「不動産投資」を始めてみたいとは思っているものの、どのようなタイプの物件に投資すればよいかわからないという人は多いでしょう。そこで本記事では、不動産鑑定事務所代表の浅井佐知子氏による著書『0からわかる! 不動産投資超入門』(ソシム)から一部抜粋し、現物不動産の「区分マンション」「戸建て」「アパート」それぞれの賃貸経営におけるメリット・デメリットについて詳しく解説します。

登場人物

浅井佐知子先生…不動産鑑定士で不動産投資コンサルタントをしている、不動産のスペシャリスト。初心者にもわかりやすく、不動産投資について解説。(以下、浅井)

山田さん・会社員(30代)…株をやっているが仕事が忙しく、株価のチェックがおっくうに。不動産投資をはじめて、趣味に使うお金がほしいと考えている。(以下、山田)

鈴木さん・会社員(30代)…浅井先生の本を読んで、不動産投資に興味を持った。貯金が貯まってきたので、将来のために副収入がほしいと考えている。(以下、鈴木)

「区分マンション」は買った後の管理が楽

浅井:現物不動産の1つに、区分マンションがあります。郊外にある中古の物件なら安いものが多いので、少額からはじめたい人に向いています。

山田:中古の物件を買うんですか?

浅井:基本的には、中古の物件をローンを組まずに現金で購入します。購入後の管理が楽なので、忙しい人にも向いています。

山田:どうして管理が楽なんですか?

浅井:管理組合を通じて、建物の管理をすべてマンションを管理する会社にまかせることができるからです。そのかわり、管理費修繕積立金を毎月支払います。

鈴木:安くて楽だけど、そのぶん費用がかかるということですね……。

浅井:きちんとシミュレーションをすれば、費用がかかっても、安くて利益になる物件を選ぶことができます。

 

区分マンションのメリット

●管理の手間がかからない

建物の共用部分など、自分が所有している部屋以外の部分は、すべてマンションの管理会社が管理する。建物に関する管理が不要なので、ほかの現物不動産よりも楽。

●比較的価格が安い

区分マンションは、規模が小さいのでほかの現物不動産よりも安く購入できる。地域などによって価格は変わるが、100万円台の物件もある。

●税金が安い

土地がほかの部屋の所有者と一緒に所有する「共有持分」になっているため、税金は安い。持っている部屋の面積の割合によって、支払う金額が決まる。

区分マンションのデメリット

●管理費がかかる

建物の管理をまかせるので費用がかかる。建物が古いほど、オートロックやエレベーターなどの設備が整っているほど費用は高くなる。好きなタイミングで塗り替えや建て替えはできない。

●空室になったときの収入への影響が大きい

持っている戸数が少ないと、空室になったときに収入への影響が大きくなる。また、一部屋ずつ購入するので、手間がかかり、投資不動産の数を増やしにくい。

「戸建て」は少額で始められて利回りが高い

浅井:戸建ても現物不動産投資の対象です。

山田:戸建ては高そうですね……。

浅井:100万円くらいから買えるんです。それに、利回りが高いんです。

鈴木:そうなんですか? 家を建てるときはもっとかかりますよね。

浅井:中古なので、安いんです。戸建ては融資を受けにくいので、基本的に中古で少額のものを現金で購入します。少しずつ不動産を増やしたい人に向いています。

山田:でも、中古で安いってことは、建物がボロボロだったりするんじゃ……。

浅井:基本的にリフォームをしてから貸し出すことになります。自分でDIYをしたり、DIY可能物件として貸し出したりすると、リフォーム費用を削減することができます。

戸建てのメリット

利回りが高くなりやすい 築年数や地域によっては、100万円程度で購入できるものも多い。安く購入できるうえ家賃を高くしやすいので、利回りが高くなる。

●安い価格で購入しやすい

相続した戸建てが売りに出ていることが多い。利益ではなく資産整理のために売りに出しているので、安く購入しやすい。

●長期間利益を得られる

基本的にファミリーが住むため、単身者向けよりも長期間入居する人が多い。そのぶん家賃収入を長く得ることができる。

●物件の売り方が豊富

投資物件として売る以外にも、自宅を探している人向けに売ることや「古家(ふるや)あり」の土地として売ることもできる。そのため、売って利益を得る場合に売り手を見つけやすい。  

戸建てのデメリット

リフォームの費用・手間がかかる

リフォームの見積もりを取ったり、リフォーム後に確認をしたり何度も現地に行ったりと手間がかかる。そのため投資する物件を増やしにくい。

●融資を受けにくい

中古の戸建ては古い物件が多いため、融資を受けにくく、基本的に現金で購入する。リフォーム費用のみ融資を受けられる場合も。

●空室時の負担が大きい

長期間住む人が多いため、空室になるとリフォームが大変。また、持っている物件が少ないと、空室になったときの収入への影響が大きい。

「アパート」ならすぐに収入を期待できる

浅井:現物不動産には、アパートマンションを一棟まるまる購入する方法もあります。

鈴木:アパートやマンションって高額なイメージです。一般の人でも買えるんですか?

浅井:マンションは高額かもしれませんね。はじめはアパートのほうがよいでしょう。融資を利用すれば買うことができます。

山田:でも、いきなり何戸もある物件のオーナーになるなんて心配です。

浅井:はじめてでも大丈夫です! 基本的に中古で購入するので、オーナーチェンジ物件になります。空室が少ない物件なら、楽に運営を開始することができます。

鈴木:すぐにまとまった収入が入ってくるし、運営も楽ってことですね!

浅井:早く戸数を増やすことができるので、家賃収入の目標金額が大きい人にも向いています。

アパートのメリット

●すぐに収入が入る

中古のアパートでは、もともと入居者がいる物件を購入するので、すぐに収入を得ることができる。また、空室がなければ入居者を募集する必要もなく、すぐに運営を開始できる。

●空室リスクを減らせる

複数の戸数を所有することになるので、空室になっても収入への影響が少ない。戸数が多いほど、空室リスクは低くなる。

●すぐに戸数を増やすことができる

1戸ずつ購入して規模を増やしていく区分マンションや戸建てに比べると、短期に戸数を増やすことができる。そのぶん収入も増やしやすい。

アパートのデメリット

●物件価格が高い

一棟をまるまる購入するので、安い物件が少ない。融資を受ける場合が多いため、入居者が決まらないときの損失が大きい。

●入居者の入れ替わりが多いと費用がかさむ

入れ替わりが多いと、リフォームや入居者募集に費用と手間がかかり、収入より費用が大きくなることも。地域や間取りを選ぶときに注意しよう。

イラスト ©長野美里

浅井佐知子

不動産鑑定士/不動産投資コンサルタント

※本記事は『0からわかる! 不動産投資超入門』(ソシム)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

(※写真はイメージです/PIXTA)