東急バス初となる連節バスがまもなく運行を開始。全長約18mの巨体が走るのは、横浜のごく普通の住宅街路線です。しかし、その“ごく普通の路線”に導入することこそが、なかなかのチャレンジになりそうです。

東急初の連節バス、運行開始

東急バスが2024年4月1日から、同社初の連節バス「タンデムライナー」の運行を開始します。それに先立つ3月25日、同社青葉台営業所で記念式典が行われました。

連節バスは車体が2台つながったバスで、全長約18m、輸送力は一般的なバスの約1.8倍です。投入されるのは東急田園都市線 青葉台駅と日本体育大学の横浜・健志台キャンパスを結ぶ日体大線「青61系統」です。

「学生の方もお住まいの方も多い路線で、これからも増える見込みがあります。しかし、バスの乗務員不足は当社も例外ではありません」東急バスの古川 卓社長はこう話します。路線バスをめぐる状況がさらに厳しさを増すなか、同社は横浜市とともに利便性を維持する取り組みを模索し、輸送力の大きな連節バスを6台、日体大線に導入することになりました。

今回は周辺路線も再編され、日体大線の便数を確保しつつ、より“奥”へ向かう路線については、日体大での乗り継ぎを基本とする形態になります。「乗り換えの手間は増えますが、本数は増えます。お住まいの皆様にもご理解いただきました」と古川社長。日体大は新たにバスの待合スペースを整備するほか、横浜市連節バス運行に必要な歩道の切り下げ、バスベイ(停車スペース)の拡張といった道路の走行環境整備を行っています。

なお、「タンデムライナー」の外観は東急田園都市線の2020系電車がモチーフ。これは、青葉台駅での乗り継ぎ利用も多いことから、「鉄道との親和性」を演出しているもので、「バスの座席仕様も電車に合わせているんですよ」(古川社長)ということでした。

式典の後には、青葉台営業所から駅、日体大までのあいだで試乗会が行われました。乗ってみると、今回の連節バスがなかなかチャレンジングな取り組みであることもわかりました。

住宅街で「ド迫力の左折」が!

連節バスは多くの場合、都市部の広い幹線道路を走る基幹的な系統として導入されていますが、今回は駅と住宅街を結ぶ「いつものバス路線」です。その環境に連節バスを走らせることこそが、ある意味、異例の取り組みといえます。

まず青葉台営業所から青葉台駅までの回送ルートは1本道ですが、その「環状4号線」はとにかく交通量が多く、バスもダンゴ状態で連なって走る、狭い2車線道路です。しかもアップダウンが多く、全長18mの巨体で坂道発進を頻繁に行うことになります。

青葉台駅を出発後も長い坂道が続きますが、住宅街のルートは環4よりも余裕がありそうな2車線道路です。各バスベイは、連節バスが収まり、その横を一般車が通り抜けられるように拡張されているとのこと。

ただ、その住宅街の整備された道路の先に“難関”があります。日体大方面へと曲がる「すみよし台電話局前」交差点です。ここは90度よりも鋭角な右左折が必要な交差点となっていて、日体大方面へ右折するとすぐ急な下り坂になり、道は一気に狭くなります。

反対に青葉台駅方面へ左折する際はもっと進入角が鋭角です。坂道発進、さらに曲がったらすぐにバス停という状況で、左折の際は交差点の反対側近くまでいったん直進し、そこから一気にハンドルを切っていきます。

この交差点は、左折した先で停止している対向車に接触しないよう、停止線の位置を下げたそうです。クルマを運転する際は停止線の位置を越えないよう意識すべきポイントでしょう。

今回の試乗会では、連節バスの「一般路線バスと変わらない走行性能」が披露されましたが、それでも一定の習熟を要する環境であることは間違いないでしょう。逆にいうと、この「普通のバス路線」での運行は、連節バスの導入条件をより拡大させるひとつの契機になるかもしれません。

東急バス「タンデムライナー」(乗りものニュース編集部撮影)。