コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、漫画家である稲空穂さんが自身のX(旧Twitter)にポストした『思い出のヒロイン』だ。

【漫画】老夫婦が結婚したきっかけは映画鑑賞…孫によるラストのひと言で判明した事実に「感動必至」「こんな夫婦になりたい」

同作は「COMICリュエル」(実業之日本社)で連載している『特別じゃない日』シリーズの『特別じゃない日 思い出の映画館』の一部を抜粋した作品。老夫婦が若かりし頃、観に行った映画館について回想する内容がX上で注目を集め、同ポストには6.5万件以上の「いいね」が寄せられている。

そこで作者である稲空穂さんに、同作を手がけたきっかけやこだわったポイントなどを伺った。

■映画を通じて仲を深めた「老夫婦の思い出話」

老夫婦の住む家に孫の純加が訪れ、祖母にスマホで映画が観れることを教えていた。そして、祖母は祖父にもそのことを伝えると、純加は「テレビでも観られるよ」「お母さんがケーブル買ってくれたから今度持ってくるね」と、祖母と祖父が自宅で映画鑑賞ができるように手ほどきをする。

続けて「おじいちゃん好きな映画ある?」と尋ねると、『日本沈没』『人間の証明』『ゴッドファーザー』など多くの名作を挙げていく祖父。そんな祖父に対して純加が「もしかして映画すごい好き?」と聞くと、祖父は「週に1度は行ってたな」と言って過去を振り返った。

祖父と祖母はお見合いでの出会いだった。お見合い時に「映画は1人で観ることが多いので…」と祖父が言ったことがきっかけとなり、1度も映画館に行ったことがない祖母とともに2人は映画館で『サウンド・オブ・ミュージック』を鑑賞することに。上映されると、「ミュージカル」という馴染みのないジャンルが受け入れられず退屈していた祖父は、何気なく祖母の方を見てみると…。

老夫婦の映画を通じた若かりし頃の思い出を振り返る同作には、「こんな夫婦になりたい」「ラストの孫のひと言で感動して泣いた」「とにかく素敵な話」といった反響が相次いでいる。

■今と昔とでは大きく違う映画のシステム

――『思い出のヒロイン』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

『特別じゃない日』の第四弾を制作するにあたり、テーマを「映画」にしよう、ということが決まっておりました。その中で、幅広い年代の映画との思い出を描きたいと編集担当さんと映画を調べるところから始めました。『思い出のヒロイン』で出てくる昭和の時代は、ちょうど祖父母の若かりし頃と同じでしたので、祖父母にも当時の話を聞きながら創作しました。

――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。

作中の時代と、今の映画館の違いでしょうか。当時は立ち見可能、入れ替え制など、今の映画館の仕組みとは随分違う部分が多いです。私自身、幼い頃は立ち見で映画鑑賞をしたことがあり、懐かしい気持ちで描いていました。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。

祖父と孫の会話です。過ごした時間の長さや、映画への接し方の違いを表すことができたと思っています。

――祖母と祖父の若い時の描写は当時の雰囲気が忠実に描かれているように感じましたが、何か参考にしたものがあるのでしょうか。

もともと、服飾史の本を資料として持っていたのですが、それと一緒に祖父母の昔の写真などを見せてもらいこっそり参考にしております。

――作中に『サウンド・オブ・ミュージック』などの名作のタイトルが登場しますが、やはり作者である稲空穂さんも、この中に思い入れのある作品があるのでしょうか。

実は成人するまで『サウンド・オブ・ミュージック』は前半した観たことがありませんでした。学生の頃音楽の授業で冒頭の歌唱部分を先生に見せてもらったのが最初です。

ガラリと空気が変わり、戦争の色が濃くなる後半を初めて鑑賞したときには驚いたことを覚えています。長女・リーズルの恋の行方にも衝撃を受け、鑑賞後昭和の時代の作品に漂うリアルさにしばらく浸っていたのが思い出です。

――今後の展望や目標をお教えください。

今後も『特別じゃない日』の世界を広げていければと思っています。登場人物100人越えを目指します!

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

いつも『特別じゃない日』シリーズを応援していただき本当にありがとうございます。

趣味で描き始めた『特別じゃない日』というお話が、こんなにもたくさんの方に読んでいただけることになり、毎日「特別な日」を過ごさせていただいている状況です。

今年の1月18日には第四弾『特別じゃない日 思い出の映画館』が発売となりました。読んでくださった方の大切な思い出に寄り添える作品になれるよう、今後も大切に描いていきたいと思っています。いつも本当にありがとうございます。

初めての映画鑑賞で感動している様子/(C)『特別じゃない日』稲空穂/実業之日本社