「軽(自動車)に軽油を入れてはいけない」クルマに乗るのに慣れている人ならば常識なことです。しかし、かつては「軽に軽油を入れなくてはならない」クルマも存在しました。

ヤンマーの歴史を語るうえで欠かせないクルマ

「“軽”に“軽油”を入れてはいけません」定期的にSNSで注意喚起がされる話題ですが、毎年必ずこの間違いをして、誤給油でクルマを故障させる人が現れます。

軽油(ディーゼル)は、ディーゼルエンジンを有するクルマを動かす燃料です。2024年現在販売している軽自動車はガソリンエンジンかEVで、ディーゼルエンジン車両が存在しませんので、軽油を入れて動く軽はありません。

しかし、過去には本当に軽油を入れていい軽自動車が存在していました。あの、農機や建機を製造しているメーカーであるヤンマーが販売した唯一のディーゼル軽トラックである「ポニー」です。

ポニー」は、1958年5月に販売された小型空冷ディーゼルエンジンを搭載した軽トラック。排気量は軽自動車の規格であった360cc未満でした。

ヤンマーが公開している「ヤンマー100年史」によると、1950年代、急速に機械化が進む農機や建機の市場でディーゼルエンジンを拡販していくため、農機や建機と作業機とのセット販売を検討していました。その先駆けとなったのが、農業用の運搬車として、臨時車輌部(当時)で開発が始められたディーゼル小形貨物自動車であるポニーだったそうです。

まず、1958年5月に軽自動車としての型式認定を受けたKT3形およびKT4形が50台販売され、その後、出力アップを図ったFM1形およびFMS形を1958年10 月から1960年8月にかけて約330台販売したそうです。このFM1形から「ポニー」の愛称が付けられました。

ヤンマー1960年10月に販売した「ポニー」のKYT形を最後に、自動車からは撤退しますが、同車で培った技術は後のトラクター開発に活かされたそうです。

なお、JAF(日本自動車連盟)が定期的に発表しているロードサービスの出動実績などで「軽自動車なので軽油でいいと思った」という事例が確認されると、「ヤンマーポニー定期」「ヤンマーポニーぐらいのもんだぞ ポニーディーゼル軽トラだからな」といった投稿をする人も定期的に現れます。

多くの場合緑色の給油ノズルから軽油が出る(画像:写真AC)。