2024年3月24日(日)NHKホールにて、指揮佐々木新平、管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団の演奏により『ディズニー ファンタジア』ライブオーケストラ・コンサートが開催。本公演を皮切りに、札幌、大阪、福岡、兵庫にて、各地のオーケストラで上演される。東京公演のオフィシャルレポートが到着した。


ファンタジア」が1940年に公開されてから既に80年以上の時が経った(「ファンタジア2000」から考えても四半世紀近くということになり、そのことにも驚かされる)。公開当時は喝采より戸惑いの方が多かったというが、「傑作」と迷いなく言い切れる現代においては、時代と共にディズニーアニメーター、演奏家達が築き上げたレガシーはしっかりと受け継がれていると言っていいだろう。2000年に公開された「ファンタジア2000」にも、ディズニーの想像/創造性がスタッフに息づいていることが分かるし、1990年代ルネッサンスを成し遂げた彼らの自信や勇気といったものもスクリーンから感じ取ることができる。

なぜこれだけの年月が経っても「ファンタジア」は唯一無二の作品であるのか、この「ライブオーケストラ・コンサート」にその答えが隠されていた。3月24日、渋谷のNHKホールで開催された本公演、指揮は佐々木新平、そして演奏は東京フィルハーモニー交響楽団が務めた。

タイトル通り、ライブでオーケストラの演奏と共に物語は進んでいく。プログラムは「ファンタジア」、「2000」それぞれから4篇が選ばれた。ベートーヴェンの「運命」「田園」と続き、「くるみ割り人形」「魔法使いの弟子」「火の鳥」…と、純粋にオーケストラのコンサートとしてもこれほど名曲が並ぶプログラムは圧巻のひと言。そして、眼の前では「ファンタジア」が繰り広げられる。そういうコンサートだと頭では分かっていても否応なく客席には熱気が伝播していく。そして、繰り返すがこれはライブ、つまり佐々木と東京フィルが創り上げるこの日にしか響くことのない音楽である。オリジナルの映画は、もちろんストコフスキー指揮フィラルフィア管(ファンタジア)、レヴァイン指揮シカゴ響(2000)といった演奏と緊密に協奏しており、それこそが「ファンタジア」の重要な要素であるが、本来このコンサートのようにライブの演奏と共に映像に身を委ねることによって「ファンタジア」は完成するのではと思い至った。そして東京公演を皮切りに、このコンサートは各地で、その街で長い年月をかけて活動してきたオーケストラの演奏によって上演される。クラシックという伝統を繋いでいく音楽をディズニーが選択しなければ、これほどまでに愉しいコンサートに巡り合うことはできなかっただろう。

「田園」におけるギリシャ神話の描写は公開当時に異論も出たというが、ベートーヴェンの頭の中ではこうイメージしていたのではないか?というほどに活き活きとしているし、「くるみ割り人形」「時の踊り」でのバレエ表現もやはり素晴らしい。「2000」における映像に込められた生命への賛歌という共通したテーマも真に迫るものがある。それに何といってもミッキーマウスドナルドダックの揃い踏み!本編ラストの「威風堂々」におけるドナルドの千両役者ぶりは必見だ。ここでしか体験できない「ファンタジア」と出会うことができた。

取材=小崎 紘一 写真=松橋晶子