本部長マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

3月13日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「“日経平均4万円超え”の今後とアメリカ大統領選“もしトラからほぼトラ?”」というテーマでお話を伺いました。


(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



日経平均株価が4万円超え その要因は…

浜崎:それでは今回、宗さまには「“日経平均4万円超え”の今後とアメリカ大統領選“もしトラからほぼトラ”」についてお話しいただきます。

やしろ:日経平均株価が、3月に入ってついに4万円を超えました。現在は、やや落ち着いて4万円を下回った動きです(※番組放送時)。宗さま、今の動きをどのように見ていますか?

宗正:3月の2週目に日経平均株価が4万円を突破しました。それまでの史上最高値は、1989年の年末につけた3万8,915円で、2月には既にこの水準を一時的に上回っています。ちょうど時代が昭和から平成に変わるタイミングで、業界ではそのときの株価水準を「砂漠に行こう」と語呂合わせで覚えていました。

やしろ:語呂合わせで。

宗正:そしてついにその水準を突破しました。一気に株価が4万円台に突き抜けた後は、その節目を下回って推移しています。突き抜けた理由が、前日のニューヨーク市場で半導体関連の銘柄が上がったので、その動きに引っ張られた。日本の半導体関連銘柄の急上昇が主な要因でした。

その証拠に、日経平均株価が4万円を突破したときの東京証券取引所のプライム市場(最上位の市場分類)の値上がり銘柄数は、全体の4分の1しかありませんでした。特定の銘柄の上昇が日経平均全体に影響を与えたことがよく分かります

しかも4万円は大きな節目です。ここで売ろうと思う人がいたり、「ここをもうちょっと超えたら買おう」と思う人がいたりします。節目に差し掛かると、行ったり来たりするのが株価です。ただ今年の初めって、日経平均株価って3万3,000円台からスタートしていますから。

やしろ:1月の株価はそんなものでしたか。

宗正:それが4万円台となると、急ピッチな株価の上昇に対する警戒感を抱く人がいるのは当然ですよね。あとは日米の中央銀行の金融政策です。どこに影響してくるかというと、為替市場になりますが、投資家はその動きを探っているという今はそんなタイミングです。

◆アメリカは利下げ、日本は利上げに方向転換

やしろ:今お話に出た為替市場、これが今後の日本株の動きに大きく影響してくるということでしょうか。

宗正:日本の上場銘柄は輸出関連企業の割合が高いので、円安・ドル高のほうが企業業績にはプラスに働きます。つまり円安のほうが、日本の株式市場は上がりやすい。

やしろ:1ドル=140円よりも、1ドル=150円のほうがいいということですね。

宗正:その通りです。現在、アメリカの中央銀行(FRB/連邦準備制度理事会)は、昨年までずっと続けてきた利上げを、年内には利下げに転じることを示唆しています。アメリカで利下げということは、つまりドル安につながるんですね。

一方、日本銀行は長らく続けてきたマイナス金利政策を止めて、本格的な利上げに方向転換する動きです。これは円高につながります。しかも日米の中央銀行双方が、その動きを前倒しする気配がずっと続いて来ました。

日銀が利上げに転じる際にもっとも意識してきたのが「労働者の賃金が上がるかどうか」です。まさに(番組放送日の)3月13日は、春闘の集中回答日でした。賃金が上がる前に利上げをする訳にはいきませんが、大手企業に限って言えば、どうやら日銀が目標としていた賃上げ水準を上回りそうです、いよいよですね。

やしろ:賃上げ要求に企業が合意するなど、最近は良いニュースが多いですよね。

宗正:為替市場は、そうした動きを先取りして動きますからね。円高は、日本の株式市場にとってマイナスに働きます。これがどれくらいの水準に落ち着くのか、アメリカと日本の中央銀行はどのタイミングで本格的な動きに出るのかを市場が見定めているのが今ですね。

やしろ:アメリカが利下げをして日本が利上げをするとなると、為替市場では大きな流れがついに来たという感じなのでしょうか?

宗正:異なる金利の方向感、ついに来ましたね、ドル安・円高につながる動きです。

やしろ:もしかすると130円くらいまで円高が進むかもしれませんか?

宗正:為替市場はなかなか予想が難しい。株式市場は全体の総意で株価が決まりますが、為替市場は、少ない市場参加者でも動くときにはけっこう一方向的に動くのが特徴です。

◆低迷する中国経済 日本への影響は?

やしろ:日本株が大きく上昇した一方で、経済的にもつながりの深いお隣の中国の株式市場はパッとしないようですが、これはどうしてなのでしょうか。

宗正:最近の中国の株式市場は低迷と言うよりもむしろ下落しています。要因は中国経済の悪化で、特に不動産部門が顕著です。中国のGDP(国内総生産)に占める不動産部門の割合は、全体のおよそ3割ですが、この3割の部門が良くないと当然GDP全体は悪化します。

先週まさに中国の全国人民代表大会(日本の国会に相当)が開かれて、今年のGDPの成長目標を5パーセント前後と発表しました。確かに射程圏内の水準なのですが、昨年の成長率が3パーセントですから、「ちょっとそれは高めなんじゃないの」というのが株式市場の受け止め方です。

私たちのようなプロの投資家は、アジア圏全体で投資額を決めたりもします。下がってきた中国の資金を、上がり続けている日本の株式市場にシフトする。そんな動きも少なからずあると思いますね。

やしろ:「中国は良くないぞ、日本株を買おう」という流れはかなり大きそうですね。

宗正:大きいですね。方向感の違いは分かりやすいですからね。

◆トランプ対バイデン、トランプ氏の再選はあり得るか?

