ボクシング界で「最強」の呼び声もある井上。その強さに憧れるライバルは少なくない。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 日本が生んだ“怪物”井上尚弥(大橋)は、強いがゆえに成り上がりを狙うライバルたちの目標となる。

 名だたる猛者がひしめき合う現在のボクシング界においても、井上の強さは図抜けている感がある。スーパーバンタム級に転級して迎えた昨年7月の初陣でスティーブン・フルトン(米国)を8回TKOで撃破してWBC&WBO世界統一王者に君臨した30歳は、約5か月後に迎えたWBA&IBFの統一王者マーロン・タパレスフィリピン)戦も10回KOで勝利。史上2人目にして、最速での2階級での4団体統一という偉業を成し遂げた。

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 各国メディアの厳選するパウンド・フォー・パウンドでも常に1位の座を争う高位置に据えられ、文字通り敵なしの井上の強さは、もはや階級の垣根を越えて評価を下されている。

 圧倒的な才覚を認められている井上。だからこそ、怪物を倒さんと挑戦を望む者は後を絶たない。WBC同級ランキングで5位にランクしているリアム・デービス(英国)もそのうちの一人だ。

 去る3月16日(現地時間)にエリック・ロブレス・アヤラ(メキシコ)との「IBOスーパーバンタム級タイトルマッチ」を制し、プロキャリア16戦無敗とした27歳は、英ボクシング専門サイト『Boxing News』で「(次の目標は)間違いなくイノウエになる」と豪語。「いつになるかの問題だ。俺はイノウエとの勝負が実現するまで頑張り続けるつもりだ」と意気込んだ。

「彼は最高だ。俺自身が『俺こそが最高だ』と言えるようになるためには、イノウエを倒さなければならない。それがどれだけ大きな挑戦であるかは理解しているけど、抵抗はない。誰に対してもチャンスはあるし、それに見合うだけの技術も持っている」

 さらに「俺の祖父はいつも『ベストになりたいならベストを倒せ』と言っていた。イノウエとの試合はまさにそれだ」と強調。自身のボクサーとしての原点となった祖父の助言を引き合いに出したデイビスは、強敵となる井上に挑む覚悟を口にする。

「多くの人は俺を『馬鹿だ』と言うだろう。でも、そいつらはボクシングを理解していない。イノウエが強敵に見えるのは理解できる。実際のところ彼は怪物だ。でも、俺はKOされたことがないし、自分を信じている。せっかく戦える可能性があるなら、やってみればいいじゃないか。そうしないと、『やれたかもしれない』と後悔をする。俺はそんなことを望んではいない。俺は結果がどうであれ、最高の相手と戦ったんだと胸を張りたい」

 無論、スーパーバンタム級の4団体統一王者に君臨する井上だけに、対戦相手は引く手数多だ。WBC同級5位のデイビスに機会が巡って来るかは不透明だ。それでも「イノウエは偉大なチャンピオンだ。俺も彼を軽視するつもりはないし、俺から必要に煽ったりはしない。でも、チャンスが欲しいんだ」と訴える27歳の望みが叶う日は訪れるだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

「人は馬鹿だと言うだろう」16戦無敗の英戦士が打ち明けた井上尚弥戦への憧れ「最高の相手と戦ったと胸を張りたい」