昨年6月に行われたパチンコの内規改正によって誕生した新機能、「ラッキートリガー(以下、LT)」を搭載したマシンが遂にホールデビュー。すでに打ったというファンも少なくないだろう。以前、パチンコ店の閉店事情などのお話を伺った大手チェーンの営業統括部長のA氏は、このLT機に関して「あまり期待していないし甘く使うこともないだろう」と語っていた。

 そこで、導入から1週間経ったタイミングで、機械の稼働状況やお客さんの反応、さらにはお店での扱いなどについて再びお話を伺ってみた。はたして、パチンコの人気が回復する兆しは見えたのだろうか?

◆稼働率&ファンの反応は上々の滑り出し

 3月4日、各メーカーから発売されたLT機がホールにその姿を現した。そのなかには「北斗の拳」や「天才バカボン」といった、パチンコファンにとって馴染み深い人気シリーズも存在する。

「ウチは、『緋弾のアリア』・『オーバーロード』・『天才バカボン』・『北斗の拳』の4機種を入れましたが、稼働状況は全体的に良いですね。お客さんの反応も良い感じですよ。たまにSNSで景気の良い実戦報告なんかも見かけますし、それを見た人が『やっぱ一発あるな』と思って打っているんじゃないですかね。自分も、今回登場した7機種は客として一通り打ちましたが『オーバーロード』は面白かったですよ。あと、藤商事は4月に『フェアリーテイル』も出すでしょ。おそらく反応が良いからなんでしょうね」

◆高稼働が続けば今後は甘く使えるハズだが…

 A氏の予想に反して高稼働を維持しているLT機。ならば、今後は甘く使うお店も出てきて、さらに稼働が上がるという好循環も期待できそうだが、「エヴァ」や「リゼロ」のような、お店にとっての主力機種になる可能性はあるのだろうか?

「『エヴァ』や『リゼロ』のような存在にですか? いや~ならない、ならない(笑)。それと、甘く使うことも多分ないです。なかにはワンボックス使ってLT機のコーナーを新たに作ったお店や、『北斗の拳』を20台近く入れたお店もあるようですが、稼働が良いとはいえ、外からのお客さんを引き込むほどではないし、大半のホールが今はスマスロに力を入れているので。あと、4月、5月はパチンコだと『牙狼』、パチスロだと『ジャグラー』が出るでしょ。さらに7月にはお札が変わるから、その対応でさらにお金が掛かる。だから、LT機を甘くする余裕はないんじゃないですかね」

 さらに、LT機のゲーム性を考えると、特に小規模店、少台数導入のお店は甘くできないとA氏は言う。

「とあるお店で1台だけ導入した『バカボン』が初日、2日目と立て続けにLTを引いて、2日連続でお店側が赤字になったそうなんです。大量導入しているなら1台や2台、赤字の台が出てもトータルで利益が取れるから大した問題ではないですが、少台数の場合はそうもいかない。だから甘くできないんですよ。当然、機械代は回収しないといけないし、毎月のノルマがあるなかで、いきなり赤字からスタートしたら落ち込みますよね(笑)」

 少台数しか導入していないお店にとって、一撃性が高いLT機は出玉率が安定せず、時として赤字になることもある。つまり、お店にとってもギャンブル台ということか。

「甘く使ったらそうなりますよね。お客さんが負けた時に『今日は打たなきゃよかった』と思うのと同じ感覚で、ホールもお客さんとの勝負に負けて『導入しなければよかった』までありますから(笑)」

◆甘デジを甘く使うホールはほぼ皆無!?

 少台数の機種は甘く使われにくいということだが、たしかに現状、ホールの主力機種となっている「エヴァ」や「リゼロ」、「大海物語5」などはすべてミドルスペック。甘デジを主力機種にして甘く使っているホールは少ない。

「甘デジの台を甘く使ってるお店ってほぼないですよね(笑)。やっぱり確率が高い分収束しやすいから、甘くすると上手い人に狙われます。もし、『エヴァ』くらい甘く使うとなると玉粗利(一発あたりの利益)で18銭くらいなんですが、甘デジの平均稼働が1日あたり2万発(打ち込み玉数)なので、2万発×0.18円で1日の粗利が3600円。すでに機械代を回収しているならまだしも、さっきの『バカボン』みたいに、導入から2日連続で赤字になって、それ以降、1日に3600円づつしか利益が取れなかったら、機械代を回収するのに何日かかるの?って話ですよね」

◆今後人気タイトルのLT機も登場するが…

 予想以上の稼働はあったものの、やはりホールの主力機種なる可能性は低いLT機。4月には大ヒットシリーズの『大工の源さん』や『必殺仕置人』も控えているが、ホールとしてはそれよりも期待している機械があるそうだ。

「『大工の源さん』や『必殺仕置人』に関しては実機を見ましたが、けっこう良さそうでしたよ。『源さん』は焼き直しではなく、演出も新規で作っているし、『仕置人』も今回はステージがあるので、前作のスランプ(回りムラ)が酷くて不評だった点が改良されています。でも今のところ、どちらもあまり売れていないみたいですね。どこのホールさんも、パチンコに関しては4月の『牙狼』と7月発売の機械に期待しているので、そっちに予算を回すつもりかもしれません」

◆7月の機械でパチンコが大きく変わる!?

 ホールが期待しているのは、昨年の4月に登場し、新たに「Cタイム機能」が搭載可能となったスマパチ。今回この機能に関して、これまでの規則から一部緩和される部分があり、それを反映した機械が7月に登場すると言われている。

「メーカーはLT機よりも7月発売のスマパチに力を入れているっぽいんですよね。営業マンに半分冗談で『今の機械、本気で作っていないよね?』って聞いたらニタニタって笑っていましたから(笑)。しかも、7月の機械のなかには新規の大型版権モノがあるなんて話も……。さらに、詳しくは分かりませんが、来年の夏にパチンコの仕様に関して大きな動きがあるとかないとか……あくまで噂レベルですけど」

◆まさに五里霧中のパチンコ業界

 スマスロが好調なパチスロも、Aタイプの機械に新たな機能として「確変」が付くなんて噂もあり、何かと話題が絶えないパチンコ業界。遊技人口を増やしホールの閉店ラッシュに歯止めをかけるべく、試行錯誤しているわけだが、今年、来年あたりが過渡期となりそうだ。

 斜陽産業、オワコンなどと言われることも多くなったパチンコが再び活気を取り戻す日はやってくるのか? オールドファンの一人としては、通い詰めた馴染のお店が潰れてドラックストアに変わっていく景色は、できればもう見たくないものである。

取材・文/サ行桜井

【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。

パチンコ店に掲載されていたラッキートリガー機種のポスター