライバルとなる神奈川・平塚競輪所属の平塚ナナ(CV:葵あずさ)、2人の主要キャラクターによる番組などで半年以上の情報発信を経て、4月9日から放送がスタートする。
 泉役の川村海乃、ナナ役の葵あずさに、「アニメハックTV」生配信後に話を聞いた。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)

――「アニメハックTV」で徳井青空さんと共演されていかがでしたか。

川村:憧れの先輩で、実際にお会いして素敵な方だなと思い、より大好きになりました。番組で歩数計を使って足踏みするケイデンス対決のミニゲームをしたときは、もともと仲良くなる目的のゲームではあったようんですけど、本当に友達みたいな気持ちにさせていただきました(笑)。声優業界で素敵な先輩と仲良くなれたこと、そこで「リンカイ!」の紹介をさせてもらったこと、とてもうれしかったです。

葵:番組でお話させてもらいましたが、以前ご一緒した吹き替えの収録現場でやさしくしていただいたことがあって、今日は直接お会いしてそのときのお礼を言えたことがまずうれしかったです。番組では「リンカイ!」の話をし、ゲームにもチャレンジして楽しかったですし、途中でけっこう目があうこともあって、あたたかい思いを感じながらの1時間でした。番組中、ずっと心地よくて楽しかったので、またお会いすることができたらなと思いました。

――オーディションで役がきまった経緯について伺わせてください。

川村:オーディションでは最初、泉とナナちゃんの設定をいただいて、その段階からとにかくかわいい! と思いました。設定が細かく描かれていて、さわやかな作品であることが絵からも伝わってきて、これだけ気合いの入った世界にいる子を演じることで、私もこの世界に入りたいなというのが素直な感想でした。オーディションをうけるにあたっては、競輪ってどんな競技なんだろうと、まったく知らないところからあらためて勉強してから臨みました。

――オーディションは、テープオーディションのみだったのでしょうか。それともそのあとにスタジオオーディションもあったのでしょうか。

川村:テープのあとにスタジオオーディションもありました。私はスタジオオーディション全体のトップバッターだったので、当日はとても緊張していました。役がきまったあとに教えてもらったのですが、オーディションではスタッフさんのあいだで「泉っぽい子がきてくれた」と思ってくださったようで、それを聞いたときはすごくうれしかったです。

葵:私もスタッフさんから、川村さんがトップバッターで「すごく泉だ」と思わせるぐらいドンピシャの演技をしたという話を聞いてすごいなって思いました。川村さん本人からは言いづらいかもしれないので補足させてもらいました(笑)

川村:(笑)。やっぱり役ってめぐりあわせだと思いますので、自分がだしたものをプロの方にそういうふうに評価していただけたことが、すごくうれしかったです。

――葵さんはオーディション、いかがだったでしょうか。

葵:私はいただいた資料をみたとき、このプロジェクトが発表されたら競輪がもっと盛りあがっていくだろうなと、親族に競輪選手がいるからこそ、ワクワク感をすごく感じました。身近に喜ぶ人がいたので、ちょっと特殊な目線もあったのかもしれません。
 テープオーディションを経てスタジオオーディションまでいくのは、私にとって「リンカイ!」が人生初でした。テープのときは泉とナナの両方をうけていたのですが、スタジオのときは平塚ナナでうけてくださいと言われ、私のふだんの性格はどちらかというと泉ちゃん寄りだと思っていたので、ちょっと驚きつつも、新しい自分に出会えるかもしれないとワクワクした気持ちで臨んだことを覚えています。ただ、オーディション自体はさらっと終わった印象で、初めてのスタジオだったこともあって手ごたえがまったく分からないまま帰った感じでした。
 その後、オーディションの結果を待つあいだ、品川駅に行ったときに、広告が映るスクリーンが連続して並んでいる通路を歩いていたら、たまたまガールズケイリンの映像が流れていたんです。それを見たときには、「絶対にうかりたい」という気持ちがより強まったのをよく覚えています。役がきまって「リンカイ!」のイベントに向かうときに同じ通路を歩いたときはすごく感慨深かったです。

――川村さんは、役が決まったことを知ったとき、いかがでしたか。

川村:競輪って年末にむけて盛りあがっていく競技で、葵さんと同じように結果を待っているあいだは、駅や電車の中などでよく広告を見かけていました。そうすると、「この仕事を絶対にやりたい」という気持ちが日に日に高まっていって、マネージャーさんから合格の連絡をもらったときは、自動音声みたいな受け答えしかできず、電話を切ったあとは、これは白昼夢だったのかなっていうぐらい、うれしすぎてずっとふわふわしてました。やりたいと思った仕事をいただけるって、こんなに幸せなことなんだと、あらためて確認するような時間だったと思います。

――おふたりが初めて顔合わせをしたときのことを覚えておられますか。

川村:競輪選手の娘さんだと聞いていたので、ちょっといかつい方なのかなと思いましたが、宣材写真を見たらすごく可憐でかわいいなって思いました。これから「リンカイ!」を盛りあげるために一緒に行動できるんだと思ったらすごくうれしくて、実際に会ったらイメージよりも100万倍天然な子で、めちゃめちゃ面白かったです(笑)