やしろ:アメリカでは、今年の秋の大統領選挙の前哨戦。スーパーチューズデーの結果が出てきています。民主党バイデン候補、そして共和党がトランプ候補で、ほぼ決まりそうでしょうか。

宗正:「もしもトランプ氏が大統領に返り咲いたら」という意味で「もしトラ」なんてフレーズが生まれましたけど、今では「ほぼトラ」になっていますね。

やしろ:ほぼトランプさんなんじゃないかという意味で「ほぼトラ」。

宗正:11月の本選挙前には、今度は「確トラ」なんてね、それも見えてきた今度のスーパーチューズデーです。

やしろ:確実にトランプを意味する「確トラ」。

宗正:一方で、メディアがトランプ氏ばかりをクローズアップするので、トランプ氏の圧倒的優位に見えがちです。特に日本から見ればそう映るのですが、実際、現地の支持率は現時点で五分五分なんですよ。

日本の選挙もそうですが、実際に投票所に行って投票する人っていうのは、いわゆる意識高い系の層と言いますか、現状の政治に不満を持つ人が多い。そうなると、トランプ氏が有利ですよね。

やしろ:そうですよね。バイデン大統領の政治を変えたいということですもんね。

宗正:両候補者とも一長一短がありますが、アメリカの大統領選って過去の例を見ても、見た目と元気さと発言力ってすごく重要なんですよ。トランプ氏は選挙集会などでも、音楽に合わせてダンスを踊ったりしていますよね。

やしろ:腰を揺らすようなダンスをよくやっていますね。

宗正:よくトランプさんはバイデン氏の年齢を理由に攻撃していますけれど、バイデン氏は81歳、トランプ氏は77歳ですから。大して変わらないんです。

やしろ:でも、見ていると全然違うようにも思えます。バイデン氏はたまに「大丈夫かな?」って思ってしまうようなときもあれば、トランプさんは4年前よりもさらに元気なように見えるというか。その差はありますけどね。

宗正:バイデン氏は踊らないですからね。

やしろ:踊る、踊らないは別にしても、アメリカのトップとしてエネルギーとかパワーみたいなものが大事っていうことですね。

宗正:特にアメリカのトップっていうのは、世界で何か有事が起きた際に、世界の最高指揮官のポジションになりますから、元気・発言力・見た目というのはすごく大事なんですよね。

◆「アメリカ第一主義」のトランプ氏、日本経済への影響は

やしろ:仮にトランプ氏がアメリカ大統領に返り咲いた場合、アメリカの経済関連政策も大きく変わりますか?

宗正:変わりますね。トランプ氏と言えば、「アメリカ第一主義」です。ここを軸に考えれば、すごく分かりやすいんですよ。まずは貿易と投資という面では、アメリカの産業を必ず守るという強烈なアピール。輸入品には10パーセントの関税をかけるとも言っています。

ただトランプ氏はビジネスマンですから、実際すぐに関税をかけるのではなく、カナダや日本を含む同盟国にプレッシャーを与える材料として使うでしょうね。そして貿易では、間違いなく中国に厳しい対応をするでしょう。関税の引き上げ以外にも、さまざまな貿易障壁を打ち出してくるでしょうね。

そしてアメリカ国内でトランプ氏は、所得税減税を1期目に導入しました。ちょうど来年にこれが失効する予定でしたが、恒久化すると主張しています。当時トランプ氏が優遇したのが富裕層や中小企業オーナーといったお金持ちだったのですが、再選後には労働者層や中間層にまでその範囲を拡大すると示唆しています。

政治の世界で、本当は金融政策にあまり口出しをすべきではありませんが、トランプ氏は強烈に口を出します。2019年には利下げをしたくないFRBを「頑固な子ども」と表現した事実もあります。

やしろ:トランプ大統領の再選があった場合、日本の株式市場にとって上げ要因・下げ要因のどちらになりそうでしょうか。

宗正:上げ要因になると思います。トランプ氏が返り咲いた際には、財政を使ってとにかくアメリカ国内の景気を良くしようとするはずなんですよ。これって、インフレ圧力です。物価高や金利の上昇が見込まれる訳で、ドル高・円安につながりやすいですよね。円安は日本株にとって上げ要因です。

「アメリカ第一主義」ということで、とにかくトランプ氏はあの手この手を使ってアメリカの株式市場を上げようとします。アメリカ株が上がれば、日本株も上がるでしょう。いずれにしてもトランプ政治がまた復活すれば、今の世界経済の動きや、バイデン氏の任期中の政治は一旦リセットされて、上下に大きく揺さぶられると思います。

やしろ:ありがとうございます。宗正彰の愛と経済と宗さまと。AuDeeにて、毎月10日20日30日に配信です。宗さま、今月もありがとうございました。

宗正:ありがとうございました。

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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「“日経平均4万円超え”の今後とアメリカ大統領選“もしトラからほぼトラ?”」を解説