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 地震が起きるのは地球だけではない。月でも火星でも多くの惑星で地震が起きている。1970年代NASAアポロ計画のデータを再分析したところ、「月震」は考えられている以上に活発に起きていることが明らかとなった。

 このアポロのデータは危うく廃棄されるところを、日本人の研究者が救い出したものだ。それをまた別の日本の研究者が丹念に分析し、これまで知られていた1万3000回の月震以外に、2万2000回の月震が記録されていることを突き止めた。

 1970年代アポロ計画で月面に設置された月震計には、これまでの記録の約3倍にあたる、合計3万5000回の月震が記録されていたのだ。

【画像】 アポロが調査した月の地震「月震」

 地面が揺れることに違いはないが、月の月震は地球の地震とは少々違ったメカニズムで発生する。

 地球の地震は主に地殻プレートNASAによれば月にはないものだ)の移動によって起きるが、月の地震「月震」を生み出すのは、緩やかな温度変化や隕石の衝突などだ。

 最近の研究によると、月はだんだんと縮んでおり、そのせいで月震が起きている可能性もあるという。いずれにせよ日本の強烈な地震より揺れは弱いそうだ。

 1969~1977年にかけて、アポロ計画の宇宙飛行士は、2種類の月震計を月面に設置してきた。

 1つは、月震波の3次元的な動きを長い周期で検出するタイプ。もう1つは、もっと短い周期の揺れを検出するタイプだ。

[もっと知りたい!→]もしも火星に移住するなら耐震構造の建物が必要なようだ。火星で地震活動が2度検出される(NASA)

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アポロ11号ミッションで月震計を設置するバズ・オルドリン宇宙飛行士 / image credit:NASA

失われかけたアポロの月震計の記録

 これまで確認されてきた月震計が記録した1万3000回の月震は、すべて長周期的なデータとして検出されたものだ。

 短周期のデータは、月の昼と夜の温度差によるノイズが大きいことや、データを地球に送信する際の問題などのために、ほとんど無視されてきた。それどころか、危うく永遠に失われるところだった。

 アポロ計画を完了したNASAは、新たなミッションを行うために、月震計から資金を引き上げたのだ。その際、長周期データは保管されたが、短周期データは放棄されてしまったのだ。

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photo by Pixabay

日本人研究者がデータを守り再分析、月震は3倍多く起きていた

 だが、これを守った日本人の研究者がいた。

 それはテキサス大学の地球物理学者、中村吉雄名誉教授(すで退職している)だ。彼は1万2000本の記録テープを保管した。それはのちにデジタルデータに変換された。

 そして今回、これを3ヶ月かけて見直したのが、東京大学小野寺圭祐博士だ。

 彼がこのデータのノイズを取り除いて調べたところ、月震と思われるものが3万件も記録されていることが判明。それをさらに精査して、そのうち2万2000件が本物の月震であることを突き止めた。

 新たに発見された月震は、月面がこれまで考えられていたよりずっと頻繁に揺れていることだけでなく、それが発生する地点も想像以上に浅いことを示している。

 それは、こうした月震がこれまで考えられていた以上に断層と関係していることを示唆しているという。

 こうした月の地震をもっとよく理解するには、さらなるデータが必要になる。

 2023年8月、インドの月探査機チャンドラヤーン3号の着陸機「ヴィクラム」が、アポロ計画以来となる月震を検出した。こうしたデータが、今後の月震研究を支えてくれることだろう。

 小野寺氏と中村氏は、2024年2月に50年以上ぶりに月面に到達した米国の民間企業「インテュイティブ・マシーンズ」が打ち上げた月着陸船「オデュッセウス」や、将来NASAが月面着陸船に搭載する月震計が、今回の研究を裏付けてくれることを期待している。

 この研究は、今月の月・惑星科学会議で発表され、現在『Journal of Geophysical Research』で査読されているところだ。

References:Number of known moonquakes tripled with discovery in Apollo archive | Science | AAAS / Overlooked Apollo data from the 1970s reveals huge record of 'hidden' moonquakes | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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月の地震活動「月震」は想像以上に活発だった。1970年代のアポロデータの再分析で明らかに