テレビアニメ「百千さん家のあやかし王子」(毎週金曜深夜0:00-0:30、TOKYO MXほか/ABEMA・Huluほかで配信)の最終回が3月22日に放送となる。また、20日には本作のBlu-ray&DVDの1巻が発売となった。最終回に際して、これまでの物語をおさらいするとともに、何度でも観返したい本作の魅力を改めて紹介したい。

【写真】葵は変身した鵺の姿では、超絶クール系イケメンになる

■「百千さん家のあやかし王子」とは

本作は、漫画雑誌ASUKA」(KADOKAWA)にて、2013年から2019年にかけて連載され、累計発行部数110万部以上、10言語で翻訳・出版されるなど海外でも人気を集めている硝音あやによる漫画が原作。亡き両親の遺言状により、山奥の日本家屋を相続することになったヒロイン・百千ひまり(CV:川井田夏海)と、そこに住み着くあやかしたちとの生活が描かれる。

2015年には実写舞台化もされ好評を得た“あやかし系和風ファンタジー”がこの度、満を持してアニメ化された。「七つの大罪 怨嗟のエジンバラ」のボブ白旗が監督を務め、「うちの会社の小さい先輩の話」の蒼樹靖子がシリーズ構成を担当。アニメーション制作はドライブが担当する。

■これまでのストーリー

まずはこれまでのストーリーをおさらいしよう。物語は、施設で育った高校生のひまりが亡き両親の遺言状に伴い、“百千家”を相続するところから始まる。しかし、百千家は現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)の狭間に立つ不思議な家だった。そこであやかし達と暮らしていたのが、七守葵(CV:大塚剛央)という17歳の少年。彼はもともと普通の人間だったが、幼い頃に百千家に迷い込んだ際に“御守様”に指名され、家を守ってきた。

はじめは戸惑いながらも、亡き両親との唯一の繋がりを手放したくないひまりは、葵たちの反対を押し切って百千家で暮らしていくことを決意。しかし、百千の血を引くひまりに力を得ようとするあやかしたちが襲いかかる。その度に助けてくれたのが、葵だ。葵は人間でありながら、“鵺”と呼ばれるケモ耳のあやかしに変身し、式神の紫(CV:立花慎之介)や伊勢(CV:小野友樹)とともに悪いあやかしからひまりを守ってくれた。

ひまりはみんなと家族の絆を深めていくと同時に、葵に惹かれていく。一方で、いつも笑っているのに、どこか寂しそうな葵が気がかりだった。御守様に指名されてから百千家から出られず、外の世界ではいなかったことになっている葵。やがてひまりはそんな葵を百千家から解放してあげたいという願いを抱く。

そんな中、ひまりの担任で、良き相談相手だった那智篁(CV:羽多野渉)が百千家に現れる。なんと、彼こそが葵やひまりを百千家に導いた“黒幕”だった。幼い頃から、人ならざる者の姿が見えるがゆえに周囲から浮いていた葵と那智。那智は葵に共鳴し、自分たちを苦しめてきたあやかしをこの世から排除しようとしていたのだ。けれど、予想以上に葵が巨大な妖力を得てしまったために、人の心を取り戻させようとひまりを百千家に送り込んだのである。

すべての真相を知ったひまりは、これまでに出会ったあやかし達の協力を得て、那智に囚われた葵を救い出すのだった——。

■百千家はイケメンパラダイス? 個性的なキャラクターと飽きのこないアニメ演出が魅力

本作の最大の見どころは、魅力あふれるキャラクター。中でも、ヒロインであるひまりに好感が持てる。彼女は至って普通の女の子であり、特別な力を持っているわけではない。けれど、決して守られるだけの存在ではなく、ひまりの持つ正義感の強さや思いやりの心が時折、奇跡を起こす。何があってもすぐに立ち上がる、その前向きさと強さに元気をもらっている視聴者も多いことだろう。

ひまりが惹かれていく葵は、強さと優しさの両方を兼ね備えた少年だ。少し天然で浮世離れした葵は人との距離感が近く、ひまりはたびたびドキとさせられる。鵺に変身した時はちょっぴり強引。そのギャップも魅力である。また、どこか憂いを帯びたその表情もひまりが彼を守りたいと思う理由の一つだ。

そんな2人を取り巻くキャラクターも見逃せない。家事が得意ではんなりとした雰囲気のある紫に、荒々しい性格だが友達思いで頼り甲斐のある伊勢。敵キャラだがどこか惹かれてしまう妖しい雰囲気を携えた火車(CV:八代拓)など、それぞれ個性的で、あやかし版イケメンパラダイスが広がっている。

自分だけの推しを見つけて、ワイワイ楽しめる一方で、心に染み入るエピソードも多い本作。妖怪や幽霊は人から恐れられる存在だが、彼らにも心がある。一見、悪意ある行動にも理由があって、それを知ると途端に切なさや愛おしみが溢れてくるのだ。

そんな不思議で切なく、最後には心温まる物語を表現する圧巻の映像美が原作ファンからも好評である。キャラクターはもとより、背景や小物に至るまで全てが美麗で繊細なタッチで描かれ、幻想的な和の世界観が構築されている。一方で、鵺があやかしと対峙するアクションシーンは少年漫画さながらの迫力。おどろおどろしいホラーテイストの回もあったりと、雰囲気に合わせたビジュアル表現で飽きがこない。作画や美術、背景、劇伴のどれもが高クオリティでこだわりを感じられる。何度も繰り返し、味わいたい作品だ。

■Blu-ray&DVDはファン必見の内容

そのため3月20日に発売されたBlu-ray&DVDの1巻は、本作をまだ観ていない人はもちろんのこと、本作を一度観た人にもおすすめできる。特典映像として封入されているのは、ノンクレジットのオープニング。全12話の内容を示唆しているため、改めてじっくり見返したい映像となっている。さらに原作者である硝音あやの描き下ろしIP漫画や、メインのキャラクターが登場する特典CDなどが封入された充実の内容でファン必見だ。

オーディオドキュメンタリーには、ひまり役の川井田夏海と葵役の大塚剛央に加え、監督のボブ白旗とアニメーションプロデューサーの宮腰徹が出演する。累計発行部数110万部を超える人気コミックのアニメ化にあたって、どのような思いがあったのか。コメントを聞いた上で本編を見返すと、より没入感を得られるのではないだろうか。

テレビアニメ「百千さん家のあやかし王子」第12話(最終回)は、3月22日深夜0:00から放送される。ひまりは葵を百千家から解放することはできるのか。2人の恋の行方は――。最後までお見逃しなく!

■文/苫とり子

テレビアニメ「百千さん家のあやかし王子」第12話より/(C)2023 硝音あや/KADOKAWA/百千さん家のあやかし王子製作委員会