3月22日午後9時から、日本テレビ系金曜ロードショー」にてスタジオジブリ劇場アニメ魔女の宅急便」が放送されます。

同作は、角野栄子氏による同名児童文学シリーズが原作。宮崎駿監督が「となりのトトロ」のあとに手がけた作品で1989年に公開されました。オープニングテーマは、松任谷由実さんが荒井由実名義で1975年に発表した「ルージュの伝言」で、新海誠監督の最新作「すずめの戸締まり」の挿入歌として使用されたのも記憶に新しいです。

同作のあらすじ、主な出演声優のリストとあわせて、「魔女の宅急便」の監督が最初は宮崎駿氏ではなかったこと、スタジオジブリと日本テレビの深いつながりが同作からはじまったことにについてご紹介します。

【あらすじ】
魔女の母コキリと人間の父オキノのもとで天真爛漫に育った13歳の女の子キキは、古くからのしきたりに従い、魔女修行の旅に出る。黒猫のジジとともに海沿いの街コリコにたどりついたキキは、パン屋のおソノに気に入られ、彼女の家の離れに住まわせてもらいながら店の手伝いをすることに。やがて、ほうきで空を飛ぶ力を使って配達屋の仕事を始めたキキは、森の中に暮らす画学生のウルスラや友だちになった少年トンボらと交流しながら、少しずつ成長していく。

【主な声の出演】

主人公のキキ役を演じたのは、「名探偵コナン江戸川コナンなど多くの作品で知られる高山みなみさん。高山さんは、キキと出会う少女ウルスラの声も担当しています。

●キキ/ウルスラ高山みなみ

●ジジ:佐久間レイ

●コキリ:信沢三恵子

●おソノ:戸田恵子

トンボ山口勝平

●バーサ:関弘子

●オキノ:三浦浩一

●老婦人:加藤治子

【持ちこみ企画からはじまった「魔女の宅急便」、最初の監督は片渕須直氏】

魔女の宅急便」はジブリ発の企画ではなく、広告代理店をとおしてジブリにもちこまれたものでした。その時点で「宅急便」の商標をもつヤマト運輸タイアップすることも決まっていました。

となりのトトロ」を制作中だった宮崎監督がプロデューサー、若手監督が現場を担当する体制で企画は動き出し、当時若手演出家だった片渕須直氏(「この世界の片隅に」)が監督に内定。シナリオは「私をスキーに連れてって」「宇宙船サジタリウス」などで知られる一色伸幸氏が担当していましたが、最終的に宮崎監督自身が手がけることになりました。

宮崎監督によるシナリオが完成して本格的に制作にはいる段階で、現状の体制で制作を進めることに懸念をいだいた宮崎監督と鈴木敏夫プロデューサーは話し合い、鈴木プロデューサーからの依頼で宮崎監督が監督も手がけることになり、監督に内定していた片渕氏は演出補として作品を支えることになりました。ちなみに、「魔女の宅急便」の制作担当を務めたのは、のちにSTUDIO4℃を設立する田中栄子氏。田中氏と片渕氏は、STUDIO4℃制作の劇場アニメ「アリーテ姫」(2001)でタッグを組んでいます。

【「宮崎さんもこれまでだね」の言葉に触発され、宣伝に力をいれ大ヒット】

鈴木プロデューサーは、自身の著書「天才の思考 高畑勲宮崎駿」で、「魔女の宅急便」の宣伝にこれまで以上に力をいれることになったのは、同作の配給を手がけた東映の責任者から「宮崎さんもこれまでだね」と言われたことがきっかけだったと振り返っています。

風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」と作品を重ねるごとに興行成績が下がっていることをうけての「これまでだね」という指摘で、鈴木プロデューサーは「絶対に『魔女の宅急便』をヒットさせよう」と決意し、さまざまな施策をうつために動きます。そのひとつが、日本テレビへの協力要請でした。ジブリ作品のテレビ放映権をもつ日本テレビは、「風の谷のナウシカ」の「金曜ロードショー」放送の反響が大きかったことから「魔女の宅急便」への出資を決め、同局の多くの番組で同作を紹介することで、宣伝展開において大きな役割をはたしました。

その後、今にいたるまで、ジブリ作品のテレビ放送といえば日本テレビの「金曜ロードショー」という深いつながりと信頼関係が生まれ、昨年のスタジオジブリ子会社化につながっています。

参考文献:「スタジオジブリ物語」(鈴木敏夫・責任編集/集英社新書)、「天才の思考 高畑勲宮崎駿」(鈴木敏夫・著/文春新書)

エンディングテーマは「やさしさに包まれたなら」(荒井由実) (C) 1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N