役員の私的な支出と混同されやすい、「交際費」や「会計費」。個人的な支出でないことを証明し経費で落とすには、どうすればよいのでしょうか? 本記事では、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)から、事例をもとに交際費と会計費に関するエビデンスについて解説します。

交際費であることを証明するには?

Q

役員の私的支出ではなく交際費であったと疎明できるエビデンスを教えてください。

A

交際費に該当することによる損金不算入については、一般の中小企業においては、損金算入限度額が拡大したため、特段、論点ではなくなりました。しかし、交際費や会議費として処理されていたものが役員の私的支出であったとすると役員給与(旧役員賞与)認定される可能性があります。したがって、本書では後者についてのみ触れます。

私的な支出でないことを証明する書類の作り方

1.まずは「経費精算書」で私的な支出でないことを強調する

まずは交際費や会議費と認められる一般的な雛形を用意します。

【役員の私的な支出でない旨を明示した経費精算書】

               経費精算書 作成日令和〇年〇月〇日 支払日令和〇年〇月〇日 勘定科目名 交際費 ★1  支払方法 ★2  振込  現金  その他(     ) 経理部 担当部 【今回の経費の内容】・・・★2・★3  本体価格 ① 〇〇円  消費税等 ② 〇〇円  支払金額(総額) ③ 〇〇円 ※消費税等の区分  ( )課税仕入・課税売上対応  ( )課税仕入・共通売上対応  ( )課税仕入・非課税売上対応  ( )非課税又は課税対象外 内容 ★3 〇〇株式会社〇〇社長就任祝いの〇〇(例えば生花)代 支払先 〇〇花店 備考 (事由)  〇〇株式会社は現在のところ当社との取引関係はない。しかし、今般、社長に就任した〇〇氏は、当社〇〇社長の親族であり、新規の取引開始が見込まれる。そこで、その営業活動の一環として〇〇社長就任祝いとして〇〇を贈った。

★1 交際費として処理したい場合、会議費、福利厚生費、情報提供等々役員の私的流用でないことを強調します。

★2 エクセル等々で作成してください。ここにあるのは最低限の事項です。より詳細に区分されていればなお良いです。

★3 最も重要なところはこの内容です。

・できれば打ち合わせ資料は別途欲しいところです。

・上記は現実的に困難なのでこちらの経費精算書において詳細を記載しておきます。

(交際費の場合)2.支出が出た時のことを詳細に追加記載する

交際費としての性格を有する場合、下記を追加記載します。

             【今回の経費の内容】 本体価格 ① 〇〇円 消費税等 ② 〇〇円 支払金額(総額) ③ 〇〇円 接待飲食費使用伺書 ・実施予定日 ・相手先 ・内容 ・人数 相手先〇〇人 当社〇〇人 ・実施場所 ・予定金額 ・実施目的 ・備考

(交際費の場合)3.裏に相手や人数が書かれた領収書を添付する

さらに、交際費としての性格を有する場合、「領収証」(原本)を添付します。その場合、領収証の裏に下記を記載します。

・接待相手先  →名称  →当社との関係 ・相手先の出席者・人数 ・当社の出席者・人数 ・合計人数

(会計費の場合)2.支出が出た時のことを詳細に追加記載する

会議費の場合、下記を記載します。

             【今回の経費の内容】 本体価格 ① 〇〇円 消費税等 ② 〇〇円 支払金額(総額) ③ 〇〇円 ・実施日 ・実施場所 ・出席者 ・会議・打ち合わせのテーマ ・会議・打ち合わせの概要

伊藤 俊一

税理士