大谷とは「盟友」と言える関係だった水原氏。その知名度と貢献度は通訳業界でも屈指だった。(C)Getty Images

 通訳者としての実力は確かだった。現地時間3月20日に違法賭博に関与した疑いでドジャースから解雇された大谷翔平の専属通訳であった水原一平氏である。

 この問題は、水原氏が米連邦政府の調査を受けている南カリフォルニアブックメーカー(賭け事の取扱業者)にギャンブルで負債をつくり、大谷の銀行口座から少なくとも450万ドル(約6億8000万円)を送金していたのが発端だ。

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 ふたりは、球界で知らない人がいないほどの蜜月の関係にあった。水原氏は日本ハム球団の通訳時代から縁を結び、大谷がポスティングエンゼルスに移籍した際にともに渡米。二刀流の進化を間近で支え、一介の通訳と選手の関係をこえた“盟友”といえる関係だった。

 米球界内でも認知度は高かった。国内でありとあらゆる情報を網羅する米スポーツ専門メディア『The Athletic』の上級記者であるブリタニー・ジローリ氏は「我々がMLB通訳たちについて知っていること。給与、仕事上での良い点と悪い点、そしてイッペイ・ミズハラについてさらなる情報」と銘打った記事を掲載し、水原氏の“仕事人”ぶりを記した。

 日本人の通訳たちはお互いを知り合っていると論じるジローリ氏は、同業務に携わるアジア人の通訳者の間で水原氏について、「彼(水原氏)は別格で、比較的に人に知られない職業の顔が見えるようにした人物だ」と強調。そして、ダルビッシュ有の通訳を務めている堀江慎吾氏のコメントとして「イッペイはかなりあちら(日本)では有名だ」と紹介し、裏方の域を越えた知名度を伝えている。

「ミズハラに一度会ったことのあるカマダは言った『WBC前に彼のインスタグラムを見た。写真を3枚ぐらい投稿していて、フォロワーが3万人あたりだった。WBCの後はフォロワーが30万人あたりになっていた。彼は間違いなく有名だ』」

 また、「ミズハラはよくファンからサインを頼まれ、彼の妻はeBAY(大手オークションサイト)で彼がサインしたボールが売りに出されているのを見つけたと言っていた。それは他の通訳ならば普通のことではない」と水原氏の存在感の大きさを論じたジローリ氏は、時にキャッチボールやストレッチの相手を務めるなど、グラウンド内外での大谷に対する貢献度の高さも指摘。「ミズハラはただの通訳ではない。選手との良好な関係を表す証拠として、ゆるぎない信頼に基づいて築かれている」と振り返った。

 エンゼルス時代に大谷が薫陶を受けた名将ジョー・マッドンをしても「通訳としての彼の功績があまり認められることはないが、イッペイは本当に素晴らしい仕事をしてくれていた」と言わせた水原氏。彼の通訳者としての功績は大きく、広く認知されていただけに、スキャンダルに対する反響はしばらく収まりそうにない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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