テーマとして“好奇心の入口、世界への出口”を掲げ、「作品創造」、「京響プログラム」、「伝統芸能の継承」、「ロームシアター京都セレクション」、「ラーニング」、「コミュニティ」の6つの事業カテゴリごとに多彩な作品をプロデュース、および招聘していくことが発表された。

作品のプロデュースや国内外のアーティスとの協働により、ロームシアター京都を創造の場として活かした事業を展開する「作品創造」では6作品をプロデュース。「Sound Around 004」は、音楽を軸に、ジャンルや固定観念にとらわれない表現活動を行うアーティストによるパフォーマンスシリーズの第4弾。聴くことの創造性をユーモラスに追求し、パフォーマンスやインスタレーションなどの多岐にわたる作品を発表してきた荒木優光が「げんし」をテーマにした作品を創造する。荒木は「音と音楽の境界を行き来するような、もしくはその境界の上で、パフォーマンスの時間を体験するようなことになれば」と意気込みを語る。

荒木優光(photo:Kai Maetani)

2024年度全国共同制作オペラでは歌劇『ラ・ボエーム』を上演。2024年末での引退を宣言している指揮者・井上道義、井上が深い信頼を寄せる舞踊家の森山開次(演出)のコンビで送る。

また劇場のレパートリー演目として時代を超えて末長く上演されることを念頭にプロデュースする「レパートリーの創造」では、人間の生と性に関わる違和感を大胆かつ緻密に描く市原佐都子/Qの新作を発表する。

市原佐都子 (c) Bea Borgers

このほか、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト XXI ヴェルディ:歌劇『椿姫』、高谷史郎(ダムタイプ)がロームシアター京都にて発表した『Tangent(タンジェント)』のエストニア公演、スコットランドのアーティスト、アンディ・マンリーによるこども向けのノンバーバル演劇公演『ペック』の全国公演などがラインアップされている。

「京響プログラム」では、こどものためのオーケストラ入門として人気の「オーケストラディスカバリー 2024」、「京都市交響楽団0歳からの夏休みコンサート」(、新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室2024 『ドン・パスクワーレ』など、若い世代に音楽やオペラに親しんでもらうためのプログラムがラインアップ。ほかにも、京都市交響楽団と異ジャンルのアーティストのコラボレーションによって、オーケストラの新たな魅力を発見する人気シリーズでは、小澤征爾も認めたジャズピアニストの大西順子を迎えた「大西順子 meets 京都市交響楽団」をお届けする。

オーケストラディスカバリー 2024」より、左から)角田鋼亮(ⒸHikaru Hoshi)、鈴木優人(ⒸMarco Borggreve)、横山奏(Ⓒ平舘平)、松井慶太(ⒸAyase Shindo)

「ロームシアター京都セレクション」では、ヨーロッパで注目を集めるフランスの若手振付家ノエ・スーリエの振付による『The Waves』、RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』、第67回岸田國士戯曲賞最終候補となった兼島拓也作・田中麻衣子演出による『ライカムで待っとく』、松尾スズキの代表作を台本をリニューアルして贈る『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』、日本屈指のパーカッショニスト加藤訓子が率いる「スティーヴ・ライヒプロジェクト」ほか、若手アーティストの発掘と育成を目的に、ロームシアター京都と京都芸術センターが協働して行う創作支援プログラム“KIPPU”選出作品など、確かな実力を持った作家・演出家による話題作が数多く上演される。また、「ロームシアター京都セレクション」の一環として、10月には同劇場ほかで「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024」も開催される。

“KIPPU”2024年度参加アーティスト:プロトテアトル第12回本公演『悲しき玩具 Bang Bang』(2023年)
“KIPPU”2024年度参加アーティスト:J_Dr. Holiday Laboratory『脱獄計画(仮)』(2023年)Ⓒマコトオカザキ
「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024」ロゴ

ほかにも寄席や薪能といった伝統芸能にフィーチャーした「伝統芸能の継承」事業では、木ノ下歌舞伎主宰で、古典芸能/伝統芸能に関する執筆、講座など多岐にわたる活動が注目されている木ノ下裕一を迎えての対談企画「~芸能の在る処~」を開催する。

木ノ下裕一

演劇、音楽、パフォーマンスに伝統芸能、そして若い世代に向けた教育プログラムなど、幅広い層が楽しめるプログラムが目白押しとなっており、「好奇心の入口、世界への出口」というテーマにふさわしいラインアップと言えそうだ。

