夫の顔が黄色い!?10日ほど経ち、どんどん黄色くなっていく肌。これは「黄疸反応」では?と病院を受診した。初診で「胃炎」といわれたが、黄疸は酷くなる一方。セカンドピニオンサードピニオンを経て出た診断結果は「末期のすい臓がん」だった。「だめんず・うぉ~か~」の著者、漫画家・倉田真由美さん(@kuratamagohan) が描く「夫のすい臓がんが判明するまで:すい臓がんになった夫との暮らし」を紹介したい。

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■突然の黄疸そして余命宣告。「悪ければ半年、もって1年」

漫画家・倉田真由美さんの夫・叶井俊太郎さん(享年56歳)は、2024年2月16日に逝去した。すい臓がんが発覚したのは、2022年のこと。日に日に肌の色が黄色くなっていく夫を見て、倉田さんは受診を勧めた。

最初の総合病院で診断されたのは「胃炎」。日に日に黄色くなっていく肌や黄疸と関連のない診断だったことが気にかかり、別の中規模総合病院にセカンドオピオン。そこでは、胆石や肝炎を疑われたが検査結果が出ず、精密検査が必要だと国立病院を紹介された。

最初の病院では「もし、黄疸だったら末期で死にかけの色ですよ」と医師は言った。激しい黄疸は「誰もが違和感を覚える色、というか。『普段からこういう肌色です』というのはあり得ないほどの黄色さでした」と、倉田さんは話す。

3つ目の病院で、すい臓に4センチを超える大きさのがんが発覚した。「悪ければ半年、もって一年」と余命宣告を受けた。激しい黄疸の理由がはっきりした瞬間だった。

初診の胃炎という診断を信じてしまえば、「胆管が詰まったまま胆管炎で死んでいたかもしれません」と話す。倉田さんがセカンドピニオンを強く勧めたのは「黄色さが増すばかりで治らなかったのとネットで調べて黄疸に違いないと強く疑っていた」と、振り返る。

すい臓がんは発見が難しいと言われている。叶井さんは糖尿病などの持病も全くなかったが、黄疸のほか、背中の痒みや下痢が続いていた。宣告後も変わらぬ生活をしていたが、1年半が経過し、倉田さんは「すい臓がんの告知を受けた夫。いわれた余命を超えて生きる夫との暮らし」というタイトルで漫画投稿を始める。

「病気が判明してから1年以上、周囲には秘密にしていました。日常が変わってしまうのが怖かったからです。でも、夫が出した本「エンドロール!末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論」をきっかけに世間に知られるようになりました。であれば、描きたいこと、皆に知らせたいことは山ほどあります。夫が亡くなった今も、私の気持ちの大部分を占めるのは夫のことです。描かずにはいられないし、これからも描いていきたいと思っています」(倉田さん)

読者からは「重いテーマだけど重すぎず軽すぎないバランスで、非常に読みやすい」などのコメントが届く。倉田さんが描く上で心がけたことを聞くと「『現実を損ねない』『嘘や過ぎた誇張はしない』ということです。夫に関する大事な話はできるだけ現実に沿って描いています。重すぎないのは、夫のキャラクターのおかげです」と話す。

すい臓がんだとわかってからの闘病生活は、「夫があまり変わらないでいてくれたので、つらくとも幸せに過ごせました。夫がいた時間は、闘病中も含め、私にとって人生の宝です」と、大切な時間を振り返ってくれた。

叶井さんは余命宣告を受けたが標準治療を受けず、仕事に没頭した。1年半が経過した2023年も元気だった。しかし、年が明けて一気に進行が進み、自宅で静かに息を引き取る。まだ喪が明けないなか取材を受けてくれた倉田さんには感謝しかない。

「もう少し元気になったら、また続きを描いていきたいと思います。夫の生き方、人生の選択の仕方が誰かの参考になったりしたらうれしいです」と、続編の意向も話す。本作はKindleで無料公開中。闘病中の食事にまつわる話も読むことができる。

取材協力:倉田真由美(@kuratamagohan)

サードオピニオンでようやく病名が判明。激しい黄疸の正体は「すい臓がん」だった/画像提供:倉田真由美(@kuratamagohan)