パートナー探しに大活躍のマッチングアプリですが、今なおリアルな面談や婚活パーティを経て相手とマッチングするのを好む人も少なくありません。今回は、そんな昔ながらの婚活パーティで起きたエピソードを聞いてきました。

ヘルプで入らされた慣れない仕事

 結婚相談所に勤務する川口さん(仮名・34歳)。普段はお見合いやパーティーの企画・立案が主な仕事ですが、フタッフが体調を崩したため急きょパーティの受付にヘルプで入りました。

「いつもは予備のスタッフさんが待機しているのですが、その日は他のパーティへの応援で人手が足りず、慣れない私が受付をすることになりました。接客のような仕事は今まで経験がなく、たぶん応対がぎこちなかったと思います。でも、最後のほうになると緊張もかなりほぐれてマシになりました」

 パーティが始まると、今度は会場内の雑用係に徹した川口さん。でも、普段はデスクワークがメインなので新鮮に感じたそうです。

◆順調に終了するかと思いきや…

 2時間ほどのパーティがようやく終了するころ、再び受付に戻っていた川口さんに1人の女性が声をかけてきたそうです。

結構前から会員になっているAさんという女性に『あのう、あなたじゃいけませんか?』と、いきなり声をかけられたんです。私は状況がつかめずおどおどしていたら、続けて『私、あなたとなら嬉しいな』と言われました。その目つきといい、その声色といい、大げさだと思われるかもしれませんが、背筋が凍るような感じを受けました」

 川口さんがあぜんとしていたところ、Aさんは不気味な笑みをこぼしながらいつのまにか帰っていったそうです。

◆ビルのエントランスにAさんの姿が

 川口さんは、その夜、Aさんの不気味な形相が思い浮かばれてなかなか寝付けなかったそうです。ほとんど寝ずに出勤したそうですが、定時で仕事を切り上げ会社を出ようとした時、目を疑うような光景に出くわします。

「その日は早く帰って睡眠を取ろうと思っていました。ところが、会社のビルのエントランスにAさんが立っていたんです。しかも不気味な笑顔を見せながら……もう本当にヤバいと思いました。ストーカーの始まりですよ」

 その日は視線を合わさずに小走りで駅に向かった川口さんですが、次の日も、その次の日もAさんの姿はエントランスにあったそうです。

「そんな恐怖の光景が何日か続いたある日、いつものようにエントランスに出ると案の定、Aさんの姿はありました。しかし、その日は彼女がこちらに向かって歩いてきたんです。そして『LINEのIDを教えてくださったら、もうここへは来ません』と言われました。あまりの恐怖に、早くこの場を逃れたいと、目の前のストーカーの要求を呑もうとしている自分がいました。気がつけばLINEのIDを教えていました」

◆もっと早く相談すればよかった…

 退社時のエントランスには姿を見せなくなったAさんですが、今度はLINEで交際を迫る、しつようなメッセージが入るようになったそうです。

この気持ち、わかる人は少ないと思いますが、LINE上でAさんをブロックすることができないんです。毎回目を通して返事をしないと余計に恐怖心が増すんです。だから、Aさんからメッセージが入るたびに目を通さないと気が済まなくなるんです。もう毎日が恐怖で……」

 川口さんは、今まで会社に迷惑をかけたくないという気持ちから、自分で処理しようとしていたのですが、さすがに限界を超えてしまい直属の上司であるT部長に相談したといいます。

「包み隠さず全部話したら、以前T部長も同じような経験をしていたそうで、私のつらさが伝わったのか、弁護士を通じて会社としての意向をAさんに通知してくれると約束してくれました。仕事面でも、表舞台には今後は立たせないとも確約してもらいました

 T部長の迅速で的確な対応により、Aさんは結婚相談所を退会し、二度と川口さんの前に現れることはありませんでした。ただ、退勤時に通る会社のエントランスは、いまだに少し緊張するといいます。

<TEXT/ベルクちゃん>

ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

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