3月16日と17日に、幕張メッセで開催された「ホロライブプロダクション」の大型イベント『hololive SUPER EXPO 2024』。世界最大規模のVTuberプロダクションによる一大フェスとして、音楽ライブや展示など、様々なコンテンツが提供される場となった。

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 国内だけでなく、国外からの参加者も多く見られた本イベント。本稿では、カバー株式会社が進めるメタバースプロジェクト『ホロアース』の展示内容をはじめ、世界が熱狂するカルチャーの祭典の様子をお届けしよう。

■いよいよ本格始動? 『ホロアース』の現在地と未来

 まずは、カバー社が手掛けるメタバースプロジェクト『ホロアース』の展示ブースからご紹介しよう。2021年ごろから始動し、現在はベータ版として、タレントによるミニライブ、一部機能のテスト運用など、本格リリースへ向けた細かな展開が続いている。

 今回の『hololive SUPER EXPO 2024』でも、連動企画が実施。配信番組の一部を中継放送する特設エリアがオープンしたほか、アバター向けの衣装として、イベントキービジュアルでタレントが着用しているシャツが配布されている。

 展示ブースには、現在に至るまでの『ホロアース』の歴史が年表形式で紹介されていた。施策の総数は決して多くはないものの、「VTuber企業によるメタバース」として、着実に実績を積み上げてきている印象だ。

 そして、会場内で流れていたのが、『ホロアース』に登場するキャラクター・ミスラによる、『ホロアース』の最新情報を紹介する映像だ。主な内容は、今後実装予定となるエリア「オルタナティブ・シティ」に関する情報だ。

 様々な施設が存在する巨大な街「オルタナティブ・シティ」では、4月に衣服やアクセサリーを購入できる「ファッションショップ」、アバターの容姿をカスタマイズできる「ビューティーセンター」がオープン予定だ。どちらもプレイヤーの見た目に関わる要素であり、メタバースで暮らす姿に幅を持たせるという意味で重要となる。

 本記事執筆時点でも、「オルタナティブ・シティ」予定地と思われるエリアを訪問することができる。現時点では「建設中」らしく、工事現場を思わせる光景が見られる。ある意味貴重な風景かもしれないので、4月のオープンまでに気になる人は覗いてみるとよいだろう。

 いずれにせよ、プレイヤーの見た目に関わる重要な要素をアップデートで強化するところから、『ホロアース』がいよいよ本腰を入れて動き出していることがうかがえる。VTuber事業を軸に据えてきたカバーが、メタバース業界でどのように存在感を発揮していくか、期待がかかる。

■ファンにうれしい“再現”や資料も 熱狂あふれる会場を見る

 会場内では『ホロアース』以外にも、カバーの新事業に関わるコーナーがいくつか見られた。そのひとつが、オリジナルキャラクタープロジェクト『もちぽよちゃん』だ。

 ベースとなるキャラクターと、『ホロライブ』所属タレントをイメージした派生キャラクターがラインナップした、マスコットキャラクターが登場するプロジェクトで、ブースには初公開となるぬいぐるみたちが並んでいた。VTuberとはまた異なるIPコンテンツとして、今後どう展開するか気になるところだ。

 協賛社ブースもにぎわっていた。各種グッズ販売はもちろんだが、“等身大”の星街すいせい像、トレーディングカードゲームヴァイスシュヴァルツ』の体験会、公開カラオケコーナーなど、ユニークな体験コーナーも見られた。

 恋愛アドベンチャーゲーム『あくありうむ。』の新作制作発表など、各社の情報発表の場としても機能していた印象だ。

 そしてメインコンテンツはやはり、タレントに関連する展示コーナーだろう。タレントの配信部屋を再現したフォトスポットには、多くの人が写真をおさめるべく立ち寄っていた。

 『ホロライブ』の看板タレントであるときのそらのグッズを集めたコーナーもあった。ファンクラブ関連のグッズまで取り揃えられた展示は、さながら博物館のよう。資料としても貴重なアイテムが展示されたコーナーだ。

 ヤマハ社が開発した姫森ルーナ仕様のエレクトーンLUNA』の展示も。ファン投票によってカラーリングなどのデザインが決まったようで、これはVTuberとファンの応援の結晶だといえるだろう。特別仕様のモデルを間近で見ることができるのは貴重な機会だ。

 ちなみに、今回のイベントのコンセプトは「リゾートアイランド」。これにちなんで、各所にはリゾート地をイメージした展示・ブースも多く見られた。

 『ホロスターズ』のエリアもキャンプ地のようなデザインに。ブースにはどこからかスパイスの香りがただよっており、さながら本当にバーベキューをしているかのように食欲をそそる場となっていたのが印象的だ。

 また、『ホロスターズ』の大々的なミートアップコーナーも用意されていた。公開エリアではタレントが出演する配信が実施され、その隣には一対一で会話できるコーナーがあった。入口前に設置された姿見が、女性ファン層の存在を強く感じさせる。

 グッズ展示コーナーも盛況だった。こちらは『HOLOLIVE MEETS MANGART BEAMS』コーナー。BEAMS発のプロジェクト「MANGART BEAMS」とホロライブタイアップで、タレントが描かれたTシャツが発売されている。シャツの現物展示に加え、尾丸ポルカによるコーディネート案の紹介もあった。

 タレント自身が考えるグッズ「タレントプレミアムグッズ」の展示コーナーも興味深い。それぞれに異なる方向性がブースにも如実に出ており、ホロライブタレントの活動の幅広さが感じられるところだ。なにより実物を見ると、ついつい手に取りたくなる。

なつかしい人の面影も 世界中のファンが思い出を作る場

 会場内にはフォトスポットが数多く設けられていた。タレントのスタンドは各所にも設置されていたが、3期生は特設のフォトスポットブースが存在していた。3期生のコンセプトである「ホロライブファンタジー」をモチーフにしたフォトスポットは入場待機列ができる盛況ぶりで、公式に用意されたセリフが書かれた棒や、各々持ち寄ったグッズとともに撮影するファンでにぎわっていた。

 会場中央には寄せ書きコーナーも。ファンたちが思い思いに、ホロライブのマークである三角形をかたどった付箋にメッセージを書き、ボードに貼り付けていく。ボードは取材班が訪れた時点で満杯近くになっており、フォトスポットと合わせて、来場者の思い出作りに貢献していたはずだ。

 「ホロスターズ」エリアにも個別で寄せ書きコーナーが見られた。こちらには、ホロスターズ立ち上げに関わった元マネージャー・大道シノヴ氏の寄せ書きもあったようだ。

 なつかしい面影も感じつつ、会場内を訪れていたファンの層は想像以上に幅広かった。メイン層であろう男性ファン層も、年齢から雰囲気まで多種多様。女性ファンもホロスターズファンを中心に一定数見られた。

 そしてなにより、海外からの来場者が多く見られたのはここ数年で一番の変化かもしれない。いまや日本だけでなく、世界中にファンを擁するVTuberプロダクションになったことが、こんなところからもうかがえる。

 そして、そのいずれもが、幕張メッセを舞台にした一大イベントに興奮を隠せない様子だった。日本だけでなく、世界各国が熱狂するインターネットカルチャーの現在が、現実に実体を成していたと言えるだろう。

 くわえて言うなれば、その先の広がりも十分に予感できる場でもあった。ときのそらが産声を上げた2017年から7年。新たな事業とともに、ホロライブプロダクションは今後も飛躍を続けてくれるだろう。

(文=浅田カズラ)

『hololive SUPER EXPO』