ある在日韓国人の会社経営者は、たまに通っている東京都内の高級クラブで、以前とはちょっと違う「顔ぶれ」を見かけることが増えたという。

「数人から10人以上のグループで、年齢は比較的若く、20代から40代後半ぐらい。非常に羽振りが良いのだが、歌舞伎町にいるような特殊詐欺ほど悪い雰囲気はない。特徴は外国人と日本人の混成である点だが、かといって外資や国内の大企業社員風でもない」

この経営者が、後にこの繁華街の事情通から聞いて知ったのは、彼らはオンライン賭博を運営するグループだという。外国人が、自国民向けの違法なオンラインカジノを経営しているのだが、摘発を避けるため拠点を日本に、サーバを第三国に置いているのだという。

そうしたグループが、具体的にどのような仕組みでオンラインカジノを運営しているのか、筆者には知る術もない。ただ、そうしたウェブ上の違法賭博が、北朝鮮の重要な収入源になっているのは確かだ。

かつては海外駐在の外交官の違法行為や、北朝鮮レストランの経営でせっせと外貨稼ぎを行っていた北朝鮮だが、今やその手段も多様化している。

警察庁などは26日、日本人に成り済ました北朝鮮IT技術者が、オンラインでIT関連業務を受注している疑いがあるとして、国内の関係事業者向けに注意喚起する文書を公表した。すでに米国などでは、韓国籍や中国籍に成りすました北朝鮮のIT技術者が、米国企業などの「下請け」に潜り込んでいる実態が把握されている。

一方、北朝鮮はそうした「正規のビジネス」に絡もうとするだけでなく、アングラ経済にも進出している。

韓国の国家情報院(国情院)は2月14日北朝鮮との国境に近い中国・丹東で活動している北朝鮮IT組織「キョンフン情報技術交流社」が、違法賭博サイトを製作して韓国の暴力団に販売していたと明らかにした。この暴力団北朝鮮組織に製作依頼した数千件もの賭博サイトを販売して、数千億円もの収益を上げていたというから驚く。

韓国のオンライン賭博の規模がそんなに大きいとは知らなかった。しかし、日本のパチンコの市場規模が14兆円であり、韓国にはそれに類する「合法賭博」がないことを踏まえれば、人口比から計算して数千億円規模の違法賭博が存在しても不思議ではないかもしれない。

ともあれ、確信犯的に違法賭博を行う業者からすれば、「闇の存在」である北朝鮮組織はまたとないパートナーだろう。オンラインならば国境を越えて会いに行く必要すらない。

北朝鮮と組んで荒稼ぎを目論む勢力は、これからどんどん増えるかもしれない。

「キョンフン情報技術交流社」のメンバー(国家情報院提供)