「スタンピー」の愛称を持つ枯れかけの桜がアメリカの首都、ワシントンのボトマック川沿いにある。地面は水にさらされ幹も朽ちかけているのに、それでも春になると残された枝に美しい花を咲かせる姿が多くの人に愛されてきた。
ポトマック川周辺に植えられている桜は、明治時代、1912年に日米親善の証として日本から贈られたものだ。
だがアメリカに春の到来を告げてきた桜たちは、気候変動による水面上昇を防ぐための防波堤修復工事のために、2024年5月以降150本以上が伐採される。老木スタンピーもそのうちの1本だ。
今、スタンピーとの別れを惜しむ人々が、最後の満開の姿を写真に収めるため、大勢やってきている。
【画像】 防波堤修復のための護岸工事のため158本の桜を伐採
ポトマック川沿いにある池タイダルベイスン周辺は、春になればたくさんの桜が花を咲かせる名所だ。
だが足元に目を向ければ、気候変動による水面上昇によって、ポトマック川の水が氾濫するという厄介な事態になっている。満潮時に1日2回発生する洪水は、遊歩道だけでなく、桜の木の根まで水浸しにしてしまう。
1億3300万ドルが投じられる3年がかりの護岸工事は、こうした状況に対応するためのものだ。
国立公園局の広報官マイク・リタースト氏は、「訪問者の利便性を高めることは、私たちにとってとても大切なことです。ですが何よりも、桜のためなのです。桜は今、1日に2回も根が水浸しになってしまいます」と説明する。
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枯れかけのスタンピーはまだどうにか生きているが、それでも根本的な原因を解決しない限り、やがてたくさんの桜が失われてしまうだろう。
May Stumpy’s memory forever be a blessing. pic.twitter.com/ZQefqRNNjl
— Matt Blitz (@WhyBlitz) March 17, 2024
計画では、160本の桜が伐採され、工事終了後に300本の桜が植えられる。
伐採された桜は、マルチング材に加工されてまかれ、生き残った桜の根を人の往来から守り、やがては分解されて木々の養分になる。
朽ちかけても花を咲かせる「スタンピー」に別れを惜しむ人々
「ナショナル・チェリー・ブロッサム・フェスティバル」は、首都ワシントンの観光シーズンの始まりを告げる春の風物詩だ。今年はコロナ禍以来最多となる150万人の来訪が予測されている。
そこにある枯れかけのスタンピーは、老木ながら健気にも花を咲かせる姿が、コロナ禍で塞ぎこむ人たちの間で人気となり、キャラクターやTシャツやカレンダーなどが作られるようになった。
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Stumpy put on a great show yesterday. pic.twitter.com/bmN8ljxO5z
— Kevin Ambrose (@dcstormchaser) March 20, 2024
今年スタンピーが最後の春を迎えるというニュースは人々に衝撃を与え、別れを惜しむ人たちがたくさん訪れ、花などを添えているという。
Everyone lining up to snap Stumpy before he goes pic.twitter.com/eo77J2HGz7
— Joe Flood (@joeflood) March 17, 2024
スタンピーの存続を願う人々は、Change.orgで署名活動を行っており、「スタンピーを国立植物園に移植し、その文化的及び歴史的重要性を保ちながら、保護された環境で栄えさせるべきだ」と呼びかけている。
一方でアメリカ国立公園局(NSP)は、スタンピーを含む撤去される木の移植は実行が難しいと述べている。地面から根を取り除くことは、近くにある撤去されない木の根を傷つけてしまうリスクを伴うからだ。
そこでNSPは、国立樹木園(The National Arboretum)と協力し、スタンピーの木の遺伝子採取し、将来的にクローンを植え直す計画を進めているそうだ。
多くの人に愛されていたスタンピー。もしかしたらそのクローンがワシントンを彩る日が来るのかもしれない。
Stumpy presidential visit pic.twitter.com/j6ERk6mI2L
— Spencer Allan Brooks (@SpencerSays) March 22, 2024
References:Stumpy the cherry blossom on chopping block as DC to remove trees | Washington DC | The Guardian / Popular Cherry Blossom Named Stumpy Faces Removal in Washington, D.C. / written by hiroching / edited by / parumo
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