取材・文:黒豆直樹

ロームシアター京都2024年度自主事業ラインアップ

【作品創造】
Sound Around 004

多彩な出演者と劇場空間をフルに活かしたパフォーマンスで「音 - 音楽」の境界を探る
2024年6月29日(土)・30日(日)<ノースホール>

■2024年度全国共同制作オペラ 歌劇『ラ・ボエーム』
(全4幕、イタリア語上演、日本語・英語字幕付、新制作)

作曲ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・ジャコーサ、ルイージ・イッリカ
指揮:井上道義
演出・振付・美術・衣裳:森山開次
管弦楽京都市交響楽団
合唱:きょうと+ひょうごプロデュースオペラ合唱団、京都市少年合唱団
2024年10月6日(日)<メインホール>

レパートリーの創造 市原佐都子 /Q 新作公演

人間の生と性に関わる違和感を大胆かつ緻密に描く、次代を牽引する劇作家・演出家、市原佐都子の新作
2025年2月中旬<ノースホール>

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト XXI ヴェルディ:歌劇「椿姫」ROHM CLASSIC SPECIAL

演目:歌劇「椿姫」(全3幕、イタリア語上演、日本語字幕付)
作曲:ジュゼッぺ・ベルディ
創設者/永久音楽監督:小澤征爾
指揮:ディエゴ・マテウス(小澤征爾音楽塾首席指揮者)
演出:デイヴィッド・ニース
装置・衣裳:ロバートパージオーラ
管弦楽小澤征爾音楽塾オーケストラ

出演:
ヴィオレッタ・ヴァレリー役:ニーナ・ミナシアン
アルフレード・ジェルモン役:カン・ワン
ジョルジョ・ジェルモン役:クイン・ケルシー 他

2025年3月14日(金)・16日(日)<メインホール>

レパートリー作品 高谷史郎(ダムタイプ)『Tangent(タンジェント)』エストニア公演 欧州文化首都タルトゥ 2024
※ロームシアター京都が製作した作品の他地域での上演

ロームシアター京都レパートリーの創造で生みだされた高谷史郎(ダムタイプ)8年ぶりの新作が早くも世界へ
2024年6月4日(火)・5日(水)
会場:ヴァネムイネ劇場(エストニア

アンディ・マンリー 『ペック』 全国ツアー
※ロームシアター京都が製作した作品の他地域での上演

“とりのうたごえ” にさそわれて、見て聞いて楽しむ、こどもとおとなのためのノンバーバルパフォーマンス
2024年7月初旬~8月8日(木)
会場:KAAT 神奈川芸術劇場、高槻城公園芸術文化劇場、 演劇 愛知県芸術劇場 他

【京響プログラム】
オーケストラディスカバリー 2024

今年で16年目。こどものためのオーケストラ入門として人気を博すシリーズ
2024年6月16日(日)、9月1日(日)、12月1日(日)、2025年3月30日(日)<メインホール>

■新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室 2024『ドン・パスクワーレ』

悲喜こもごものドタバタ劇! ドニゼッティの代表作を
2024年10月29日(火)・30日(水)<メインホール>

クラシック × ジャズ『大西順子 meets 京都市交響楽団

指揮:角田鋼亮
出演者:大西順子(ピアノ)、井上陽介(ベース)、吉良創太(ドラムス)、京都市交響楽団
2024年12月21日(土)<メインホール>

伝統芸能の継承】
■市民寄席

第370回:2024年5月21日(火)
(番組)
道具屋』月亭希遊
『餅屋問答』林家卯三郎
『質屋芝居』桂米左
『鹿政談』笑福亭福笑

第371回:2024年7月23日(火)
第372回:2024年9月29日(日)
373回:2024年11月26日(火)
第374回:2025年1月26日(日)
<サウスホール>

■第73回京都薪能 ―光源氏の夢―

2024年6月1日(土)
観世流能  『半蔀』(シテ)松井美樹
金剛流能  『葵上』(シテ)金剛永謹
大蔵流狂言 『おばんと光君』(シテ) 茂山逸平
観世流能  『土蜘蛛』(前シテ) 片山伸吾(後シテ)橋本忠樹   

2024年6月2日(日)
観世流能  『須磨源氏』(前シテ)浦部幸裕 (後シテ)河村晴道
観世流能  『野宮』(シテ)青木道喜
大蔵流狂言 『ひめあらそい』(シテ)茂山千之丞
金剛流能  『土蜘蛛』(前シテ)廣田泰能 (後シテ)豊嶋幸洋

