バブル前夜、約100台が市販された原付カー「CV1」を知ってる? スズキが本気で作ったシティコミューターとは【マイクロカー図鑑】

1981年にスズキが市販した1人乗りの50cc原付カー

日本で「最もベーシックな自動車」といえば一般的には軽自動車をイメージされるでしょうが、そのクラスよりもさらにミニマムなトランスポーターとして、マイクロカーや原付カーという区分があります。今回ご紹介するのはスズキ「CV1」。軽自動車のトップ・メーカーとしても知られるスズキ1981年に市販した、排気量50ccの1人乗り小型車です。

初代アルトで成功を収めたスズキの次なる一手だった

そもそもミニマム・トランスポーターが生まれるのは、時代背景に大きく影響される場合が多い。たとえば第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ占領下のフランスでは小さな電気自動車やペダルカーが作られ、戦後にはドイツイタリア、日本などの敗戦国を中心にプリミティブな小型車やバブルカーが雨後の筍のごとく生まれ……といった具合だ。

その多くは資源の不足や耐乏生活が続く時代が必要としたもの。そして1980年ごろに数多く見られた日本の原付カーもまた、ひとつの時代の趨勢によって生まれたクルマ、ジャンルと言えるかもしれない。

1973年の第4次中東戦争1979年イラン革命、それぞれの要因から1970年代に二度にわたり到来した石油危機。石油価格の大幅な上昇は、日本はもちろん世界中に大きな影響をもたらした。「省エネ」「省資源」といった言葉が使われるようになったのもこの頃からだったように思う。

それまでは、ややもすると過剰な豪華さの演出やパワー競争に明け暮れ、その本分を忘れかけていた軽自動車の世界に、安価で軽便を旨とするスズキアルト」がデビューしたのは1979年のこと。軽自動車の原点に立ち返ったこのアルトの大ヒットによって日本の軽自動車シーンの潮目が一気に変わった感があったが、「小さなクルマ、大きな未来。」を標榜するスズキは、さらなる一手も用意していた。それが1981年の第24回東京モーターショーに出展された「スズキコミュニティビークル CV1」である。

軽自動車よりも小さく簡便かつ安価なクルマとして開発

当時のスズキの資料によると、このCV1を「都市と農村でのクルマのあり方、交通渋滞や省エネルギー問題などを見据え、ファミリーバイクのユーザーでも安心・安全に使える全天候型のクルマとして試作した」とある。

1981年に発売された原付カー、スズキCV1を紹介

その開発コンセプトには「燃費がリッター50km、誰でも扱える簡単な操作、車重が軽自動車の1/4、駐車スペースは軽の半分、そして誰でも気軽に買える無駄を省いた低価格」といった文言が並ぶ。

ちなみに原付カーの法的な定義は、排気量50cc以下、または定格出力0.6kW以下の原動機(モーターなど)を有する普通自動車で、そのサイズは長さ2.5m、幅1.3m、高さ2m以下とされている。もちろんこのCV1もそのサイズ以下に収められ(全長1900mm×全幅1180mm×全高1280mm)、エンジンは同社の50ccスクーター「ジェンマ」用の3.5馬力・空冷2サイクル49.9ccが搭載されている。

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スズキが1981年に市販した1人乗りの小型車、CV1