老友新聞2024年3月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)

一 席

靴底にサクサク新雪感じつつ投函終えて仰ぐ青空

岸 慶子

サクサク」というオノマトペ、「新雪」「仰ぐ青空」、これらの言葉の明るさが初春の中に居る喜びを過不足なく伝えて秀逸です。

二 席

手の甲と身をくねらせて新舞踏八十路の妻の姿艶やか

鈴木 曻

八十路の妻の舞踏する姿。妖艶ともいえるその姿に感動している夫の、心情の若々しさによって生まれた一首です。

三 席

五時ぴたり噴水とまり蘇る音は豊かに広がりゆける

佐野 磯雄

噴水が止まった瞬間、それまでしていた音が蘇り、辺り一面に広がっていくようだ、というのです。「聴こえない音」を詠んだ意欲作です。

「靴底にサクサク新雪感じつつ投函終えて仰ぐ青空」2024年3月入選作品|老友歌壇