会場:平安神宮特設能舞台

※雨天の場合はメインホール

■能の世界へおこしやす ―京都薪能鑑賞のための公開講座―

京都薪能を通じて能と狂言の世界を楽しむための出演者による公開レクチャ
2024年6月1日(土)・2日(日)<メインホール>

■能楽チャリティ公演 ~祈りよとどけ、京都より~

(第1部)
半能『屋島』(シテ)橋本忠樹
狂言『口真似』(シテ)茂山 茂
能『羽衣 和合之舞』(シテ)杉浦豊彦

(第2部)
能『花月』(シテ)河村浩太郎
狂言『梟』(シテ)茂山忠三郎
半能『融 酌之舞』(シテ)片山九郎右衛門

2024年8月22日(木)<サウスホール>

■対談企画 ~芸能の在る処~(全3回)<ノースホール>

木ノ下歌舞伎主宰で、古典芸能/伝統芸能に関する執筆、講座など多岐にわたる活動が注目されている木ノ下裕一による対談企画

【ロームシアター京都セレクション】
■ノエ・スーリエ『The Waves』

振付:ノエ・スーリエ
出演:ステファニー・アムラオ、ジュリー・シャルボニエ、アドリアーノ・コレッタ、船矢祐美子、ナンガリンヌ・ゴミス、ナン・ピアソン
パーカッション:トム・ドゥ・コック、ゲリット・ヌレンス(イクトゥス)
音楽:ノエ・スーリエ、トム・ドゥ・コック、ゲリット・ヌレンス
2024年4月5日(金)<サウスホール>

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』

音楽+コンセプト:坂本龍一
ヴィジュアル・デザイン+コンセプト:高谷史郎
出演:田中泯(ダンサー)、宮田まゆみ(笙奏者)、石原淋(ダンサー
能管:藤田流十一世宗家 藤田六郎兵衛(録音:2018年6月)
2024年4月27日(土)・28日(日)<メインホール>

■KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ライカムで待っとく』

作:兼島拓也
演出:田中麻衣子
出演:中山祐一朗、前田一世、佐久本宝、蔵下穂波、小川ゲン、神田青、魏涼子、あめくみちこ
2024年6月7日(金)・8日(土)<サウスホール>

COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024 ―歌舞伎町黙示録―』

作・演出:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ黒木華、荒川良々、岸井ゆきの、皆川猿時、松本穂香
伊勢志摩、猫背椿、宍戸美和公、内田慈、町田水城、河井克夫、
菅原永二、オクイシュージ、松尾スズキ、秋山菜津子
加賀谷一肇、石井千賀、石田彩夏、江原パジャマ、大野明香音、久具巨林、橘花梨、友野翔太、永石千尋、松本祐華、米良まさひろ、山森大輔
ミュージシャン:山中信人(三味線
2024年8月9日(金)~8月15日(木)<メインホール>

■加藤訓子プロデュース『スティーヴ・ライヒプロジェクト kuniko plays reich ll / DRUMMING LIVE』

出演者:KUNIKO KATO & MUSICIANS
2024年8月25日(日)<サウスホール>

■ロームシアター京都×京都芸術センター U35 創造支援プログラム“KIPPU”

2024年度参加アーティスト

①プロトテアトル第13回本公演『ザ・パレスサイド
2024年9月13日(金)・14日(土)・15日(日)<ノースホール>

② Dr. Holiday Laboratory『想像の犠牲』
2024年12月13日(金)~12月15日(日)<ノースホール>

■KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2024

2024年10月5日(土)~10月27日(日)
会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO 他

■ラシッド・ウランダン『Corps extrêmes ー身体の極限で』

現代サーカスとコンテンポラリーダンスが融合!アスリートとアーティストによるアンサンブル
2024年11月2日(土)・3日(日・祝)<サウスホール>

マルコ・ダ・シウヴァ・フェレイラ『Carcaça』

ポルトガルの若手振付家マルコ・ダ・シウヴァ・フェレイラの初来日公演
2024年11月15日(金)・16日(土)<サウスホール>

ドレスデンフランクフルト・ダンスカンパニー
ヤニス・マンダフニス&マノン・パラン ソロダンス『SCARBO』

ドレスデンフランクフルト・ダンスカンパニーの芸術監督に就任した、ギリシャ出身の振付家ヤニス・マンダフニスが振付
2024年12月21日(土)・22日(日)<ノースホール>

