お金を貯めるために必要なのは、節約や我慢ばかりではありません。「1ヵ月間のルールを決めるだけで、月の半分は豪遊していても、生活とお金の流れを大きく改善できた」と、ミニマリストの人気YouTuber、かぜのたみ氏はいいます。かぜのたみ氏の著書『低コスト生活 がんばって働いている訳じゃないのに、なぜか余裕ある人がやっていること。』(朝日新聞出版)より、詳しく見ていきましょう。

「月前半は使わない、月後半は豪遊」のススメ

自分が余計なことをするのをセーブするだけでお金が貯まりやすくなると強く実感したのが、「月前半は使わない、月後半は豪遊式」という、お金を使うタイミングに関する仕組みです。お金を使うタイミングをざっくり決めるだけで、これほど浪費が減って、楽しみがより楽しみになるとは! と、この仕組みを取り入れはじめた当初は、非常に驚きました。

お金を貯めるのは我慢や節制ばかりかと思いきや、です。

「月前半は使わない、月後半に豪遊式」とは、月前半の出費は、必要最低限の食料品を買うくらいに留め、後半に予算を使いたいことに使う(豪遊する)というものです。そのほかの難しい決まりは何もありません。

この方法は私が発案したものではなく、以前とあるネット記事で知ったものです。シンプルな方法なので気軽にトライしやすく、いざやってみると、あまり自分の意思を使うことなく、ラクにお金の流れをととのえることができました。

私の毎月のお金の流れはこんな感じです。

第1週 片付けや掃除、仕事に集中、基本家にあるもので過ごす

第2週 家にあるもので過ごしながら、下旬の楽しみを計画しはじめる

第3週 やりたいことにお金を使いはじめる

第4週 思いっきり豪遊!

■「第1週」の過ごし方

第1週は、片付けや掃除、仕事に集中して、ストックを消費しながら過ごします。家もきれいになり、やるべきことにも着手できて、いいこと尽くしです。食費が激減して、収納スペースもすっきりするので、クセになる気持ちよさがあります。

また、自分がいかに衝動や習慣から不要な買い物に行こうとしているのか、実感できる期間でもあります。自分でも気づかないうちに、何となくちょっとお茶しに行ったり、家に食べるものがあるのに、買い物していたりするものです。それを自覚せず日々お金を使っていると、それでは貯まるものも貯まりません。

「第1週はできるだけお金を使わない」と決めていると、お金を使いたくなったときにハッと思い返せて、軽い気持ちでお金を使ってしまうのをセーブできるのです。

■「第2週」の過ごし方

第2週は、ジリジリと楽しみの計画や下準備を行う週です。この期間を設けるとお金を使うことに慎重になるだけでなく「自分が本当にしたいこと」が精査されるのがすごいところです。

じっと禁欲的に過ごす訳ではなく、「必要かな」「欲しいかな」と思ったものは、安く買えるタイミングがあるのでは、新品でなくてもいいのでは、家にあるもので工夫して使えるのでは……など、安く買う方法や代用アイデアを出し続けます。

例えば、新しい洋服が欲しいとします。ここで、各ショップでアイテムを比較検討するような「買う」を前提に行動するのはできる限り控え、新しく買う前に、そもそも手持ちの服を活用できているかチェックしてみるのです。

「夏白シャツコーデ」などでネット検索し、手持ちの服のコーデ例を見てみると、「こういう着方もできるのか」と新しいスタイリングが見つかったりして、欲しい気持ちが薄れる場合もあります。

月の後半は「なんてことないこと」が特別なイベントに!

■「第3週」の過ごし方

第3週は、第2週で精査した「やりたいこと」を実行に移していく段階です。ここで「待ってました!」と勢いよくお金を使うのではなく、優先順位の高いものからお金を使うようにするのが大切です。

優先順位の高いものとは、例えば「いますぐ使いたいもの」「不足していると暮らしにくくなるもの」などです。優先順位が低いものとは「いますぐにはいらないもの」「もう家にあるもの」などです。

優先順位は低め、でも興味をひかれているものは、服であれば「試着しに行く」「素材を確かめる」など、まずはお金を使わない方法からじわじわと行動に移していきます。「試着してみたら全然似合わなかった……」「実際に見たら想像と違った!」はよくあることです。

私は基本的に、洋服や靴、手に持って使うものなどは、リアル店舗で見たり試したりしてから買うようにしています。ごくたまに計画を立てて買いに行ったものが、お店で売り切れていることがありますが、そういうときは、「ご縁がなかった」と思うことにしています。その方が、何軒もお店をハシゴして求めに行くよりも、後々もっと良いことが起こるのも珍しくないからです。

なぜかラッキーなことに、自分のお金を使わなくても似たものが手に入ることも度々あります。欲しいときになかったら潔く諦めた方が何かといいようです。

「欲しい」「必要」と思っていても、実際に手に取ってみたり、よくよく考えてみたら、買わなくてもいいものは本当にたくさんあります。先ほど紹介したような方法をいくつか試してみると、「欲しい気持ち」もだいぶ静めることができるのではないかなと思います。

