自動車に車検があり、数年ごとに受ける必要があるように、航空機も耐空証明検査と、その更新が義務付けられています。しかも車検と同様、違反した場合には罰則規定が設けられているそうです。

航空機の安全性を証明するために必須なモノ

自家用車を所有したことのある人なら、車検を通した経験があるでしょう。クルマの安全性を検査するものだけに、面倒でも必ず受けなければいけません。

これと同じような制度が、実は航空機にも存在します。それは、航空機が定められた基準を満たしているか検査し、空を飛ぶ際の安全性を証明する「耐空証明」です。

クルマの場合、有効な自動車検査証の交付を受けていなければ「運行の用に供してはならない」と、道路運送車両法の第58条に規定されています。車検はこれに従って実施されます。

これに対し航空機の場合は、航空法第11条で「航空機は、有効な耐空証明を受けているものでなければ、航空の用に供してはならない」と規定されています。まさに、クルマと同様な仕組みといっていいでしょう。

検査項目はクルマの車検と似ていて、機体の強度や構造、性能について安全性の基準に適合しているかが検査されます。このほか、航空機の種類や装備するエンジン、最大離陸重量などが省令で定める基準に達しているもの(主に大型の旅客機など)は、騒音や排出ガスなどのレベルについても検査項目に加えられています。

「民間車検場」に相当する施設も

原則は国土交通大臣が認定した検査官が各項目について検査しますが、整備や検査などの能力が定められた基準に適合していると認定された事業場で整備・検査された航空機の場合は、検査の一部を省略することも可能です。この点も、車検における認定工場と指定工場(いわゆる民間車検場)の違いに相当するものといえるでしょう。

クルマと少し違うのは、航空機は用途によっていくつかのカテゴリー(耐空種別)に分かれており、それぞれに応じた安全基準が存在していることです。ゆえに、耐空証明を受けている種別ごとに運用限界が定められており、それを逸脱して飛行することは許されません。

また車検と同様、耐空証明にも違反した際の罰則規定が存在します。耐空証明を受けずに飛行した場合(試験飛行などを行うため国土交通大臣の許可を得た場合を除く)、または運用限界を逸脱して飛行した場合には、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを合わせて科されると航空法第143条は定めています。

自衛隊機は適用除外

航空会社で運用されているものや、国土交通大臣の認定を受けた整備規定により整備をするものを除く一般の航空機では、耐空証明の有効期間は1年となっており、機内に耐空証明書をほかの必要書類とともに備え付けることが義務付けられています。

この点も公道走行時は携行が義務付けられる車検証と同様といえるでしょう。なお、他国では有効期間が複数年におよぶ場合もあるようで、国情によって異なる模様です。

ちなみに、日本の耐空証明は日本の国籍を有する(日本で登録された)航空機でなければ受けることができない、という国籍主義を採用しています。これは他国も同様で、必ず登録した国の耐空証明を受ける必要があります。

ただし、自衛隊が保有する航空機については、独自の安全基準が適用されています。これは、自衛隊法第107条に航空法第11条(有効な耐空証明を受けていない航空機の飛行禁止)の適用を除外すると明記されているからで、代わりに防衛大臣が国土交通大臣と協議したうえで定めるとなっています。

この点も、自衛隊の車両が一般の車検ではなく、独自の保安基準によって整備・検査が実施されているのと一緒です。

地面を走るクルマは故障しても止まることができますが、航空機の場合は墜落してしまうため、安全性の確保はクルマ以上に重要といえます。一定期間ごとに安全性を証明する耐空証明は、航空機になくてはならないものだといえるでしょう。

ホンダが開発したジェット機「ホンダジェット エリート」(伊藤真悟撮影)。