葵:ありがとうございます……で大丈夫なのかな(笑)

川村:ありがとうで大丈夫(笑)。番組を一緒にやるたびに面白天然ゲージがあがっていく感じで、スルメのように面白さが増すのがあずさちゃんの魅力だと思っています。

葵:私は顔合わせの前、マネージャーさんから川村さんが泉役ですという連絡をうけて調べてみたら、以前見たことがある番組にでている方だったので、「え……あの番組に出ていた人!?」みたいな驚きがあって、会うのが本当に楽しみでした。顔合わせの日は、キャラクターPVの収録もかねていたので、だんだんそちらのほうにドキドキしながら会場に向かったのですが、そこにいた海乃ちゃんがすごくほがらかで、「これからよろしくね」みたいなことをやさしく言ってくれて――なんでしょう、会う前の想像よりも何倍も素敵な人で、なんというか「シルバニアファミリー」みたいな……。

川村:(吹きだして)「シルバニアファミリー」みたいだった?(笑)

葵:なんかファンシーな感じだった。

川村:ちなみに、(「シルバニアファミリー」を)集めてる。

葵:そうだ。初回のときも「シルバニアファミリー」を身につけていたのを見たんだ。

川村:リュックに透明なケースをぶらさげて、その中に「シルバニアファミリー」の赤ちゃんを3人いれていたと思う。

葵:だから今、とっさに「シルバニアファミリー」というワードがでたのかもしれない(笑)。とにかく、それぐらいほがらかな方という印象で、キャラクターPVの収録をしているときも、会話すればするほど安心する心地いいやりとりが続いて、これから一緒にやっていくのが楽しみだなと思いました。

――配信番組や競輪場がある各地でのイベントなどをとおして「リンカイ!」プロジェクトの活動を長くされたうえで、テレビアニメの収録に臨まれたと思います。女子競輪やキャラクターの理解が深まってアフレコに入れたのではないでしょうか。

川村:アニメのアフレコがはじまるまで半年以上、番組やイベントなどで活動してからアフレコに挑ませていただいたので、競輪がまったく知らない未知の世界だったところから目指したい憧れの対象にきっちりなった“ほかほかの状態”で収録に臨むことができました。私が演じる泉も、素敵な選手をみて憧れて競輪選手を目指すという物語ですので、飾らず自然体のスタンスで、私が実際に競輪選手の方々をみて感じた気持ちが嘘偽りない状態でアフレコに参加できたのはとてもありがたかったですし、光栄なことだと思いました。

葵:私が演じるナナは2話から登場するのですが、1話の収録も見学していました。川村さんはこれまで役者さんとして体をつかったお芝居をメインにやられてきて、声だけのアニメの主人公を演じるのは初めてという情報を知っていたので、きっと緊張されているだろうなと思いながら見ていました。でも、そんな緊張は感じさせないぐらい川村さんは堂々とマイクの前に立って伸び伸びとやっている印象があって、あらためて自分の相方かっこいいなって思いました(笑)

川村:(笑)

葵:2話からナナとして参加したときは、めちゃくちゃ緊張しました。1話を見学させてもらって、みんながどういった感じでやっているのかを客観的にみて、すごく良い空気ができているなって思っていたから、そこに私が入るんだ、入るためには頑張らないと……みたいな気負いとドキドキ感がせめぎあって、台本をもつ手が若干震えながらの収録でした。でも、自分のセリフを言った瞬間に、「あ、これで輪にはいれたかもしれない」という感覚があって、それがすごくうれしかったんです。自分のなかであらためて「リンカイ!」プロジェクトがはじまったという幸せな気持ちがどっと押し寄せてきて、終始幸せな気持ちのなかでの収録でした。

――葵さんも言われたように、川村さんはこれまでドラマや舞台などをメインに活動されてきました。ご自身の姿がでない声の仕事との違い、もしくは共通する部分は、どんなところにあると思われましたか。

川村:もともと声優をやりたいと思った大きなきっかけは、とあるアニメ作品が好きだったからということのほかに、お芝居をやるうえでもっと繊細に言葉をあつかいたいと思い、それを実践されている声優さんの演技を体験してみたいというのがあったんです。
 自分の姿がでる場合は、例えば悲しいという気持ちを表現するとき、眉をひそめるような本当に小さな動きで表現することができるのですが、それをすべて音で表現しなければならないというのは、声の仕事の大きな特徴なのかなと感じました。そうした部分を体にたたきこむため、当時通っていたワークショップの先生に勧められて、家の中でとにかく効果音を口にだしながら生活するようにしていました。ものをもつとき、どれぐらい重いかで「よいしょ」って言い方が変わってきますし、ドアの開け閉めなど、自分のすべての動きに音をつけることをやってみました。ワークショップの先生からも、経験がないのならばとにかくやってみて、続けたほうが絶対に経験値になるからとアドバイスをもらい、自分なりにそうしたことをやりながら、声ならではの演技を意識するように務めていました。
 実際にやってみて、声の仕事って“二人三脚感”があるなと感じました。監督さんや、アニメーターさんをはじめとするクリエイターの方々との合作といいますか、キャラクターを演じてはいるんだけど、それだけではなくて、絵をつくってくださる方に支えてもらったうえでださせてもらっている感覚が強くありました。

