漫画家・仲曽良ハミさんが描くノスタルジック漫画「しなのんちのいくる」。その単行本の1巻が2022年6月に、続く2巻が2023年6月に発売。さらに12月26日には3巻が発売し、話題を呼んでいる。

【漫画】「しなのんちのいくる」を読む

物語の時代設定としては昭和後期から平成初期あたり。おバカだけど憎めないヤンチャ少年「いくる」と、その姉で怒ると怖いけど実は弟思いな「しなの」。この姉弟を中心に、「あの頃」の笑いにあふれる日々を描いた漫画だ。

※発売中の書籍の中から一部を抜粋・編集し、仲曽良さんのインタビューとともにお届けする。

■タクのお母さん

過去のエピソードで大事件を起こした、いくるのクラスメイト・タクの母の目線での子どもたちの友情を描いたこの作品。タクになかなか友達ができないことを心配していた母。ある日、タクがいくるとシュウを家に連れて来たのを見て…。感動必至の心温まるエピソード。

「他人から見た子どもたちを描くうえでは、お母さんが出しゃばりすぎないようにするのに苦労しましたね。大人は『クラスみんなで仲良く』と言っちゃうんですけど、“子ども同士にだって関係値というものがあるんだよ”ってことをわかってほしかったんです。親にとっては、自分の子どもが誰かに嫌われているかもしれないと思うととてもショックなことなんですけど、大人だって全員と仲良くするというのはできないわけで。それはもちろん、タクにとっても同じなんです」

■餅まき

最近では見かける機会がぐっと減ってしまった「餅まき」は、子どもにとってはお祭りも同然だったのだとか。仲曽良さん自身も、近所に家が建つ情報を逐一チェックし、時には遠征を行うこともあったという。いくるたちも、数日分のおやつを確保するため餅まきに参戦!下見から作戦会議、フォーメーションの采配まで完璧に見えたが…?

「タクがいくるたちと仲良くしているところを描きたかったんです。餅まきって、地域のお祭りくらいの規模のイベントですけど、とにかく無法地帯で…。大人も子どもも必死だから、怪我もたくさんするんですよ(笑)。ボーナスのお餅についたお金についてですが、お餅の中にお金が入っていることもありました!」

「あるある!」と笑えて、素直な子どもたちの言葉や行動に時折ハッとさせられることもある「しなのんちのいくる」。今後も、現代にはない温かさにあふれたエピソードの数々と、いくるたちの成長が楽しみだ。

取材・文=織田繭(にげば企画)

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