◆事前予想で馬券力もアップ!?

 テレビや雑誌の定番企画に「G1レースの事前予想」があります。「○番勝負!」と銘打って、シーズン開幕前の段階で、G1レースの勝ち馬を予想するのです。当然、後半に組まれているレースほど難易度は高くなり、そもそも出走馬を当てることすらままなりません。

 一見、単なるお遊びにみえるかもしれませんが、G1シーズンを前にこれらの企画に参加することは、馬券的にもプラスになります。というのも、勝ち馬を予想するために、各世代の勢力図を整理することができるから。この作業を行なったうえで、実際にレースを迎えてレースを予想するのと、丸腰のまま予想するのでは、まるで違います。

 今週末に行われる高松宮記念を皮切りに、春のG1シーズンが本格的に開幕。そこで、高松宮記念から宝塚記念までの11戦、その勝ち馬を予想してみたいと思います。

皐月賞は父子二代制覇に期待

高松宮記念 ウインマーベル

 直近に迫っているこのレースは出走馬も正確に把握済み。純粋に勝つ確率がもっとも高そうな馬を選びました。ウインマーベル阪神C阪急杯と重賞を連勝中。2走前には昨年のスプリンターズSの覇者ママコチャ以下、強力メンバーを降しており、充実期に入ったこの馬が3連勝で戴冠するとみました。

大阪杯 タスティエーラ

 本来、主役を担う馬たちがこぞって海外(ドバイ)に遠征中。そんななか、国内に残った昨年のダービータスティエーラに期待します。前走の有馬記念は6着に敗れましたが、直線で大きな不利があってのもの。2着だった皐月賞もハイペース先行という厳しい競馬でした。阪神芝2000mは内回りなので、その先行力は大きな武器になります。

桜花賞 クイーンズウォーク

 昨年のホープフルSを勝ったレガレイラ皐月賞へ。アルテミスSを制したチェルヴィニアは、怪我で阪神JFを見送り、桜花賞が約半年ぶりの実戦と、主役不在の戦い。能力と順調さを加味すると、勝利にもっとも近いのはこの馬でしょう。前走クイーンCは大外枠から外を回っての直線一気。川田騎手の自信がうかがえる内容でした。

皐月賞 コスモキュランダ

 注目は牝馬のレガレイラ。ただ、タフな舞台である皐月賞で牝馬は苦戦を強いられており、2017年に挑戦したファンディーナも1番人気を裏切り7着に敗れています。その年の皐月賞を制したのがアルアイン。そして、そのアルアインを父に持つのがコスモキュランダ。同舞台の弥生賞を勝っており、このコースはお手のものです。

藤田晋オーナーのG1初制覇は?

天皇賞春 ドゥレッツァ

 昨年の菊花賞は圧巻の内容でした。不利な大外枠からのスタートでしたが、ハナに立ってインコースへ。一旦、脚をためた後、エンジンが再点火すると、上がり最速の脚を使って0.6秒差の圧勝でした。まさに「逃げて差す」、往年のサイレンススズカのような横綱相撲。前走は2着完敗も、長距離なら主役は譲れません。

NHKマイルC ボンドガール

 この馬が勝った6月東京の新馬戦は、まさに“伝説級”の一戦。8着馬までが全て勝ち上がり、2着チェルヴィニア、3着コラソンビートは重賞を制しています。ボンドガールは故障の影響もあり桜花賞には不出走となりそうですが、NHKマイルCには間に合うはず。災い転じて、藤田晋オーナーに初G1制覇をもたらす、そんなストーリーを妄想します。

ヴィクトリアM フィアスプライド

 ここは出走馬を読むのも一苦労。例年の傾向は、高速馬場でのスピード決着になりやすく、中距離タイプの差し馬は、実力は上でも苦戦を強いられがちという点です。能力上位のマスクトディーヴァは傾向的に一抹の不安アリ。フィアスプライドはスピード決着に強く、東京コースでも2勝と、まさに最適舞台といった印象です。

ダービーは音無調教師の大願成就と予想

オークス レガレイラ

 皐月賞を敗れたレガレイラがこちらに矛先を向ける……まずはこの推測が当たるかどうか。ただ、ダービー種牡馬価値も視野に入れ、牡馬に勝ってもらいたいというのが、関係者の心情ではないでしょうか。今年は有力牝馬にスピードタイプが多いため、牝馬限定の2400mという舞台なら、この馬の独壇場になると考えます。

ダービー サンライズジパング

 毎年、ダービーが近づくと、ダービーを勝っていない騎手や調教師の話題でもちきりになります。その一人が音無秀孝調教師。数多の名馬を送り出した伯楽です。若駒Sでみせたサンライズジパングの末脚はディープインパクトを彷彿とさせました。皐月賞で展開に泣いた追い込み馬の巻き返しは、ダービーの黄金パターン。いかにも、それに合致しそうなタイプです。

安田記念宝塚記念はどうなる?

安田記念 ロマンチックウォリアー

 ここもまた、ドバイターフ組を含めて出走馬が読めないレース。ただ、もしロマンチックウォリアーが出てくれば、注目を集めることは間違いないでしょう。同馬は香港の中距離王者で、香港カップでは日本の名だたるトップホースを一蹴しています。管理するシャム師は参戦に前向きな様子。ぜひ、東京競馬場でその勇姿を見てみたい!

宝塚記念 プログノーシス

 3カ月近く先のレース、また、梅雨時の荒れた芝を嫌って一流馬が回避することも多く、事前予想は困難を極めます。プログノーシスもドバイ遠征予定で、その後のローテーションも不透明ですが、出走してきたらかなり有力。中距離路線では現役最強クラスの能力の持ち主で、時計を要した札幌記念を圧勝しているように、荒れ芝も苦にしません。

 過去に何度か、仲間内で、G1勝ち馬の事前予想を行なったことがあるのですが、11戦中6戦当たれば神業レベル。比較的、有力馬がわかっている年でも4〜5勝すれば大したもの、という感じでした。

 冒頭で書いた通り、あらかじめ先のG1について考えておくことで、直近レースの馬券予想にも役立ちます。ぜひ一度、チャレンジしてみてください。

文/松山崇

【松山崇】
馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。

音無秀孝調教師の代表管理馬カンパニーはG1レースを2勝