■「第4週」の過ごし方

第4週は、ついに豪遊ウィークの到来です。豪遊といっても、「ちょっとやめておこうかな」と自制していたことを一時的に緩めるイメージで、普段プチ自制している「ちょっといいこと」をしてみる感じです。「ここからここまで頂戴」という大人買いや爆買いをする訳ではありません!(笑)

例えば、ちょっと気になっていたシャンプーとトリートメントのサンプルを買って使ってみる、行ってみたかったカフェでお茶する、スタバのドリンクを思う存分カスタマイズする、などでしょうか。

ちなみに私の豪遊パターンは、「入り用のものをまとめて購入する」だったり、「美術展をみる」などです。日頃から実行していると「なんてことないこと」になるかもしれませんが、豪遊ウィークに行うスペシャルなイベントに昇格させる方がずっと楽しいことに気づきました。

金額でなく頻度とタイミングを変えるだけで、満足度がかなり上がるものです。

セーブしながら、楽しんでお金を使える

私がこれらの「身近なレベル」で満足することができているのは、普段から「体の栄養」と「心の栄養」を分けて考えているからだとも思っています。

例えば、私は支出を管理するとき「食費」と「喫茶代」を分けるようにしています。喫茶代を食費に含めている時期もあったのですが、自分の欲求通りに過ごすと、外食のありがたみが激減したり、食事を摂ること自体が面倒になってほとんど毎食コーヒーとパンだけで済ませてしまう、ということがありました。

「お楽しみの外食」を、普段の自炊とは切り離して記録・管理することで、節約効果だけでなく、体調も良くなり、心の充足感もかなり増しました。

お弁当代や嗜好品代までまるっと「食費」にまとめられることが多いですが、私にとっての「喫茶代」のように、自分がよくお金を使っているものがあれば、支出の管理項目で別立てして観察してみるのがおすすめです。もしかしたら、第4週の豪遊ウィークにだけやるくらいがちょうど良かった、ということが見つかるかもしれません。

「月前半は使わない、月後半は豪遊式」のお気に入りポイントは、お金を楽しんで使えるようになることです。「お金を使えばしたいことができる」と思いがちですが、その中には「それほどしたくなくても、お金を使っている」ことの方が明らかに多く含まれているようです。

これらの「優先順位低め」の消費を振り落とすことで、お金を使う機会の満足度が上がるのが、「月前半は使わない、月後半は豪遊式」の超重要ポイントなのです。

もう一つのお気に入りポイントは、月前半のお金を使わない期間に、やるべきことに集中できる点です。いまも日々実感するところですが、それほど必要ないのについお金を使ってしまうとき、目の前の「やるべきこと」からちょっと離れて気を紛らわせたい心持ちになっていることが多い気がします。

これが積もり積もってくると、無駄遣いが増えたり、やるべきことを先延ばしにしてしまうなど、あとあとシワ寄せがきてしまうことが多いのです。

月の上旬は進めなければいけない作業に集中し、月の中旬から少しずつ買い物に出かけたり、楽しみのお茶をしたりして豪遊すると、1ヵ月間のお金と時間の使い方にメリハリがつけられるようになりました。月の予算をセーブしながら、楽しみも存分に得られる本当に素晴らしい方式です。

節約や節制、お金を貯めるのにつきまとうのが「我慢」や「自制」だと思うのですが、実際には、セールごとに余計な買い物をしたり、せっかくランチ代を節約したのにコンビニスイーツをつい買ってしまうなど、「余計なことをしている」場合が明らかに多い気がしています。

普段、私はそれほどダラダラ出費しているとも思っていなかったのですが、「月前半は使わない」ときっぱりルールを決めてみると、気づかぬうちにお金を使っていることをはじめて自覚できました。「こうして知らぬ間に、自分が汗水垂らして得た金が霧のように……」と軽いショックを受けると、自分の行動も改善しやすくなります。

自分で思っているお金の使い方と現実とは、結構かけ離れているものです。家計簿や支出メモでは、お金を使うペースまでは管理しづらいですが、この方式はペース調整がシンプルかつ簡単で、継続しやすいのも素敵なところです。

貯金を先取りしていると、どうしても日々の生活の過ごし方までは意識が届きづらいのが気になるところでしたが、「月前半は使わない、月後半は豪遊式」は、生活を送ることがメインで、貯金がサブ的な位置づけになることも、自分の生活とお金の流れがスムーズになる秘訣だと感じます。

貯金貯金! とお金を追いかけ続けるよりも、「無意識にやっている余計なこと」を減らす方が暮らしは充実します。そして実行しなければ忘れていくことの方が圧倒的に多いことがわかると、お金を使うのを「我慢しなきゃ」ではなく「また余計なことを」と自分の行動を客観的に戒めることができます。

月前半は、使わない。後半は、豪遊する。

私はこの方法で生活とお金の流れを大きく改善できました。推しに推すイチオシの仕組みです。やってみてお金が減る訳ではないので、試す価値は大いにありです……!

かぜのたみ YouTuber

(※写真はイメージです/PIXTA)