――葵さんのお父様は、2024年1月に引退された元競輪選手の多田司さんだと公表されています。「リンカイ!」で競輪選手を演じるにあたって、競輪のことをいろいろ聞いたりされたのでしょうか。

葵:はい。その前段階の話として、私が「リンカイ!」の役にうかった当時のことをお話すると、発表前の時点では家族にも言えなくて、去年の「AnimeJapan」に行くときには、何時からのこのあたりの動画を注目してみてほしいとだけ伝えたんです。「なんだ、なんだ」と言われながら家をでて、ステージが終わってからSNSを見たら家族から「おめでとう!」と鬼のようにメッセージがきていました(笑)。これぞハッピーみたいな気持ちになって、ポカポカの気持ちで「AnimeJapan」から帰ったのを覚えています。
 「リンカイ!」の仕事がはじまってからは、身内に選手がいるのだから分からないことはいろいろ聞いてみようと、けっこう質問をしました。競輪選手の息の感じとか、「自分にはあのスピードはだせない」となったときは、どんな気持ちで走っているのとかあれこれ聞いて、どんな体勢でこいでいるのか実際にワットバイクで練習している動画を送ってもらったりもして、だいぶ助けてもらいました。

川村:あずさちゃんは、そうした情報をみんなに共有してくれるんです。葵家一同にすごく助けていただいた気持ちです。

――そうした経緯があって、川村さんは、「アニメハックTV」のなかで葵さんのお父様のファンだと言われていたのですね。

川村:競輪選手の推しをつくると、より競輪が楽しめるって今はよく分かるんですけど、「リンカイ!」の仕事をはじめたばかりの私は、今まで接してこなかった競技を知っていく過程で、徐々に競輪への関心へのベクトルというかパワーのようなものがあがっていくイメージだったんです。それが“友達”の――。

葵:(「友達」というワードに反応してうれしそうに)!

川村:あらためて言葉にするのが初めてだったんで、すごい照れちゃうんですけど……(笑)。同業者であり、ライバルだけど友達でもあるあずさちゃんのお父さんが、こういう仕事をやっているんだという目線で競輪をみはじめたことによって、一気に競輪という競技への距離が縮まった感覚があったんです。そして、これは私たちが「リンカイ!」という作品を通じてお客さんに伝えるべきものと同じなんだなと分かって、いいことを先に教えてもらったなと感謝しています。

――たしかに、身近な人がやっているから関心をもって好きになるというのは、物事に興味をもつ近道のひとつですものね。

川村:そうなんです。あずさちゃんから、「お父さんが昔こういうことをやっていた」「あのときのレースではこんなことが」みたいな話を聞くたびに、競輪のことがどんどん好きになっていったので、そういう意味では引退された今でもあずさちゃんのお父さんのファンなんです。今でも、お父さんに関する記事を見つけると、知っているであろうあずさちゃんに共有しちゃったりするぐらい(笑)、お父さんのことも競輪のことも大好きになりました。

――3月23、24日の「AnimeJapan 2024」では、「リンカイ!」に関する多くのステージが開催されます。イベントへの意気込みを聞かせてください。

川村:アニメが好きな本当の多くの方々がこられるイベントですので、競輪のアニメがはじまるんだ、面白そうだなと思ってもらえるように、作品の良いところをいっぱい伝えることができる2日間にできたらいいなと思っています。

葵:1年前の「AnimeJapan」では私と川村さんの2人がキャストとして発表されて登壇しましたが、今年はアニメのメインキャスト6人(川村海乃、葵あずさ長谷川玲奈、北守さいか杉山里穂日向未南)でステージに立つことができます。そのほか、4月からコミックで展開される「リンカイ!アザレア」をテーマにした先輩組キャスト(佐々木李子和久井優)のステージ、私たちと女子競輪選手の方が対談するステージなど、この1年で関わる人がどっと増えて、できることが加速度的に増えているなということを肌で感じています。

川村:1年前は、2人からはじめたんだものね。

葵:そうそう。2人でドギマギしながら「頑張ろうね!」と言いあった1年前から「リンカイ!」プロジェクトが大きく成長していることを1年ぶりの「AnimeJapan」のステージからも感じられて、私自身すっごい楽しみにしています。見にきてくださる方にも楽しんでいただけたらうれしいなと思っています。どうぞよろしくお願いします!

※川村海乃さん&葵あずささんがゲスト出演した「徳井青空のアニメハックTV #32」もあわせてご視聴ください。

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川村海乃(写真左)と葵あずさ