第三京浜横浜市内の羽沢ICをフル化する検討が行われていますが、川崎市内には、古くから「野川IC」の建設計画があります。いま、どうなっているのでしょうか。

第三京浜で40年以上続く「事業」

東京世田谷と横浜を結ぶ第三京浜で2024年現在、ICの整備が検討されています。横浜市内の環状2号に接続する羽沢IC(神奈川区)に、下り線の入口と上り線の出口を整備し「フルIC化」するというもので、高速道路の入口を増やして利便性を高める狙いがあります。

一方、第三京浜にはずっと以前から、ICの整備が検討されている場所があります。それが、川崎市内の「野川IC」(仮称)です。

野川ICは京浜川崎ICから2kmあまり南、都筑ICの間に位置し、この計画があることから第三京浜のIC番号は「3」が欠番になっています。接続予定の尻手黒川道路は川崎市内を縦貫し、東名高速の東名川崎ICにも接続している地域の主要道路。付近には、同じく川崎の主要道路である中原街道と交わる野川交差点があります。

ICの整備が事業化されたのは、1988(昭和63)年のことですが、現時点で影もカタチもありません。整備の目的は「京浜川崎ICの渋滞緩和」のため。当時、第三京浜の改築事業として進められた保土ヶ谷PA改築、都筑IC新設、都筑PA新設は平成の一桁代に終わっていますが、この野川IC新設だけが残っている状況です。

2008年度に行われた国の事業評価では事業進捗率49%で、進捗が順調でない理由として、「近接する野川交差点における改良事業との一体的な整備が必要である」「川崎市は、(中略)交差点付近の道路改良や都市計画道路の整備を順次進めている」などとされています。要するに、一般道側の整備進捗を待っているということでしょう。

NEXCO東日本関東支社によると、「用地買収は一部済んでいるものの、川崎市と事業の仕方を検討しており、現時点(2024年3月)で事業を進めているところではない」と話します。

そこで川崎市に一般道側の状況を聞いてみると、野川交差点について「尻手黒川道路は現在の姿が完成形で、中原街道の交差点北側の整備も完了しています。現在は、2029(令和11)年度を目標に、中原街道の交差点南側の数百メートルについて改良を行っています」との回答でした。交差点4面のうち3面はもう完成形だというのです。

「IC整備については、(NEXCO東日本が)日本道路公団の時代から何度も協議をしています。しかし具現化はしていません。市の道路整備としても、(尻手黒川道路と中原街道は)インターの接続を考慮してつくったわけではなく、粛々と整備して事業を完了してきました」

川崎市によると、第三京浜の需要が伸びてきたわけでもなく、周辺道路の整備が進んだことで、「当時と状況が変わり、京浜川崎ICも、ものすごく混んでいるというわけではない」と話します。現時点で、野川IC整備の優先順位はかなり下がっている模様です。

第三京浜。京浜川崎ICの隣に「野川IC」が計画されている(画像:写真AC)。