トリコ・A『穴』

脚本・演出:山口茜
出演:大石英史、おぐりまさこ(空宙空地)、佐々木ヤス子(サファリ・P)、関戸哲也(空宙空地)、長沼航(ヌトミック/散策者)、福谷圭祐(匿名劇壇)、三田村啓示
2025年3月28日(金)~3月30日(日)<ノースホール>

ラーニング
■劇場の学校

「演劇」「ダンス」「メディア表現」のコースを設け、国内外で活躍するアーティスト等が講師を務める
2024年7~8月予定

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト XXI

子どものためのオペラ ヴェルディ : 歌劇「椿姫」より ローム クラシック スペシャル
京都府内の小学生 6 年生を対象にした学校単位での招待公演
2025年3月<メインホール>

■舞台芸術プロデュース講座~演劇・ダンス編~

地域の舞台芸術のプロデュース/企画制作領域の専門人材の育成プログラム
2024年11月~2025年1月予定<ロームシアター京都、京都芸術センター 他>

■ロームシアター京都 × 京都市ユースサービス協会連携事業
未来のわたし - 劇場の仕事 -

15~30歳の若者を対象に、ロームシアター京都を職業体験の場として活用した事業 通年

■リサーチプログラム(通年※2025年3月に最終報告会を予定)

メンター:吉岡洋(京都芸術大学文明哲学研究所教授)、若林朋子(立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科特任教授、プロジェクト・ コーディネーター)

【コミュニティ】
■ホリデーパフォーマンス

音楽をはじめ、美術や演劇など様々なジャンルのパフォーマンスを無料で楽しめるシリーズ
2024年7月、11月、2025年2月に展示、パフォーマンス予定<パークプラザ3階共通ロビー、プロムナード 他>

■プレイ ! シアター in Summer 2024 ステージプログラム
ミッドナイトシアター『はじめての一歩』from アイスランド

こどもとおとなが一緒に楽しむ、セリフのない音楽劇
2024年7月20日(土)・21日(日)<ノースホール>

■プレイ!シアター in Summer 2024 オープンデイ

家族や友達と楽しめる、ロームシアター京都の夏休み恒例イベント
2024年8月12日(月・休)~14日(水)・17日(土)・18日(日)<全館>

■プレイ!シアター in Summer 2024 京都市交響楽団 0 歳からの夏休みコンサート

指揮:和田一樹
管弦楽京都市交響楽団
演出:ごまのはえ
絵本:tupera tupera
2024年8月17日(土)<メインホール>

■全京都洋舞協議会 65 周年記念公演

京都が誇る振付家・故石井潤の創作バレエの他、新国立劇場バレエ団のプリンシパルをゲストに迎えるクラシック古典作品など
2024年9月1日(日)<サウスホール>

■OKAZAKI PARK STAGE 2024

ロームシアター京都の中庭「ローム・スクエア」を会場にした恒例イベント
2024年9月28日(土)~10月27日(日)予定<ローム・スクエア>

■ユスカル ! ~若者文化市~ 2024

“若者のミカタ”をテーマに、若者の多様な営みを文化と捉え、イベントを通じてその活動の一端を知ってもらうことを目的とした若者文化発信イベント
2024年11月3日(日・祝)<ローム・スクエア 他>

■ロームシアター京都 × 京都市文化会館連携事業「シアターデビュー !」促進プログラム
ナイブニ人形劇場『こいぬと機関車CHOO.CHOO.WHISTLE.WOOF!―』from チェコ

アンサンブルによる良質な人形劇をつくり続けるチェコの「ナイブニ人形劇場」の作品

・2024年12月7日(土)
会場:京都市西文化会館ウエスティ 創造活動室

・2024年12月8日(日)
会場:京都市東部文化会館 創造活動室

■となりの劇場 ~シニア向け演劇ワークショップ~

演出家のごまのはえを講師に迎え、演劇の手法を使ったワークショップを行う
通年
会場:京都市内の高齢者施設

■アセンブリープログラム

劇場文化を育むための入り口として、気軽に参加できるワークショップや、多様な角度から同時代の社会を知り、捉え直すた めのトピックを挙げ、それにまつわるゲストを招くシリーズ企画「“ いま ” を考えるトーク」などのプログラムを開催

■WEB マガジン「Spin-Off(スピンオフ)」の発行

■音楽総合体験施設ミュージックサロン(パークプラザ3階)の運営

ロームシアター京都 プログラムディレクター・小倉由佳子